⚠︎ 何も気にせず好きに書いてます 。
「元生徒なのに現恋人なのはまずいだろうか。」
現時.十二時五十六分。
私は今自宅で所謂ヤケ酒。というものをしている。
一週間終わり。いつもの様に朱雀が私の家から麦酒やら食い物やらを盗みに来たところを捕まえ、今なんやかんやで朱雀はいつも通り私の隣に居る。私はそれに安心したのかなんなのか朱雀に一言ポロリと零す。
「元生徒が恋人というのはありなんでしょうか…」
「は?」
「なになに、どういう事?」
困惑する朱雀に私は回らない頭で説明をする。
「……明君が告白をしてきたんです。」
――
時は遡り現時.八時半。
私は明君に誰も居ない学園の屋上へ呼び出されていた。生徒達は全員帰り、先生方は職員室で資料を纏めていたり、帰っていたりする、そんな時間帯。
私が屋上へ移動した時には既に明君はそこに居た。フェンスに座り、下を眺めていた。私は危ないと思い声を掛けようとするが異変に気付く。明君は私が来ても私に反応しないのだ。私は確かに神出鬼没なぬらりひょん。音も無く現れる事で有名だが、明君は百の眼を持つ鬼妖怪、百々目鬼。私が来た事に気付いていないなんて事は絶対に無い筈なのだが呼び出しておいてフェンスから降りる気配も振り向く気配すらも無い。しかしなんなんだろうか。いつもとはなんだか雰囲気が違う様にも思える。私はそんな明君に不安を覚えながらも明君に声を掛けてみる。
「明君。そんなところに座っていたら危ないですよ。降りてきて下さい。」
私が冷静に声を掛けると明君はやっと振り向き、フェンスから降りてくる。近くに寄られ、やっと気が付いたが、服装が妙に明君らしくない。いつもの様に白衣ははだけていないし、白衣の下に着ている物も、スーツの様で勝負服らしき物だった。
「あ、学園長先生……こんばんは。気付けなくってごめんなさい。その…御時間頂いちゃって、申し訳ない……です…?」
ぎこちないいつもより丁寧な敬語。
照れ臭そうに後ろ頭を明君は掻いてみせた。
「えと…その……なんだろ、話があって……」
「なんですか?」
私が明君の言葉に反応すると明君は暗くても分かる程分かりやすくびくっと肩を上げる。
「あ…あのですね……!僕…僕……学園長先生の事が………」
そこで言葉が止まる。
言葉がいきなり止まった事を疑問に思っていると明君は私に更に近付き、私の仮面を取ってみせる。私はそれに驚き、「ちょっと!!」と大声を出すが明君は覚悟を決めた様な顔で私の肩を掴む。明君の整った顔がすぐ近くにあるという事に私は少しどきどきする。
「明君……?大丈夫ですか?」
「です……」
「はい?」
「すき…………です……………」
「え?」
小声だが確かに聞こえた。
好き?誰が?私が?私は困惑する。
とにかく困惑した。
「す、すみません……もう一度…」
私がそう言い、明君の顔を見ると今にも泣き出しそうな、逃げてしまいそうな顔が私の瞳に映る。見た事がない明君の顔に更に私は困惑しつつ、明君が口を開くのをただ待った。数分の沈黙。明君がやっと口を開く。
「すき…なんです……学園長先生が…どうしようも無い程………」
「……私が?」
弱気にそう言う明君を私はただ見つめる。明君は下を向きながら、
「はい…」
と答えた。
明君はこんなにも時間を掛けてそれを言ってくれたがしかし、私の答えは決まっていた。
「すみません。私は貴方をそういう目では見れません。向き合えません。貴方が私の目を見てくれない限りは、私がその答えに応じる事はありません。」
私は厳しい言葉で明君を切った。
すると明君は今度は私の目を見て言った。
「知ってます!あー…!!スッキリしました!来週も宜しくお願いしますね!学園長せんせ!!」
どう考えても作り笑いなその笑顔は、私の心を深く抉った。
――
「へー。」
予想通りの興味が無さそうな声が私の耳を通った。
「あっちゃんさぁ、馬鹿だね。」
と思えば思いもしなかった言葉が私の耳を刺す。
その声はいつもの能天気な朱雀の声では無く、少々ピリついた、そんな滅多に聞かない声だった。
「可哀想に。明君。僕なら即オーケーしてあげるのに。」
「貴方と私では違うんですよ。」
「ふーん。でもさ、あっちゃん、明君の事好きでしょ。」
再び思いがけない言葉が耳をぐさぐさ刺す。
私は「はぁ?!」と声をあげるが、朱雀は続ける。
「だって、顔に書いてあるよ。なんでフッちゃったんだろっていう後悔の文字が。僕、あっちゃんのそんな顔全然見た事ないもん。好きとかそういう恋愛感情にあっちゃんが気付きたくなくて、元生徒だから、とか目を見てないからとか適当な理由付けられてフラれた明君が本当に可哀想。」
「……」
あまりにも朱雀が明君の肩を持つ事に少し胸がちくっとする。確かに、私は後悔しているのかもしれない。好きとまではいかなくても、どうしてあんなきつい言い方をしてしまったんだろうと。あぁ、いや、違うか。気付いていたのに気付かないフリをしていたのが私の心の奥底のもやなのか。
「俺は……明君が好きなんだろうか…?」
「だから、そう言ってんじゃん。あっちゃんの分からず屋。」
プシュッ
朱雀は乱暴に麦酒を開け、乱暴に麦酒を呑む。
そして見事に麦酒を一気に平らげた後、私の背中をバンッ!と叩いた。
「いっって!!!!」
「ほら、行ってきなさいよ。恋する乙女をいつまでも放っておくんじゃないわよ。今度はあっちゃんが明君の目を見て、伝えてあげる番なんじゃないの?」
朱雀は俺の顔を覗き込み、にひっと悪戯っぽいいつもの笑顔を見せる。その笑顔に俺は安心したのかなんなのか、「そうだな」と返事をし、立ち上がる。朱雀は今度はいつも通りの声色で「そうよそうよ!さっさと行きなさいよ!!」と更に俺の背中を押す。
「おう。ありがとな。朱雀。」
「大した事してないよ僕さ。ただ知り合いの相談を聞いたげただけさ。」
「知り合い…か、んじゃあ、俺が明君に許して貰えたらお前と友達ぐらいにゃあなってやんよ。」
「……あーそう。ありがとありがと。ほら!行った行った!!いつまで僕と喋ってんの!」
俺はその朱雀の言葉に大声で返事をした後、走って家を出た、深夜だし、酒臭ぇし、ダセェ事もしてしまった。許して貰える保証も無い。だが、謝りたい。あんな曖昧な事でフッてしまった事を。そして今度は俺が、きちんと伝えたい。
――
ピンポーン
そんな音が深夜の沈黙に響く。
どたばたという音が聞こえた後、ガチャっと乱暴に扉が開く。酒臭い。俺と同じ匂いだ。
「ぇ……がくえんちょお…?」
掠れた声に、少し腫れた両目が俺の目を、耳を惹く。
本当に、私はどうしようも無い事をしてしまったと再認識させる様だった。
「えと…昨日はすみませ……」
「明君!!!!」
「はっ、はい?!?!」
謝りの言葉を言わせんとばかりに私は明君の言葉を遮る。明君はそれに驚いたのか肩をビクつかせた。
「昨日は申し訳ありませんでした、困惑していた…なんて言い訳にしかならないのは分かっています……ただ、貴方に私は謝りたい。」
「ぇ、いや、いいですよ。寧ろあんなに潔く、有難う御座いました。僕もやっと貴方の事を諦められ…」
「諦めないで下さい……」
昨日の明君の様な弱々しい声で、だがしかし明君の赤く、美しい瞳をしっかり見て。
「私は貴方に嘘を吐いた事を謝りたい。」
「え?」
「貴方を恋愛的な目では見れないと…嘘を吐いた事を私はただ謝りたいのです…!」
明君は昨日の私の様に困惑した表情を見せる。昨日と立場が逆転しているだけでは無く、フラれた相手にこんな事をいきなり言われたのだ。当然か。
「つ……つまり………?」
明君は少し期待した様な顔で私の目を見た。
私はそれを逃さんと思い切ってやっと伝える。
「私は貴方が好きなのです。明君。」
「ぇ、……本当に………??」
私に再度確認を取る明君に私は追い討ちを掛ける。
「本当です。私は貴方が好きです。貴方を愛しているのです。だからこそ、あの時貴方が一生懸命伝えて下さった言葉にあんな曖昧な事を言い、フッてしまった事を私は謝りたい。許して貰えるだなんて微塵も思っていません。罵倒される覚悟で伝えにきたのです。」
「あは、馬鹿ですね。学園長せんせ。」
俺の瞳に映った明君は美しかった。
儚げな笑顔で涙を流しながら照れ臭そうにしている君に俺は一瞬で虜になった。
「罵倒だなんて…好きな人にする訳が無いんです、ですからその代わり……僕の傷付いた心を癒す為にも一生傍に居て下さいね。学園長せんせ。」
「……蘆屋 道満な。」
「……道満さん?へへ、これから宜しくお願いします。学園長さん。」
「あぁ、宜しく頼む。」
俺は一生涯掛けて、この子に付き添うのだろう。
元生徒など……関係は無かったらしい。
幸せなら…それで良かったらしい。
――
「はー、馬鹿みたい。本当に……あっちゃんは馬鹿だなぁ。でも良かったね。幸せそうで。」
「………………本当に、可哀想な僕。」
――
今回のお話は素直になれず💉の告白を断っちゃった🎭から相談を受けて誰にも知られず失恋しちゃった🐦⬛のお話でした 。有難う御座いました 。
今回はRは無かったので次回は遊び半分で書きたいです 。真面目には書けないです 。
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