テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
83
120
18
「はぁー。」
一人、自分の部屋のベットに寝っ転がっては、深いため息をつく。
スマホのホーム画面は最近会えてない幼馴染。
なんとなくSNSを開いたら、流れてくるのはその幼馴染のアイコンで。
大学のお友達と仲睦まじそうに笑ってる。
「さいあく、」
五歳差の幼馴染。あいつはもう二十歳で、でも俺はまだ十五歳。この年の差がなくなればいいのに。
つい三年前までは、すちは俺の隣にしかいなかったのに。優しく勉強を教えてくれて、たまに遊んでくれて。
よく小説をには、幼馴染のままでいてずっと彼のそばにいる、とかいう内容がある。
でもそれは同学年の場合のみに適応される特別券であって、こんだけ年の差がああれば、いつか幼馴染という切符は使えなくなる。
「もう、期限切れ、ってことか」
頑張っていい高校行って、同じ大学にいったって、ってぎりぎり間に合わないけど、追いかければ少しでも見てもらえるかな、って思ってた。でも無駄なのかも。俺が大学生になったらすちは社会人。俺が追い付いたって、彼はまた違う世界に行く。
まー、いいし?俺のそろそろ受験で頑張らないとだし?別にさみしくはないし?親友はいるし?
頭の中で小さいころしたあの約束がこだまする。
「”絶対暇ちゃんを迎えに行く”、か。…嘘つき」
一人、布団にくるまって朝を迎えた。
「んっ、朝か」
気づいたら朝になっていた。太陽が暗い部屋に降り注ぐ。今日も一人。大学生の春休みは長いって聞いたのに。
一回も会いに来てくれないってことはそういうこと。
洗面台に行って顔を洗い、歯磨きをする。適当に朝食を済ませて、そばにあった服を着る。
天気予報では今日は晴天のよう。俺の心とは真反対。
ピーンポーンとインターホンがなる。親は朝早くから会社行ったし、俺が出るしかないのか。宅配かな?
「はーい…え、」
ドアを開けるとそこにはすちの姿があった。おしゃれな服に、指にはネイル。いかにも大学生満喫してますよーって格好だ。
「暇ちゃん。久しぶり。元気にしてた?」
「え、あ、うん。久しぶり。」
久しぶりに見たすちは相変わらずかっこよいけど、あの約束は覚えていなそうだった。
「どうして急にきたの?」
「あ、心配になってね、いるまちゃんに取ら…..いや、なんでもない。」
「ん?そう?あ、もしかして親に会いに来た?ごめん。今いないんだよね」
「ううん。暇ちゃんに会いに来たよ。久しぶりに遊びに行かない?」
「え、今から?」
「うん、そう。」
待って。俺今外出れる格好じゃないし。寝ぐせもひどいし。
「ちょっと、待っててくれる?」
「え、うん。もちろんいいよ。」
すちをリビングに通して、俺は自分の部屋に行った。
「急に来れれても困る……何着ればいいんだよ」
クローゼットをひっくり返す勢いで服を探す。可愛いの?おしゃれなの?かっこいいの?
なにがすちの好みなの?どれを選べばいいの?今、まさしく漫画のヒロインみたいなことしてると思う。
どうする?やっぱり、こういうときは親友に相談するか。
ツーコールでいるまは出てくれた。『もしもし?』という優しい声に安心する。
「あ、いるま?今大丈夫?」
『ん?ああ。もちろん』
「よかった、実はさ、すちがいきなり俺ん家にきて……」
『は?』
いるまの声色が一気に変わる。俺なんか気に障るようなこと言った?
「ん?大丈夫?」
『へー、すちね。すちがなんて?』
「あーえーっと、一緒にお出かけ行かない?って言われた。」
『んで、行くの?』
「う、うん…っ」
『で、服が決まらない、と。』
「そう!よくわかったね」
『ま、なんとなく想像はつくから。』
「うん、どういう系統がいいかな?」
『さぁ?なつが着たのだったらなんでも喜ぶんじゃねーの?』
「そうかな?そんなことはないと思うけど」
だって、ネイルしてたし。無駄に凝ってたから絶対に女にやってもらってる。彼女でもいるんじゃないの?
『だってあいつ、お前のこと好きすぎるんだもん。(小声』
「ん?なんか言った?」
『あ、別に。よければ俺が”あげた”服着て言ったら?結構高い奴だし、すちと並んでも大丈夫だと思うよ。』
「ほんと?じゃあそれにする!ありがとう、いるま」
『うん、あ、後良ければ写真送って?』
「え?う、うん。」
久しぶりにいるまもすちの顔みたいのかな?確かに仲良かったもんね。
『じゃ、気をつけろよ。また』
「うん、また。」
いるまが誕生日に贈ってくれて服に袖を通す。うーん、ま、すちと並んでも恥ずかしくはない格好かも。
リビングを通らないで、洗面台に向かい、髪をセットする。
「暇ちゃーん、準備できた?」
「あ、うん。ちょっと待って。」
セットをし終えリビングの扉の前で二、三回深呼吸をする。
「どう、かな?」
「うん、似合ってるよ。その服どこで買ったの?」
「え、えーっと、誕生日にいるまがくれて……」
「うんうんへー、いるまちゃんが。」
「ん?すち?」
すちもやっぱりいるまに会いたかった?
「ううん。大丈夫だよ。ほら、行こうか。」
「うん…あ、その前に。」
俺はスマホを取り出して、すちの写真を撮ろうとする。カシャっとシャッター音が部屋に響いた。
「ん?暇ちゃん?なんで写真撮ったの?」
「あ、いるまに写真送ってって言われたから。」
「あー、なるほど。じゃあさ、ちょっとこっち来て」
「うん、」
俺はすちに促されすちの隣に立つ。
「スマホを構えて?」
「うん」
「いくよー、」
すちはそういいながら俺のことをバックハグしてきた。
「え、ちょ、すち!?」
「いいからいいから。ほら撮って。」
「う、うん。は、はいチーズ?」
カシャとまたシャッター音が部屋に響く。
「こっちをいるまちゃんに送っといて?」
「ん?わかった。」
メッセージアプリを開いてくまのアイコンをタップする。画面には写真を送信しました、と映し出される。
「送れたよ」
「よし、じゃあ今度こそ出ようか。」
「うん」
俺はすちに腕を引っ張られ、数年ぶりにすちと共に外へ出た。
歩き始めてすぐ、スマホが鳴った。いるまからのメッセージだった。
〈なんですちにバックハグされてるの?なつだけの写真が欲しいのに〉と少し不機嫌そうなメッセージ。
え、怒らせた?どうしよう。などとおろおろしていたら上から手が伸びてきて、スマホを取られる。
「え、すち?」
「こら。今は俺と一緒なんだから他の男なんて見ないで。」
すちは俺のスマホの電源を切ってから、俺に渡す。
「ん?わかった」
「よし、気を取り直すよ。喉は乾いてない?大丈夫?」
「うん。今は。」
道順的にすちは駅に向かっているようだった。改札を通り、電車を待つ。
「どこに行くの?」
「秘密」
指を唇に当て、すちは話す。やけに静かだった。人は変わらずたくさんいるのに。
すちが隣にいると自分の鼓動の音しか聞こえない。
少ししてやっちょうどてきた電車に二人で乗る。二人が並んで座れる席が空いてたのでそこに座る。
電車がゆっくり動き出す。今までの日常を変えるように。
ふと、すちが小さく舌打ちした。
「え?どうした?」
「ん?いやーさ、いるまちゃんからメッセージがきて」
「え、なんて?」
すちは一瞬考えるような間を開けてから、俺に言う。
「〈なつは今受験生なんだから早く返せよ。親友の俺と勉強会の予約入ってるんだわ〉って。」
「あ、確かにそういえば明日、勉強会の約束してた。」
「ふーん、でも、」
すちは自分のスマホの電源も切って、俺に顔を近づける。
「ちけーよ、」
「今は俺のことだけ考えてね。」
そう、すちに耳元でささやかれた。こんなん、期待しちゃうだろ、ばか。
「ね、ほんとにどこに行くの?」
「いいからいいから~。静かについてきて?」
って言われても……もう住宅街に入ったよ?方向音痴なのか?
「ここだよ。」
「え、ここって」
小奇麗なマンション。一人で住むには大きいマンションだ。やっぱり、彼女がいて……。
「そう。俺の部屋。207だから。早く行こ?」
すちに手を引っ張られ、オートロックをこえる。エレベーターで二階まで上がる。
すちは鞄から部屋の鍵を取り出し、開ける。
部屋は整理整頓されてて、ああきれい好きな彼女がいるんだなって考える。
「暇ちゃんは荷物置いて座って待ってて?」
「うん、わかった」
案内された部屋に荷物を置いてソファーに座る。ふと棚の方を見ると俺があげた小学生の頃に作った作品や、誕生日に上げたものまで飾ってある。
あ、小さい子大事にしてますよアピールか。女を垂れ込むのにはいい方法かもな。
ふと、床を見てみると、明らかに女もののイヤリングが落ちていた。拾い上げるとそれは赤色の宝石がついたかわいらしいイヤリング。まだ台紙についてるから上げてないってことか。ほら、やっぱり彼女いるんじゃん。
「ね、すち」
「ん?どうしたの?暇ちゃん」
俺はキッチンであわただしく動いてるすちに声をかける。
「これ彼女さんにあげるの?」
すちは一瞬動きを止める。そして静かにこっちに近づいてきた。あ、もしかして触れちゃいけなかったやつ?
「暇ちゃんはさ、俺が約束破るような男に見えるわけ?」
「え、どういうこと?そんなわけないじゃん?」
俺とした約束は忘れてるんだろうけど、他の約束は全部守ってくれてる。だからそんなことはない。
「じゃあ、それを見て彼女に上げるものだって思ったの?」
「いや、だって、これきれいな彼女さんに似合うなーって。」
「何言ってるの?暇ちゃん以外でこれをつけて似合う子なんていないよ。」
「え、これ、俺の?」
「そうだよ。そうに決まってるじゃん。俺、暇ちゃんとの約束、本気だけど?」
「あの、約束、覚えててくれたの?」
「もちろん、忘れたことないよ。暇ちゃんが大人になるのを待ってるんだから。」
なんだ、俺の勘違いだったんだ。必要のない悩みだったんだ。
「ね、暇ちゃん。これつけていい?」
「え、あ、うん。」
すちは俺の手からイヤリングを取り、丁寧に台紙から外す。俺の髪を優しく耳にかけ、すちの冷たい手が俺の耳を軽く触る。
「んっ、冷っ、」
「こら、動かないで。」
ゆっくりとイヤリングを付けられる。反対側の耳も同じようにつけてくれた。
「うん、やっぱり、かわいい」
「…っ、ばか」
「ふふ、よし暇ちゃん。今日は泊っていきなよ。わからない勉強は教えてあげるから。」
「う、うん。」
結局その日はすち手料理を食べて、一緒に勉強をして、俺はすちのベットですちは床で寝た。
客人だから、って言っても「俺の暇ちゃんをこんな硬い床で寝かせられないよ」と半ば強引に。
翌朝。少しだけ寝不足の目をこすりながら、俺は玄関に立っていた。
すちは大学の講義があるからと、駅まで送ってくれる。
「じゃあ、暇ちゃん。またすぐ連絡するから。……今度こそ、変な勘違いしないでね?」
すちが困ったように笑いながら、俺の頭をぽんぽんと撫でる。昨日までの不安が嘘みたいに、その手は温かい。
でも、ふっと思い出した。昨日、いるまに送ったあの「バックハグ写真」の後の、彼の怒涛のメッセージを。
俺は、すちの胸元を軽く指で突き、不敵に笑ってみせる。ずっと俺だけドキドキしてるのは癪だしな。
「……次にまた勘違いさせるようなことしたら、今度こそいるまのところ行っちゃうからね?」
「えっ、ちょ、それは……!う、俺の彼女嫌なとこを的確についてくる……っ!」
「勘違いさせなければいいだけだからな?またね。次はもっと早く会いに来いよ。」
焦るすちを背中に、俺は軽やかな足取りで歩き出す。
耳元で揺れる赤いイヤリングは、朝の光を浴びて、昨日よりもずっと鮮やかに輝いていた。
~end~
コメント
1件
おお、年の差幼馴染もの、めっちゃ良かった!主人公の不安が丁寧に描かれてて、切なくなるシーンが多かった。でも「バックハグ写真をいるまに送れ」ってすちが仕掛けてくるの、嫉妬誘ってるっぽくてニヤニヤしたわw 最後に主人公が「いるまのところ行く」って脅すの最高だし、すちが焦る様子が可愛すぎる。この二人、もっと見たい!