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夢の中で、私はまるで異世界にいるかのように感じていた。誰もいない。永遠と続く芝生。 風に揺れる花びら。
見渡すと、
目の前には、顔も声も髪型も分からない男の子が立っている。どこかで出会ったことがあるような。彼は微笑みながら、私に手を差し伸べてきた。
「ん、ん、」
「あ、もう朝か」
齋藤由奈。中学3年生だ。父と母の離婚でこの街に引っ越してきた。
朝、鏡に映る自分を見ながら、見た夢の事考えている。
「あの男の子、どこの誰何だろうな〜」 「夢の続きが気になるな〜」
「由奈!早く準備しないと学校に遅れるわよ!」
朝からの母の怒鳴り声。由奈は面倒臭いと思いつつも
「はいはい。」
といい、準備をし学校へ向かった。
「おはよう由奈」
「おはよう美咲!」
親友の美咲だ。朝学校へ来た時、いつも一番最初に挨拶を交わすほど仲の良い親友だ。
「そういえばさ〜今日の夢がさ〜」
「また夢の話?笑」
いつも話の初めは夢の話から始まる。 私は、夢の話をする時はいつもテンションが上がってしまう。そんな私を嫌う子が多く、離れていく仲間が何人も居た。だが、美咲は違う。 私の夢での出来事をいつも楽しく聞いてくれる。
「今日の夢は凄いんだよ!」 「誰もいない野原に、ただ1人私だけがぽつんと立っていると思ったら、、、、」 「顔の見えない知らない男の子が私に手を差し伸べてきて、夢が終わったんだ〜」
「いつもと違う感じの夢ね」
「そうなんだよ〜!」
美咲は記憶力が良い。私が話した覚えのない夢の話まで、沢山覚えていてくれる。
「話もしてないのに、顔も見てないのに」 「何故かどこかで会ったような気がするんだよね〜」
「それ、デジャビュ現象ってやつじゃない?」
「何その面白い名前!」
「初めて見るものなのに何となく見覚えがあるような感覚になる現象のことらしいよ」
「なーにそれ!笑 夢で見た男の子がそのでじゅびゃ?だっけ!?な訳ないよー!」
「ふふふっ笑 そうかもね」
そんな話で、1日が終わってしまった。
「また夢の続きが見たいな〜」
そんな事を思いつつも、布団へ入り目を閉じる。
目の前が真っ暗だ。きっと目を瞑っているのだろう。
由奈は、目を開ける。 「ここって…」
「ーーーー」
誰かの声が、微かに聞こえる。
「ん?なんて???」
「ーーーー」
「聞こえないよ!」
よく耳を澄ましたが、ボソボソと何を言っているのか良く聞こえない。
「なんなの!もっとハッキリ言ってよ!」
「ありがとう。僕の事を見つけてくれて。」
ふと、顔を上げると。そこには 薄らと見える目に髪の毛がかかっている少年が居た。年齢は12歳ぐらいだろうか。身長は自分より小さく、小柄な少年だった。
「貴方、さっきから何を言っていたの?」
少年は、ただ由奈の瞳を優しい笑顔で見つめる。
「僕とお話しよう」
由奈は、なぜお話?と思いつつも。せっかく夢で出会った少年とお話をすることに。
何時間喋っただろうか。
嫌だったこと。楽しかったこと。 親友のお話。将来の夢。 私は話すばかりで、少年は自分の事を一言も話さず、たまに会釈をしながらにこにこと笑顔で聞いている。
「楽しかった。そろそろ××××××」
「え?なんて?」
「××××××××××」
「聞こえないよー!!!」
段々と遠のいていく声。気がつくと部屋のベットだった。
「由奈!!」
「どれだけ起こしても起きなくて心配したのよ!」
時計を見ると、もう9時だ。今日は平日。
学校があるのにも関わらずこんなに寝てしまったのは今までで初めてだ。
「今日の夢、とっても楽しかったのよ!」
「そんなこと言ってる場合?!早く学校に行きなさい!」
お母さんはいつも、私の夢の話は聞かず
「あなたは本当に沢山夢を見るわね」
「ちゃんと寝れてないんじゃないの〜?」
と、笑い話に流してしまう。
遅刻した事の罪悪感を抱き、教室のドアを開ける。
「美咲!おはよう。」
「美咲!あのね!あのね!」
「今日の夢ね!」
「由奈、夢の話はもういいの。」
「え?」
いつもの様な何気ない日常が、今日も来ると思っていた。
「ごめんね。由奈。もう夢の話は聞きたくない。」
いつもなら、咄嗟に声があがるにも関わらず、この言葉を言われてから美咲との会話がポツリと消えた。
いつもなら途中まで一緒に帰る下校も、今日は1人で下を向きながら帰った。
自分は何か美咲に嫌なことでもしたのか。 何か美咲の心を傷を付けるような事を言ってしまったのか。
そんな不安が頭の中でぐるぐると回っていた。 そして、いつもは暖かいと思っていた布団も、今日はなんだか冷たく感じた。
目を閉じる。
「ーーー来たんだ×」
「その声は。」
顔をあげると、昨日の少年がこちらをにこにこしながら見つめていた。
また出会うことが出来たと思い、嬉しくなったが今日の学校での出来事を振り返ると。自然と顔が暗くなった。
「××どうしたの?」
「実は。ね」
少年はただ私の話に頷きながら、黙って聞いていた。
「私なんか、いつもこうだなんだ(泣)」
今まで溜めていた思いが込み上げてきて、初めて人の目の前で大泣きをしてしまった。
少年は、とても慌てていた様子だったが優しく励ましてくれた。
君は悪くない。こんな僕とお話をしてくれた。 とても優しい人だよ。
少年の励ましの声に、涙が出た。
「じゃあ、楽しくなるために一緒にお散歩をしよう」 「今は芝生しかないけど、もっと奥に行くと綺麗なお花畑があるんだよ」 「一緒に行こう!きっと楽しくなれるよ」
そんな提案をしてくれた事を嬉しく思い。
草原を、2人で手を繋ぎ。ひたすらに歩いた。
歩いている途中色々な景色を見た。
とても綺麗な川を渡った時は、頭が浄化されていくような感覚に襲われた。今までの嫌だった出来事が全て抜けていくような気がした。
たくさんの楽しいお話をしながら歩いていると。
目に光がさした。風ひとつ吹かない、 何色もの色をした花が、辺り一面咲き誇っている。私は、初めての光景に涙が出た。
これは夢だろうか、現実だろうか。
そう考えた頃には、、、もう遅かった。
花衣美咲。中学3年生。
父と母と美咲の3人家族で楽しい日々を過ごしていた。だが、美咲が中学1年生の時、大好きな幼馴染が急に永眠した。
突然の事だった。ただただ、泣いた。
美咲は人の前では涙を流したことが無く、よく我慢をする子だった。そんな美咲が泣いた。大泣きした。
突然の出来事だったこともあり、美咲は現実を受け入れることが出来ず、学校に行かずに布団の中でひたすらに泣く日々を送っていた。
中学3年生になり、美咲は心が少し落ち着いた。 久しぶりに学校に行った。
初めは怖かったがみんなは美咲を受け入れ、そっとしておいてくれた。
でも、1人だけやけに絡んでくる子がいた。それが由奈だった。
由奈は、親が離婚し中学2年生の時にここへ引っ越してきた。辛いはずなのに、なぜこんなに明るく居られるのだろう。
私は初めて由奈に問いかけた。
「なんで、貴方はそんなに楽しそうなの。」
「貴方も辛いことがあったのよね。」
由奈は、初めて声を出した自分に驚いたのか、笑顔が溢れていた。
「え!喋ってくれた!めっちゃ嬉しい!」
「あ、でねでね!質問の答えね!」
「夢を見るのが楽しいんだ!」
「だから、辛いことがあっても夢を見ると何だか明日が楽しみになるんだ!」
「あ、ごめんね。私喋りすぎちゃう癖があって、そのせいでみんなから嫌われちゃうんだ笑」
私は、幼馴染の事を思い出した。
私の幼馴染も、夢を見ることが大好きだった。
私が家へ遊びに行く時も学校へ行く時も教室に入ってからも、いつもいつも今日見た夢の話をしてくる。
正直、夢なんて見ても何にも楽しくないし、いい睡眠が出来ていない証拠だと思っていた。でも、幼馴染は楽しそうに話す。
そんな幼馴染が由奈と、とても似ていた。
「貴方、本当に面白い子ね」
「私と、お友達になろうよ」
由奈は、飛び上がって喜んでいた。友達という関係になるのがどれほど嬉しいのか、由奈にしか分からないが何だか私も嬉しくなった。
「後、友達になったからには」
「貴方の気が済むまで好きなだけ夢の話をして」
由奈は、驚いた顔と同時にとても嬉しい顔をしていた。
「分かった!これから沢山するね!」
「よろしくね!美咲ちゃん!」
これから楽しい日々になりそうだ。
だが、いつものように話をしているといつもとはちょっと違った夢を見ていた。
デジャビュ現象、では無いかと疑ったが由奈は否定していた。
私は思い出した。
亡くなる前日に、
幼馴染がデジャビュ現象の夢を見たと……