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Side:mz
アンプの打ち上げは賑やかだ。
元々の騒がしさに加え、お酒が入ることであっきぃは鮫になるし、あっとは熱くなるし、ちぐも豹変する。
現に今もお互い煽りあって盛り上がっている。
そんな様子を、どうせ誰か潰れるだろうから介抱するためにも輪に入らずに端から見ていた。
ふと、何となくいつもよりも静かな気がして、少し考えてすぐにけちゃおが今日は大人しいことに気が付いた。
いつもはぷーのすけの下ネタで店員さんに怒られるんじゃないかってくらいの声量で笑うけちゃおが今日は会話に入らず顔を真っ赤にしてボーっとしている。
飲み会の始めにけちゃおが
「ボク明日歌枠する予定だから今日はお酒やめとくね〜 」
と言っていたが、もしかしたら誰かの酒を間違って飲んでしまったのかもしれない。
とりあえず酔ってないか確認するためにもけちゃおの元に行って
「けちゃお〜大丈夫か〜?」
と声をかけてみるが、
「ん〜〜……ぅん〜〜……」
といった要領を得ない返事しか返ってこなかった。
「けちゃお酒飲んだ?酔ってる?気持ち悪いとかあるか?」
「んん、ボク今日お酒のんでない。よってない。」
「そんな真っ赤な顔で言われたって信憑性ないって。ほら、途中まで送ってやるからもう帰るぞ。」
「ん”ん”〜〜〜よってない、かえらない」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ。」
なんて押し問答をしているとふと、いつの間にかけちゃが来た時には脱いでいたはずの上着を着ていることに気付いた。店内は暖房がしっかり効いているし、この盛り上がりもあってもはや暑いくらいだ。それなのにわざわざ上着を着るなんて、もしやこいつ酔ってるんじゃなくて熱があるんじゃ……と疑い始める。
一度気付くと、酒を飲んでないと言うのに顔が赤いのも、いつもよりボーっとしていて返事が要領を得ないのにも合点がいく。
「けちゃお熱あんじゃねーの。ちょっと触るぞ。」
聞いてるか聞いてないか分からないが一応一言断りをいれてけちゃおのおでこ、ほっぺ、首と触って体温を確かめる。ちょっと熱い気もするがまだそこまで熱は高くはないか……?なんて考えていると不意にけちゃおが俺の手をとって自分のほっぺに当ててきた。
「まぜちのて、つめたくてきもちぃ……」
いつもならなんとも思わないはずだ。
それなのにいつもより紅潮した頬が、いつもより水分を多く含んでとろんとした目が、気持ちよさそうにこっちを見つめる表情が、俺をけちゃおから目が離せなくさせて、意識的にか無意識的になのか理解する間もなくけちゃおに顔を近付けていって────────
「おいまぜ太、病人に手ぇ出すなよ」
ぷーのすけの呼び掛けでハッと意識が戻る。
正気に戻ったことで先程の自分の行動を思い出して頭が混乱する。
俺今何しようとした……?いやいや俺男は無理だし、しかもよりにもよって相手はけちゃおだし、でもぷーのすけに止められてなかったら今頃絶対……なんてぐるぐる考え込んでしまっていると
「この酔っ払いどもの面倒は俺が見たるからまぜ太はけちゃおのこと送ったり。くれぐれも送り狼にはなるなよ〜」
というぷーのすけの指示を聞いて(一言余計だが)、まだ混乱してる頭を何とか働かせて自分の荷物とけちゃおの荷物を持って外へ出た。
冷たい風が顔に集まった熱を冷ましてくれて、少し冷静になれた気がする。
とりあえずタクシーをつかまえてけちゃおと一緒に乗り込む。
けちゃおは相当限界だったのか、タクシーに乗ったらすぐに寝てしまった。
すやすやと眠るけちゃおの寝顔を見ていると先程の行動を思い出しそうになって、慌ててイヤホンを取り出して好きなバンドの曲を聴いて気を紛らわせた。
そうこうしているうちにけちゃおの家の前についたが当の本人はまだ気持ちよさそうに寝ているため起こすのも忍びなく、けちゃおだけ降ろす予定だったが俺も一緒にタクシーをおりて部屋まで送ることにした。
何とか部屋まで運び入れ、けちゃおをベッドに寝かせて帰ろうとした時、くんっと袖を軽く引っ張られた。そんなことをするのはこの場には1人しかいない。
「けちゃお、起きた?」
「まぜち……?ボクのいえ、なんで……?」
「お前熱っぽかったから俺がわざわざ送ってやったんだぞ、感謝しろよ〜。じゃあ俺は帰るから、安静にしとけよ〜」
そうして立ち上がろうとした時、今度は先程よりも少し強い力で袖を引っ張られた。
「まぜち、いかないで……いっしょにねてほしい……」
「いや俺この後作業する予定だし、それに男と一緒に寝るのは……」
「おねがい、まぜち」
「〜〜〜〜〜っ、今回だけだからな……」
今日の俺はなんかおかしい。男と同じベッドで寝るなんて、絶対に無理だったはずなのに、けちゃおに甘えられると何故か断れない。
アンプの中でも特に気が合って仲良いから?
病人だから無意識に優しくしてるとか?
珍しく酒に酔ってしまった?
いろいろ考えすぎて知恵熱が出そうだ。
もしそうなったら今度はけちゃおに看病してもらおうなんて考えながら眠りについた。