テラーノベル
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夕暮れのオレンジ色が、狭いアパートのフローリングを冷たく染め上げていく。外では蝉の声が喧しく響いていたが、この部屋の中だけは奇妙なほど静まり返っていた。
「なあ、ありさか」
窓際に背を向けて床に座り込むだるまいずごっどは、膝を抱えたままぽつりと言った。その声には何の抑揚もなく、ただそこに在るという事実だけが重く沈んでいる。振り返ったありさかの眉がわずかに顰められた。
「なんや、急に。……って、お前、その手……」
ありさかが言葉を失ったのは、だるまいずごっどの足元に転がる小さな瓶と、だらりと垂らされた細い指先から滴る赤い液体を見た瞬間だった。反射的に飛び起きて駆け寄ろうとするが、足が思うように動かない。全身の力が抜け落ちていくような、言いようのない気だるさが急激に体を蝕んでいた。
「動かん……な、これ。おまっ、何入れたん……」
視界がぐにゃりと歪み、ありさかはたまらず床に膝をついた。目の前で、だるまいずごっどがふわりと柔らかく微笑む。それはいつもの配信で見せる軽口を叩く顔ではなく、世界でただひとつ、自分だけのものを見つけた子供のような、狂おしいほどに甘い笑顔だった。
「これで、もうどこにも行けやんね。ずっと一緒やで、ありさか」
冷たくなろうとする指先が、ありさかの頬にそっと触れた。触れられた場所から熱が奪われていくような感覚の中、ありさかは朦朧とする意識でその顔を見上げる。怒りも恐怖もなく、ただ圧倒的な独占欲と、底なしの甘さが二人の周囲を完全に満たしていく。
「…っ笑、狂っとるわ、お前……」
掠れた声で呟きながら、ありさかは崩れ落ちる体をだるまいずごっどにもたれ預けた。重なり合う二人の影は、夕闇に溶け込むように一つになっていく。部屋の隅に置かれたスマートフォンの画面だけが、誰からのものとも知れない通知を告げて、虚しく光り続けていた。
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コメント
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はい、読み終えました……。夕闇と蝉の声の対比から始まって、二人だけの静かな狂気に飲み込まれていく感じ、すごくぞわぞわしました。だるまいずごっどの「ずっと一緒やで」って台詞、あの柔らかい微笑みとセットでものすごく来るものがありますね。ありさかが全部わかった上で身を預けたラストシーンが切なくて、この関係性の行方を考えずにはいられません。続き、気になります。