(注意点)
今回はリクエストをいただいたので、なるべく添えるよう書いてみました。
100%妄想です
苦しんだり絶望したりなどの辛そうな表現があります
ホラー的な内容です
言葉遣いなど解釈違いでしたらすみません
長文で申し訳ないです
大丈夫な方はこのままお進みください
今日の任務は、ディティカ4人で廃墟の調査。
ここ最近、廃墟の中に肝試しで入った人々が、幽霊を見た、亡霊に会った、襲われた、などと発言し恐怖しているとのこと。
その目撃情報を頼りに調査し、敵に遭遇した場合は討伐するのが今日の仕事だ。
昼間だというのに異様に薄暗い廃墟内をしらみつぶしに歩いていく。
明らかに顔色が悪く、乗り気でない男が1人。
既に臨戦体制で刀を握り、その割に体を強張らせて歩く。
風で窓が小さくガタッと鳴るだけで、ビクつき野太い悲鳴をあげて刀を向けた。
星導「小柳くん今日は任務から外れたらどうですか?ビビりすぎて顔真っ青ですよ。」
叢雲「体ガチガチで草。手ぇ繋いだろか?」
伊波「だーいじょうぶ!俺たちがいるから!」
ポンと小柳の肩を叩くと、また体がビクリと跳ねた。
小柳「あーもう、うるせえ!ビビってねぇし!こんなん余裕だわ!」
強がって腹から声を出したものの、その声は少し震えている。
あまりに余裕のない表情に、他3人はやれやれと呆れた。
ホラゲが苦手とは知っていたが、リアルホラー現場ではこんなにも怖がるとは。
ちょっと可愛いとすら思えてくる。
歩き進めていると急に、全室内の電気が一斉に消えた。
より暗さが増したのに加え、室温もグンと下がった。
ひんやりとした冷気が流れてくる。
叢雲「これガチのやつやん!」
伊波「すげぇ!ホラゲのオバケ登場シーンだ!」
星導「寒っ!うわ、窓も開かないし。」
3人はワチャワチャ騒いでいるが、小柳は恐怖で硬直状態。
せめて身を守れるよう感覚だけは研ぎ澄ませていた。
小柳の耳元で誰かが囁く。
?「 ねぇ きこえる? 」
小柳「えっ!!?!」
叫んでバッと後ろを振り返る。
誰もいない。
今確かに、幼い女の子の声がした。
伊波「え!?なに?!なんかいた?」
小柳「誰か、、俺に声かけたか?」
星導「またまた〜そういうのいいですから。」
?「 あなただけは きこえるんだね 」
小柳「わぁ!!、ほら!!今また!!」
叢雲「ビビり過ぎて頭おかしなってるやん。」
小柳「違えって!まじで!!」
キョロキョロ周りを何度も見回すが、4人以外誰もいない。
でも確かに、耳元で囁かれた。
本当に自分だけおかしくなってしまったのか、と不安になってきた。
冷や汗がブワッと吹き出す。
?「 いっしょに あそぼ 」
頭の中に直接囁かれるような感覚と共に、全身に生温いベールを纏った感触がした。
小柳「やめろ!!俺に触んな!!」
そのベールを斬り払うように刀を振り回す。
叢雲「あぶな!なにすんねん!狼まじで頭いかれたんか?!」
伊波「何もいないよ!落ち着いて深呼吸しよ!」
2人は小柳に近付いた。
小柳は酷く戸惑っていた。
小柳の目には、武器を構えて今にも攻撃してきそうな伊波と叢雲の姿が見えていた。
2人の憎悪を示す表情と、強い殺意に驚愕し、目を見開く。
全てが幻覚とも知らずに。
小柳「は?、なにいきなり、、、なんで、、仲間だろ、、、?」
なぜこんな事になっているのか訳も分からず、口から溢れた言葉は弱々しく震えていた。
仲間が、俺を、本気で殺そうとしている。
?「 そんなひと なかまじゃない ころそう 」
頭の中に優しく囁かれた言葉に、心臓がドクリと跳ねる。
何を信じていいか頭が混乱した。
伊波「ロウ、ほんとに大丈夫?」
小柳の背中に手を添えようとしたその瞬間、伊波の顔スレスレを刀が空を斬った。
あまりの出来事に、数秒の沈黙が流れる。
何かを感じた星導が、伊波と叢雲を触手で掴んで引っ張り離した。
小柳の目は絶望と殺意に満ちていて、体が、彼に近付いてはいけないと警鐘を鳴らしている。
伊波と叢雲が絶句していると、星導が小柳に少し距離をとって慎重に対面した。
星導「小柳くん今、本気でライを殺そうとしましたね?幽霊にでも取り憑かれちゃいました?」
返事はない。
無言で刀を構え、斬りかかろうと距離を詰めてきた。
小柳の様子がおかしい。
本気の力で止めにいかないと殺されかねない。
一旦捕まえて気絶させるべきだと判断した。
8本の触手を花弁のように広げて伸ばして、一気に小柳に振り下ろす。
小柳は怒りと悲しみの感情で頭がぐちゃぐちゃになっていた。
今度は星導までもが俺を殺そうとしてくる。
あんな冷酷な目、見たことない。
なぁ、、本気なのか、星導。
小柳「、、なんでだよ、、、星導、、俺は、、信じてたのに、、!」
一瞬、泣きそうな表情になったが、すぐに目を釣り上げて怒りの表情へと変わる。
勢いよく迫る触手を次々と斬り落とし、星導へと距離を詰めていく。
星導「一体なにが見えてるんですか?泣きたいのはこっちなんですけど。」
会話がまるで成り立たず、取り憑かれた説が濃厚に思えた。
星導もわりと本気で小柳を捕えようと触手を素早く動かすが、本物の殺意を乗せた白狼の攻撃のが数段上で、徐々に押されていく。
触手もどんどん切り落とされ、再生が間に合わない。
2人の怒涛の戦いに、伊波と叢雲は見ていることしかできなかった。
オロオロと不安そうにしている。
星導「さすが、強いですね、小柳くん。」
微笑んではいるものの、額には汗が浮かび、焦りが見て取れる。
これ多分、無理かも、と心の中で呟いた。
小柳「お前は、、せめて、、俺の手で、、!」
刀を再度ギュッと握りしめ、より一層、攻撃が激しくなった。
最後の1本も切り落とされ、身を守る触手はついになくなった。
隙を逃さず踏み込み、迫り来る刃。
小柳「抜刀。」
星導は全力で1本の触手再生に力を注ぎ、間一髪の所で自分の前に触手をぬるりと出せた。
しかし、その触手諸共、刃は胴体まで届いた。
幸いにも斬られた傷は浅かったが、一旦星導は後退し、距離を取った。
小柳は刀に付着した血を凝視したまま動かない。
過呼吸に近い、浅く引き攣るように息をしている。
小柳の視界には、刀で深く斬られ、絶命した星導の幻覚が映し出されていた。
心の臓が動きを止めた、横たわる星導の体。
自分が殺した。
この刀で、仲間を斬った。
でも、、
その仲間が先に自分を裏切ったから。
?「 きみは わるくない 」
その囁きに、心が僅かに安堵する。
?「 もっと あそぼ 」
安堵した心を突き落とす言葉。
また生温いベールを纏った瞬間、目の前は真っ暗になった。
視覚、聴覚、嗅覚も、何も感じることができない。
まだ伊波と叢雲が残ってる。
どこにいるのか分からない。
殺される、、!
自分の心臓がだけが、うるさいくらいに脈を打つ。
小柳「、、だれか、助けて、、。」
絞り出した声は、あまりに小さかった。
?「 こっちに おいで 」
その囁きに、弾かれたように刀を周囲に振り回しながら、すがるように声に従った。
囁きを追いかけて、全速力で走る。
もう何も信じられない。
なにもかもが疑心暗鬼で、手を差し伸べてきた声すらも信用できなかったが、全ての感覚を失った今は、唯一の助け舟だ。
残された3人は、急に走り出した小柳に驚いた。
聞き間違いかと思ったが、助けて、と聞こえた気がする。
少し遅れて3人は後を追いかけたが、あまりに速くて見失いそうだった。
小柳は何かに苦しめられている。
幽霊か亡霊との情報は、きっと確かなのだろう。
何か目に見えない悪いものが、ここには居る。
必死に追いかけたが、小柳との差が開いていき、ついに曲がり角を曲がった先には姿は無かった。
小柳は声に導かれるまま、無我夢中で走っていた。
?「 ここなら もう だいじょうぶ 」
そう言われると足を止め、乱れた呼吸を整えようとする。
まだどの感覚も戻ってこない。
今はただ、色々な意味で、苦しい。
小柳「もう、わけわかんねぇよ、、。」
頭を抱えてしゃがみ込んだ。
この感情を、心を、体から取り除いて欲しい。
どうにもできない辛さから解放されたい。
?「 かなしいの とってあげる 」
生温い何かに抱きしめられるような感覚に、背筋がゾワリとした。
振り払おうとしたが、この悲しみを取ってくれるという甘い言葉に、気持ちが傾く。
じんわりと体を侵食されていると分かっているのに、受け入れてしまう自分がいる。
頭もぼんやりしてくる。
小柳「もういい、、消えたい、頼む、、」
そのまま意識を手放した。
女の子の甲高い笑い声が廃墟内全体に大きく響き渡る。
ビリビリと建物が震えた。
叢雲「キモいキモい!なにこれ!?」
伊波「声怖すぎ!え、地震じゃないよね?!」
星導は、小柳に何かあったと察した。
耳を澄ますと、奥の方から破壊音のような鈍い音が聞こえる。
無言で音の方へ走り出す。
2人も慌てて着いて行った。
走りながら星導は「あの、作戦の提案、いいですか?」と話し始めた。
2人は頷きながら耳を傾ける。
のちに、「わかった。」と了承を得た。
もう轟音はすぐそこまで迫っていた。
小柳の体は完全に幽霊に支配されていた。
幽霊は憑依した肉体の感覚を掴むように、手を握ったり開いたりしている。
そして、刀を掲げると、思いっきり壁を斬りつけた。
轟音と共に崩れる壁。
幽霊「 からだ もらった うれしい 」
その光景はまるで、小柳が嬉しそうに刀を振り回しているようだった。
オモチャを振って遊んでいるかのように。
肉体を得た幽霊は喜び、小走りしながら、軽々と壁や柱を破壊していく。
廃墟が全壊するのも時間の問題だった。
廊下に出ると、そこには星導がいた。
その後ろには伊波と叢雲もいる。
星導「小柳くんを返してください。」
幽霊「 もらったの わたしのものよ 」
星導「苦しめて奪った、の間違いですよ。」
触手を広げ、目元の宇宙は普段よりも大きくバキンと割れた。
小柳も刀を構えた。
しかし所詮、少女の幽霊が扱う刀などデタラメで、本人の構えとはまるで違う。
小柳が動くより先に、素早く触手を伸ばして四肢を拘束した。
小柳は分かりやすいくらいにムッと怒りの表情に代わり、触手を引きちぎろうと全力で腕を引いた。
幽霊「 やめて ひどいことしないで 」
中身は少女でも肉体は白狼。
触手はミチミチと嫌な音を立てて、本当に引きちぎれそうになった。
その痛みが伝わってきて、星導は顔を顰める。
伊波と叢雲が走り、小柳の両腕を掴んで、3人での拘束となり、さすがに動くことができなくなった。
叢雲「はよ狼から出てけバケモンが!」
伊波「お前にこの体は扱いきれねえよ!」
両者一歩も動けないまま、拮抗した時間がしばらく続いた後、1本の触手が小柳の首に巻きついた。
ギリッと強く首が締まり、喉がカヒュッと鳴った。
息が吸えず、苦しみ出す。
幽霊「 なんで このひとなかま でしょ 」
星導「んー、今のあなたは敵だし、面倒になっちゃいました。」
にこりと笑った。あまりに冷たい笑顔。
叢雲もクナイを取り出し、小柳の眼前に切先を突きつけた。
叢雲「確かに、疲れたわ。もう終わらせてええかも。」
そこに感情らしきものは見受けられない。
ただ、無表情。
伊波も、事前に借りていたクナイを、同じように突きつける。
伊波「そうだね。じゃ、この世からバイバイってことで。」
憐れみ混じりの、歪んだ微笑み。
これは星導の提案した作戦だった。
小柳の体から幽霊が逃げ出すように仕向けた演技。
その作戦通りに、小柳は酷く怯えたような表情になる。
急に全身脱力し、地面に膝をついた。
幽霊「 もういちど しぬのは いやだ 」
小柳の体から黒いモヤのような塊が出てきた。
その塊は徐々に人の形に変わり、ちょうど幼い子ども程の大きさになった。
真っ黒な子どもの姿をした幽霊は、逃げようと走り出す。
星導はその幽霊を触手で捕まえ、左腕の口に食べさせた。
一欠片も残さぬよう、念入りに飲み込んだ。
やっと任務が終わったのか、と安堵したところで、小柳が意識を取り戻した。
覚醒した小柳はパニックに陥った。
伊波と叢雲がクナイを握ってすぐ隣にいる。
まだ地獄は続いているのか。
やっぱり仲間なんていないんだ。
自分は1人だ。孤独だ。
恐怖で咄嗟に、伊波と叢雲を斬りつけた。
2人は肩に浅い傷を負ったが、反撃はしなかった。
傷なんてどうでもいいかのように、小柳を見ている。
小柳「来るな!!!」
すぐに3人から離れた。
仲間に裏切られるのも、仲間を殺すのも辛い。
星導を殺した俺は、もう仲間じゃない。
ディティカを辞める。
もう1人にしてくれ。
それが叶わないなら、いっそここで俺を殺してくれ!
心の中で叫んだつもりが、意図せず全部、声に出ていた。
ふと気付けば、視覚・聴覚・嗅覚すべてが戻っている。
殺したはずの星導が生きている。
3人とも殺気は微塵も無く、心配そうにこちらを見ている。
夢を見ていたのか?
曖昧な記憶が断片的にしか残っておらず、それもうまく繋がらず、頭を抱えた。
小柳「、、俺どうなってるんだよ、、。」
伊波「ロウは幽霊のせいで、ずっと悪夢を見てたんだよ。もう大丈夫。みんなで一緒に帰ろう。」
伊波は小柳を正面から包み込むように抱きしめた。
叢雲「みんな大事な仲間やし、絶対裏切らへん。ずっと味方やで、安心し。」
小柳の背中にそっと手を添えた。
星導は小柳を真顔でじっと見ていた。
星導「もう大丈夫そうですか?あなたはいつもの小柳くんですか?」
小柳は混乱したまま、同じように真顔で、星導をじっと見つめ、数秒後、ポロポロと涙だけが頬をつたった。
絞り出すように小さく発した言葉は
「怖かった」
そんな小柳を伊波がさらにギュッと抱きしめた。
伊波の肩に顔を埋め、静かに泣き続ける小柳に、優しく声をかけていく。
伊波「ロウは、かけがえのない、強くて頼れるディティカの大事なメンバーだよ。」
ポンポンと頭を撫でた。
叢雲「なに自信無くしとんねん。狼が調子狂うと、僕も困る。ほんまに困るわ。」
と言うと、小柳の背中をさすった。
小柳は少し顔を上げると、チラリと星導の方を見た。
気まずそうに話す。
小柳「俺、星導を、、刀で、、。」
星導「ふふ、殺したと思ったんですか?小柳くんには無理ですよ。俺は殺しても死にませんし。」
目を細めて柔らかく笑った。
星導「夢か現か分からなくなったら、俺を殺してみていいですよ。死んだらそれは夢ですから。」
小柳「縁起でもねぇこと言うなよ、、。」
やっと小柳の表情が綻んだ。
星導「ほら、早く帰ってみんなでホラゲでもしますか。」
小柳「悪魔だな。」
叢雲「お腹すいたし、帰ったらタコパせん?」
小柳「俺は帰るけど。」
伊波「えーんえーん、ロウに斬られた肩が痛いなー。来てくれたら痛くなくなるかもなー。」
小柳「行かせていただきます。」
小柳の心に、3人の体に、傷が残りませんようにと各々願いながら、今夜はたっぷりと仲間との時間を楽しく過ごした。
コメント
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最っっっ高です!!!ほんとに主様の作品好きすぎる!!!ありがとうございます!!!