コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
──ベッドで身体を向かい合わせに抱かれると、否応もなく胸がドキドキと高鳴って、このままじゃ到底寝られそうにもない気がした。
それは彼も同じなのかもしれないことは、真近に聴こえる心音からつぶさに感じ取れて、
「……あっ、あの……抱くだけじゃなくても、その……」
そう思い切って、自分から口に出した──。私が動揺をして見えるから、彼が抱いてキスするだけにとどめようとしてくれているのなら、私にもその気持ちはあるからとせめて伝えたかった。
「いや、いいんだ。今夜は、君を抱いているだけでいい。思いを告げてすぐには、全てを奪ってしまいたくもないからな。何より、君を大切にしていたい」
つっかえつつな上に、ちゃんと最後まで話せなかったのにも関わらず、彼が私の心情を汲み取ってくれたことを心から嬉しくも思えていると、
「それに、気持ちを伝えなければと気負うあまり、今日はだいぶ飲み過ぎたしな」
そう言って、顔を崩して笑って見せた。
どうにも高ぶって仕方のなかった心臓の音が少しずつ落ち着いてくるのがわかって、こんな風に場を上手く和ませてくれるところが、やっぱり大人の男性なんだなと感じた。
「代わりに君を、こうしてずっと抱いているから」
「抱いていてください。ずっと……」
両腕にぎゅっと強く抱き寄せられると、彼への募る思いに胸が締め付けられて痛いくらいだった……。