『手を引いて』
srng
注意⚠︎︎
・nmmn、srngの表記に覚えが無い方は回れ右
・スクリーンショットでの画像拡散は禁止です
・うっすらhbkn要素も含みます
なんでも許せる方のみ
「ただいま帰りました〜、って、セラ夫?」
迷い猫探しの依頼を無事終え、お礼のスイーツを手に事務所へ帰ると、そこには窮屈そうにソファに寝転がる男の姿があった。4人並んで座れるソファで尚狭いってどういう事だ、全く。
「セラ夫、そんなところで寝たら風邪引きますよ」
顔の前でしゃがみ、軽く身体を揺する。
「んん…、」
以前までは警戒心丸出しで、人前で寝るなんて有り得なかった男が今自分の前で穏やかな寝息を立てて寝ているのに、なんというか少しの優越感のようなものを感じた。
「また…帰り、おそかったでしょ…」
彼の手が背中に触れる。その手には、外気で冷えた身体をじんわりと溶かしてくれるような暖かさがあった。
「今日は依頼の数が多かったんです、猫もすばしっこくて…」
「…きょうは、って言うけど、最近ずっとじゃん」
そのまま身体を起こし、両手で私を包み込んでくれる。普段は私が求める方が多いが、今日は逆らしい。それは眠気故なのか、それとも、また別の理由なのか。
「ごめんなさい、明日の依頼が終わったら少し落ち着くと思うので…。それより、依頼主さんから美味しそうなケーキを貰ったんです、一緒に食べませんか?」
「ん…たべるう、」
「…セラ夫?離してくれないと立てないんですけど…」
「このままでいいよう…」
よほど眠いんだな、こんなセラ夫は初めて見た気がする。
「歩きずら…」
でも、今はこの重さが愛おしいと思えた。
⟡.·
「たっだいま〜!いや〜、今日はいい買い物が出来た!」
「かなとぉ〜、どんだけ買ってんだよ重いってぇ〜」
空の色に似合わない元気な声と共に店に入ってくる男2人。ここのオーナーの風楽奏斗、そして渡会雲雀だ。2人は今日店の買い出しに行っていたらしく、大きな紙袋をいくつも抱えていた。
「ああ、おかえりなさい。すこしカウンター借りてます」
「おかえりって、ここ僕の店だけどね?アキラ?」
「合鍵渡してきたのそっちじゃないですか」
色とりどりのケーキをカウンターに並べながら2人に目をやる。
「なにそのケーキ?!アキラが買ってきたんか?」
瞳をキラキラと輝かせながらたらいがこちらに身を乗り出してくる。
「依頼人の方から貰ったんですよ、最近お店が駅前にできたらしくて」
「ええ〜、それ大丈夫?なんか盛られてたりしないの?」
冷凍品をしまいながら奏斗が口を尖らせる。
「普段からお世話になってる方なので大丈夫ですよ。私もひとつ食べて平気でしたしね」
「ああそ、…っていうか、ずっと気になってたんだけどさ」
荷物をしまい終わったであろう奏斗がこちらを指さす。
「セラ、さっきから何してんの」
「今日は冷えますからね…人肌恋しくなったんでしょう」
私の腰に手を回し、ぴったりと張り付くセラ夫。
「そういうのは外でやってくださあ〜い」
「奏斗もたらいといつもしてるじゃないですか」
「ここ僕の店だからね、ちなみに2回目ね?このやりとり」
私たち3人の話し声で目が覚めたのか、腰に回された手が解かれ暖かい身体が離れる。
「あ、セラお起きたな〜?アキラが美味いケーキ持ってきてくれたってよ〜」
「用意出来たので、食べましょう。みなさんどれがいいですか?」
「あ、待って。今日ちょっと良いお紅茶を買ってきたんだよね〜、僕みんな分淹れてくるよ」
席を立ちキッチンの棚を漁り出す奏斗と、そんなのお構い無しにケーキをひとつふたつと選ぶセラ夫とたらい。
「凪ちゃんどれにする?」
「私は先程ひとついただいたので、余ったものでいいですよ」
「ちょっと!僕の分も残しておいてよ!」
「これ俺とセラおで全部食えるな…」
「ちょおっとー!紅茶淹れてあげないぞ!」
綺麗な夕暮れ空に響く賑やかな声。
この時間が少しでも長く続いて欲しいと願ってる
「ふふっ、」
と、笑みが零れた。
コメント
1件
帰りが遅い、と書いたのに最後に夕暮れと言っているのは、四季凪は普段事務作業や依頼の相談などを請け負っている※イメージ ので、一日中外に出かけて依頼をこなすのは珍しかったりするのかな…と考えた結果のものです。違和感があった方はこういう事です