テラーノベル
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「 うぅ〜、がんばれ!!」
「いっけ〜!!」
これで39回目。投入金額3900円。もうすぐで4000円に達するところだった。
ここはシェアハウスの2駅先の町にあるショッピングモールのゲームセンター。
切れてきた食材とそれぞれの必要なものだったり撮影に必要な器具を1部メンバーで買いに来ていた。
食材を買いに行くことになったのは料理担当である俺とのあさん。
意外と早く買い物が済んだから近くにあったゲーセンで暇つぶしすることにした。
のあ「え!!とかげ!まって可愛い!」
たっつん「お、のあさん好きなやつやん」
すみっコぐらしのとかげ。のあさんが昔から好きなキャラクター。デスクなんか一時期とかげだらけやったっけな。もういらんやろーって思うけどたしかにこれは可愛い。なんかマフラーついとんな、今の季節とは真反対やけど。まぁこんなこと言ったらのあさん不機嫌なるから言わんとこ。
のあ「私これやろっかな」
たっつん「でもこれ中々むずない?」
ぬいぐるみの中でも大きめのサイズ。しかも丸っぽくて引っ掛けるとこはないと思う。俺もこれに似たやつ挑戦したことあるけど20回目くらいで諦めた。
のあ「んー、でも最近お金入ったし!!取れるかもしれんやん?」
たっつん「まぁ、そうやな」
8回目。上まで持ち上がりはするものの取れる気はしない。
のあ「あっ〜!また同じとこで落ちる!!」
たっつん「これって確率ゲーらしいで。知ってる?」
のあ「え、そうなん?」
たっつん「うん。こういうタイプのアームは確率。やから多分めっちゃお金かけんと取れんかもな」
のあ「えぇ〜、うそぉ、」
明らかにシュンとした顔をするのあさん。財布に手をつっこんでいた手を止めて、機械の中にあるぬいぐるみを見つめた。
たっつん「そんな欲しいん?」
のあ「うん、やけどもういいや…」
さっきまでの笑顔が消える。俺の好きな表情が消えた。でも本音を言うと落ち込むところまで愛おしい。
のあさんのころころ変わる表示は好きやし見るのは楽しい。でも1番好きなのは笑ってるとこやから。それにのあさんの表情、感情を変えるきっかけが俺でありたかった。
新しいキーボードを買うために貯金してたけど今さっきそれより欲しいものが増えた。ポケットに入れていた財布から100円玉を取り出す。
たっつん「しゃあない。俺がやったるわ」
のあ「えぇ!?!いいん!」
たっつん「任せとけ!」
のあ「やったー!!流石たつや!!」
パッと表情が明るくなる。これで俺が欲しかったものは手に入れたけど更に上のものも欲しくなった。
てなわけで現在に至る。
結局何回もやったけど全然取れん。
「もういいよ」とか「もうこれで終わろ?」とかのあさんに何回も止められたけど俺の手は止まらんかった。
このぬいぐるみを取る。それ1本に集中してたからやと思う。決めたら何がなんでも成し遂げたいし。でもそれに焦るのあさんのことはもちろん見逃してないけどな。
あ、まってなんか頭で考えてたせいで右側にアーム落としてもうた。最悪絶対取れへんやん……って、、
えぇぇぇぇぇ!!
のあ「めっちゃ掴んでる!!これ取れるんやない!?」
アームはぬいぐるみをガッチリキープしたまま獲得口へと動いていく。
獲得口の真下にとうとうアームがきて、開いた途端下へぬいぐるみが落下した。
たっつん「うおおおおお!!!!」
のあ「やったあ!!!!」
2人して叫びに近いくらいの声量でものすごい声をあげた。今考えるとだいぶ迷惑やったと思う。けどそんなん気にしんくらい嬉しかった。
たっつん「ようやくやぁ、」
のあ「ね!とってとって!早く近くでみたい!!」
しゃがんで獲得口から俺の顔より2倍くらいあるぬいぐるみを取った。
のあ「おっき!!思ってたよりおっきい!」
たっつん「やな!これ取ったんすごくね?」
のあ「すごい!!でも確率やったね笑あれは完全に」
たっつん「今そんなメタいこと言うな!雰囲気壊すなぁ!」
のあ「あはは!!笑」
たっつん「じゃあ、はい。大事にしてや?」
のあ「え?くれるん?」
たっつん「いや逆にえ?のあさんの為にやっててんで?」
のあ「そうなん!?たっつんさんがこれ欲しいんかと思ってた」
たっつん「ちゃうわ!!」
のあ「まぁ、ありがと!ん〜ほんと可愛い!!」
とかげのぬいぐるみをそういって抱きしめた。俺な訳じゃないのに俺が抱きしめられてる気分。
最初は買い物も乗り気やなかったけど行ってよかった。のあさんの色んな表情、また見れた気する。今のぬいぐるみに顔埋めすぎて顔赤くなってんのものあさんらしくて愛おしいし可愛い。
たっつん「あ、ゆあんくんらも買いもん終わったって」
のあ「じゃ早く行こ!!これ皆に自慢しよーっと」
のあ「あ!いたいた!!ゆあんくーん!」
ゆあん「お、きたきた!!あれ、のあさんが持ってるぬいぐるみとかげやん」
のあ「そう!!可愛いでしょ〜!たっつんさんが取ってくれた!!」
うり「え!これ取ったん?すげぇめっちゃデカイのに」
たっつん「せやろ??」
のあ「他のみんなは何買った?」
もふ「俺は新しいマウス!最近壊れてきちゃってさー」
のあ「え!いいなぁ!ゆあんくんは?」
ゆあん「え、あ、俺?俺は別に…なんも」
のあ「え?」
ゆあん「あー、ごめん頭痛くなってきた。早く帰ろうぜ」
のあ「うん、わかった…ぇぇと、大丈夫?」
ゆあん「大丈夫。帰ったらすぐ寝るから」
ゆあんくんの言葉と表情でさっきまで明るかった雰囲気が一気にごちゃごちゃとした気まづい空気に一変した。
鈍感なうりは急な態度の変化に疑問を浮かぶだけで対して気にしてへん、もふくんはゆあんくんの態度に不満を抱いてるように見える。
俺と同じく気持ちを察しやすいのあさんも今回は何が起こったのか気づいてない。だって傍から見ればただの一瞬の雑談やもん。
でもライバルであり、常に一緒にいる俺にはゆあんくんの考えてることも気持ちも丸わかり。
このぬいぐるみ、のあさんずっと絶対に離さないって読み取れるくらいの力で抱きしめとるんやもん。そりゃ、嫌よな?嫉妬するよな?だってゆあんくんのあさんのこと好きやもんな。まぁ俺からしたら好都合やけど、って
考えてること最低やんオレ!!
ゆあんくんにそんなライバル心なんか持ちたないし。この考え早く辞めよ。
たっつん「ふぅ〜さっぱりぃ」
ようやく順番が回ってきた風呂。今日は運悪く7番目。風呂入るまでに何時間待ったか。
今日買い物のついでに買ったおNEWのパジャマを着て風呂場を出る。汗をかきにくいパジャマらしい確かにサラサラしとる。誰か気づいてくれんかなーと軽い期待を抱いて、リビングに戻った。
リビングにいたのはたった1人。ぬいぐるみを抱えたまま今期の恋愛ドラマを見ているのあさん。
のあ「あ、たっつんさんパジャマ買えた?」
たっつん「おん。今日買ってん」
いつも俺の変化に1番早く気づいてくれんのはのあさん。
そういう周りを見て行動する性格が好き。でもそれは逆にこの扱いは俺だけやないってことも示してる。
のあ「いいね。似合ってる!」
たっつん「ありがと、/」
のあ「ふっ笑、たっつんさん、照れてる笑」
たっつん「はぁ、!//照れてへんし!!」
のあ「顔赤いやん笑」
たっつん「うっさい!!//はよ寝てこい!」
のあ「えー!!まだドラマ終わってへんもん!」
たっつん「上で見てきたらええやん!!」
のあ「風呂もまだ入ってへん!」
たっつん「あぁ、、!もう俺が上行くわ!!」
のあ「いいよいいよ!!笑お風呂入ってくる。ちょっとからかいたかっただけやから!笑」
たっつん「…うざ、!!」
はぁ、俺そんな顔赤なってたんかな?恥ず、、
のあさんしかおらんくて良かったけど。
ソファに視線をやるとさっきまでのあさんが抱えていたとかげのぬいぐるみ。
たっつん「ふ、っ、笑」
のあさんのぬいぐるみを抱えている様子を思い出したら自然に口が緩んだ。緩んだというかニヤけるってのが正しいか。
ずっと抱いてるけど暖かいんか?
ただ単純な疑問とのあさん、ではないけどのあさんに触れたいって気持ちでぬいぐるみを同じように抱いた。
……暖かくは別にないな。でも落ち着くような感覚。それに見覚えある匂いがする。俺の好きな匂い。女の子らしい匂い。のあさんの匂いや。
気づいたらぬいぐるみに顔を埋めていた。
ゆあん「なにしてんの?」
たっつん「うわぁぉ!!」
俺が今1番会いたくない人。しかもこんな時に…!!
ゆあん「それのあさんのじゃん、笑」
たっつん「あぁ、うん。そう、」
ゆあん「なんで抱きついてるわけ?」
たっつん「……お、俺が取ったし、触ってみたくなっただけ、」
ゆあん「へぇー」
たっつん「ゆあんくんは体調治ったん?」
ゆあん「あー戻ったよ、ていうかまず嘘笑。たっつんは気づいてたっしょ?」
たっつん「まぁな、笑」
もちろん。嘘ぐらい気づいてる。気づいてたこと、ゆあんくんもお見通しやったわけか。
ゆあん「でも別の意味で頭は痛かったけどね」
たっつん「え?」
ゆあん「だって嬉しそうに自慢してくんだよ?のあさん。たっつんさんが取ってくれたって。しかもよりにもよってたっつんやし」
ゆあんくんの表情、最初は無心でこっち見つめてきとった。けど今は笑ってる不自然なほどに。
ゆあん「たっつんはさぁ、のあさんのこと本気なの?これからどうするつもり?」
たっつん「…俺は、」
本気に決まってる。のあさんのことゆあんくんが想ってるよりも絶対好きやし。
でもこれからどうするとか、そんなんはない。
今のままの距離でも俺はいい。皆にその笑顔を振りまくってるのは嫌やけどな。
たっつん「俺はどうもしいへん。」
ゆあん「なんで?のあさんのこと本気じゃないん?」
たっつん「本気に決まってるやん。でものあさん、今の環境が変わんの絶対嫌やと思うし。それは俺もそう」
ゆあん「ふーん、そうなんだ」
たっつん「ゆあんくんは?」
ゆあん「…俺はもういくよ、奪いに行く。たっつんの為に気持ち抑えてあげてたけど今回ので全部吹っ切れたから。」
たっつん「…そっか。」
ゆあん「いいの?俺が取っちゃっても。もしかしたら束縛しちゃうかもね。たっつんと喋らせてあげないかも」
たっつん「ええよ」
ゆあん「何だよ、軽すぎ、笑お前のこともう分からんわ」
呆れたのか、理由は分からんけど歪んだ表情をし、言葉を残してゆあんくんは降りてきた階段を再度登っていった。
そうか、。俺はゆあんくんのこと、ライバル視したないって思ってた。けどゆあんくんはそんなことないんやな。
あん時は咄嗟に了承しちまったけど、束縛とか許せるわけないし。
でもあののあさんがゆあんくんの支配下に置かれるわけが無い。ゆあんくんはのあさんにはどうなっても勝てへんから。それに絶対に何があろうとも恋仲にはなろうとはしない。俺は分かってる。
ごめんな、ゆあんくん。だから俺はその上で妨害する。
のあさんと両思いになれたら。なんて過去の話。
好きやけど本気やけど軽くもないけど、俺はのあさんにアピールなんてことはしいへん。ただ見守るだけでいい。
でものあさんが誰か一人の手に渡ることだけは絶対に許さん。させへん。
風呂場からのあさんが出てくる。そのままキッチンを通り冷蔵庫へ向かった。
そのタイミングを狙って俺はかけ出す
たっつん「のあさーん!!」
階段から降りてきたもう1人のライバルを横目に。
コメント
8件
やっぱ ばこちゃんの書く物語好きだわ! 天才すぎる!
待ってやばい超好き‼️‼️