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アトミルカに復帰してからずっと取り組んでいた人造人間計画。
その集大成でもある、自身の最高傑作と確信していたアトミルカナンバー9。
彼が倒されて、4番ロブ・ヘムリッツは少しの時間茫然自失となる。
だが彼は、数秒ののちには気を取り直す。持ち直したとも言える。
現状すべきことは、ショックを受ける事ではない。
アトミルカに害成す侵入者をこの場で全員片付ける事こそが肝要。
4番は再び余裕を取り戻して「んっふっふ」と笑う。
「なんだてめぇ! この野郎!! 仲間が死んだってのにヘラヘラしやがって!! この野郎ったらこの野郎!! いいから、とりあえずその白衣寄越せよ! いつまでオレを裸でいさせるつもりだ、この野郎!!」
「あぁ。ちゃんとてめぇが全裸の自覚があったんだなぁ。親父よぉ。あとなぁ、死んでねぇからな。その機械野郎はよぉ」
「阿久津。貴様の戦功を大とする。引き続き、目の前の敵幹部との戦闘を継続しろ」
すっかり大吾の相棒として阿久津を認識し始めた五楼京華上級監察官。
彼女にとって阿久津は精神安定剤としての役割も担っている。
が、阿久津は「わりぃが、俺ぁここで一旦抜けさせてもらうぜぇ」と言うと、地面を強く蹴り後方へと大ジャンプ。
そこには屋払と青山が必死の介抱をしている和泉正春Sランク探索員がいた。
「おいおい。完全に煌気枯渇してんじゃねぇか。あんたら、煌気の譲渡はできねぇんだなぁ?」
「オレたち普段は隠密行動がメインなんで、よろしくぅ」
「こんな状況になる前に撤退するので、治療行為の心得は応急処置程度しか……。すみません」
阿久津は首をコキコキと鳴らしてから「あぁ。気にすんなぁ。別に、あんたらを責めてる訳じゃねぇからよぉ」と答えると、和泉の胸に手を当てた。
「ったくよぉ。この阿久津浄汰がまさか、人助けのために骨を折るようになるたぁなぁ? まったく、人生ってのは不思議だぜぇ。おらぁぁぁ!! 『結晶外殻』!!」
阿久津は自身の得意スキルを発現する。
が、その外殻を纏うのは彼ではなかった。
「和泉さんを武装させてどうするんでよろしくぅ?」
「こりゃあな、『結晶外殻』無理やり着せて、そっから煌気叩き込んでんだよなぁ。ここまで煌気が枯渇しちまったらよぉ。荒療治でもなんでも、まずは体内に煌気を入れねぇとまずいからよぉ。まあ、俺も人に外殻着せんのは初めてだからよぉ。ぶっちゃけ、てめぇの煌気がぶりぶり減っていくぜぇ。くははっ」
阿久津浄汰は残った煌気で和泉の救護措置に移った。
彼がどうしてここまで和泉を気遣うのか。
青山が恐る恐る聞いてみた。
「あの、阿久津さんは和泉さんとは面識がありませんでしたよね? 大吾さんと違って」
「あぁ。ねぇなぁ。だがよぉ、この和泉さんってヤツぁ、なかなか気持ちのいいヤツなんだよなぁ。そんな人間が世界から1人消えちまうってのはよぉ。犯罪者でも惜しくなるもんらしいぜぇ。……あと、親父を普通の人間の勘定に加えるんじゃねぇよ」
阿久津はこの後、絶えず『結晶外殻』を発現し続けた。
本来は自分が纏う事で煌気放出のコントロールをするスキルであるため、他人に使用するだけでも煌気消費量は格段に跳ね上がる。
五木友人
9,953
#現代ダンジョン
夜鐘
997
裏五条
19,334
つまり、阿久津浄汰は戦線離脱。
少しずつ真っ白になっていた和泉の顔色が普段の土色に戻って行く様子を確認して、満足そうな表情を見せるあっくんであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほどなぁ! あっくんは和泉さんの介護を選んだんだな!! まあ、あっくんも強いけど、オレが戦場にいるって事で安心して下がったわけだ!! 納得ぅ!!」
全裸で張り切る逆神大吾。
彼はまだ煌気総量も余裕たっぷりであり、何なら極寒の異世界・ゲレの環境にも全裸の状態で適応し始めていた。
腐っても元周回者の地力を見せる大吾。
眉間にしわを寄せながら、戦場に残った2人がほぼ同時に呟いた。
「なんだ、この悪夢は……。私が恐れていたパターンがそのまま現実のものに……」
「それはこちらのセリフなんですけれどもね。まさか、9番に対してあれだけのスキルを放ってなお、まだ戦えるのですか? ……化け物ですね」
味方の五楼の精神を削り、敵の4番のメンタルにダメージを与える。
既にこの空間を支配している男は、逆神大吾であった。
「よっしゃあ! 京華ちゃん! オレと一緒に残ったコンピューターおじさんをぶっ飛ばそうぜ!! いやぁ、懐かしいなぁ! 覚えてる? 京華ちゃんがまだ若いどころか、幼かったころにさ! 異世界で一緒に神獣と剣を交えたりしたよなぁ! あの頃の京華ちゃんも可愛かったなぁ! うふふふふふ!!」
五楼京華、静かに目を閉じて最後の抵抗を試みる。
これがダメならば、腹をくくろう。
彼女はそう考えた。
「焼き尽くせ!! 『皇炎残火』!!」
「おぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!! あっちぃぃぃぃ!! けど、冷えた体にはキクぜぇぇぇ!! 京華ちゃんったら、相変わらず親切がへたっぴなんだから!!」
全力の極大スキルを放っても、このモンスターは倒せない。
ならば、もう諦めよう。
上級監察官としての役目に殉じよう。
五楼京華上級監察官。逆神大吾の抹殺を断念する。
現時点で、雨宮順平の方が立派に上級監察官をしていると言う事実。
逆神大吾はここまで人の心を狂わせるのか。
「……4番と言ったな。貴様」
「ええ。そうです。あなたは五楼と言いましたね。逆神大吾の弟子であり、日本の上級監察官。事ここに至れば是非もなし。あなた方を始末して、研究は初めからやり直しです」
「その口、すぐに開けぬようにしてやる! はぁぁっ!! 『皇光滅却砲』!!!」
五楼は剣技をメインに扱うが、放出系のスキルを使わせても一線級。
全てのスキルをバランスよく習得している上級監察官に死角はない。
凄まじい煌気砲、それも対象の煌気を滅する類の性質を持ったものの直撃を喰らった4番。
それほど五楼の精神も追い詰められているのだろう。
「ヤダー!! 京華ちゃんってばぁ! 大吾さんにこれ以上無理させないように、一撃でキメにかかっちゃってー! もぉ、昔っからツンデレなんだからぁ!!」
「黙れぇ!! もう一撃だ!! さらに出力を上げる! はぁっ!! 『皇光滅却砲』!!」
五楼の精神は追い詰められていた。
通常、敵の幹部は生け捕りがベター。
だがこの五楼京華、自分と大吾の関係を知った相手は殺す気満々である。
何なら、大吾から与えられ続けているストレスを発散しているまである。
もう4番はこの世から消えてなくなっただろうか。
「んっふっふ。良いサンプルが採れましたよ。上級監察官の煌気砲を受けても、何の問題もないようですねぇ! ご覧なさい! わたくしが自分専用に作り上げた最高傑作!! 『重甲冑・人造体』を!!」
4番の体はもはや人間のそれとは一線を画す。
全身をイドクロアが覆い尽くしており、それは先ほど倒した9番の姿にも酷似していた。
「ちぃっ。なるほどな。先んじて戦わせた男、あれも貴様にとっては実験体だったと言う事か。悪趣味なことだ。吐き気を催す」
「んっふっふ。失礼ですねぇ。9番は間違いなく私の最高傑作の1つでしたよ? ただ、自分で戦うことを想定すれば話は別! 人造人間の技術とわたくしの頭脳が合わされば……そう! 無敵なのですよ!!」
「てめぇ、この野郎!! なんでそんな鎧着るんならよぉ! オレに白衣くれねぇんだよ! ケチか!! お前みたいなヤツが1万円負けたからってすぐに家に帰ろうとするんだよ! このケチ!! 1万なんて、ウォーミングアップだろうが!! ちなみに、パチンコの話ですけど!!」
五楼京華は心の中で叫んだ。
「阿久津。貴様はもう、帰って来てはくれんのか」と。
このまま生き残る事が出来れば、何となくだが、彼女はあっくんに何らかのポストを用意して絶対にカルケルには戻さないだろう。
そんな五楼の覚悟を知っているのは、現時点で彼女本人と諸君だけである。
コメント
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第479話、読み終えました…! 大吾さんの全裸で張り切る姿に笑っちゃったけど、五楼さんの精神がじわじわ削られていく描写が切なくて。阿久津が和泉さんを救護するシーンも、ああいう意外な優しさがたまらないですね。敵の4番も不気味で、次が気になります…!