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#現代ダンジョン
夜鐘
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#学園
大正
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裏五条
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異世界・ウォーロスト。
基本的にこの異世界で異界の門が開く時は新しい終身刑の囚人が放り込まれる瞬間だけであり、何重にも構築された防御壁は煌気を手錠で封じられた状態ではいかな猛者でもどうしようもない。
よって、新参者がウォーロストに叩き込まれるたびに、古参の囚人ほど腹ふくるる思いを募らせていた。
だが、その感情は今、エネルギーとなって彼らの魂を燃やす。
2度と出る事が叶わないと理解していた極寒の地。
そこから這い出し、アトミルカに参加できる。
それはスキル犯罪者にとって、願ってもない僥倖であった。
元アトミルカの人間にとってはさらにひとしお。
ある者は作戦のために犠牲となり、またある者は自分の失策で囚われた。
理由や事情は違えど、「イドクロアを我が手に」と同じ旗印に集った者たち。
彼らはかつてない結託を見せ、一体感を高めていた。
「Z3番殿! い、異界の門をご覧ください!!」
「……おお! 素晴らしい! 2番様が有言実行なさったのですよ!! 手筈通りに参りましょう! 囚人の方たち! 先に異界の門をおくぐりなさい!!」
3番は代々、非人道的なスタイルを旨としなければならない決まりでもあるのだろうか。
Z3番は、「アトミルカに加わりたい。だから脱獄に加えてくれ」と懇願して来た者たちの心を掌握していた。
「アトミルカの幹部には逆らえない」と言う刷り込みを入念に行った結果、ウォーロストの囚人たちは極めて屈強な兵士として完成している。
「某たちがまず、行って安全を確認するのでしたな?」
「ええ。そうです。あなたは理解が早く助かりますね。お名前は何と言いましたか?」
「姫島と申します。姫島幽星です」
「そうだ。そうでしたね、姫島さん。今、このカルケルを守っているのは、あなたと同じ日本の方らしいですよ? なにか思うところはありませんか?」
「いえ。某は人を斬る事ができればそれで満足。某の煌気刀の切れ味を今一度、確かめたく。そのためでしたら、アトミルカの指揮下に加わりましょう」
「その思想は理解できませんが。ブシドーと言うヤツですか? では、姫島さん。5人ほど囚人を連れてお行きなさい。危険がなければ、わたくしたちに合図を送るのです」
姫島は「承知」と短く返事をして、何の迷いもなく異界の門を通り抜けて行った。
「さあ、あなたちも行くんですよ! いつまで異界の門が開いているか分かりませんからね!!」
「は、はは、はい」
「人遣いが荒いぜ。アトミルカさんはよぉ」
Z3番の編制した偵察隊が、現世へと舞い戻る。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おぎゃあああぁぁぁっ! ヒゲ! お前、人間の心はねぇのかぁ!? あ、痛い痛い痛い!! ごめん、おヒゲがとってもダンディね!! あああ! 痛いってぇ!!」
魔剣・逆神大吾。
肉付きが良く、ほどよい重さで振り心地も抜群の人間ソードである。
「……あれは、本当に人間ですか? 2番様に捕まってから、もう3分はああやっていますね? 興味深いですが……。余りにも醜い」
「くははっ! 逆神って名前のヤツぁ特別なんだよ! てめぇ、よそ見してんじゃねぇぞぉ? 『結晶流星群』!!」
3番は阿久津の『結晶』を事もなく捌く。
まるで、構造を知り尽くしているかのように。
それもそのはず。
『結晶外殻』を作ったのはZ3番だが、それを阿久津の元へと流したのは、他ならぬこの3番なのである。
味方になるか不明な者に装備を渡すのであれば、仮に反旗を翻した際に対応できるよう研究し尽くしておくのが3番クリムト・ウェルスラーのやり方。
「先代も実に面倒な装備を作ったものです。……が、私に言わせれば無駄が多いんですよ! 『結晶』をコントロールする煌気量に非効率さを感じますね! 『シザーズ・ブラスト』!!」
「ぐおっ!? こいつ、俺の『結晶外殻』のちょうどガードできねぇ部分を、また!? くそ、面白くねぇなぁ!?」
阿久津浄汰一党に『外殻』の技術を受け渡したのは当時の10番台。
ゆえに、阿久津は3番が『結晶』について深い見識を持っている事を知らない。
非常に相性の悪い対戦カードだった。
苦戦する阿久津を見て、振り回される親父からは目を逸らし。
逆神六駆は考えた。
「報酬のためなら、仕方がない!」と。
覚悟を完了した彼は、煌気を一気に高める。
2番と同じ位まで。
いや、さらにその先まで。
「ふぅぅぅぅぅぅんっ!! 『瞬動・四重』!!」
「……なんだと!? お前、一体何者だ!? その煌気……先ほどまでは本気ではなかったとでも言うのか?」
「ええ。本気じゃありませんでしたよ? ちなみに、今は結構本気です。僕もお金がかかっているので!」
四方八方に飛び回る六駆。
あまりのスピードに、多数の残像が発生する。
「なるほど。だが、その高出力をいつまでも続けられまい? 父親を人質に取られて、頭に血が上ったようだな」
六駆は移動を止め、棒立ちで2番に向かって言った。
「本当にヤメてもらえますか? 僕にとって、それは最大の侮辱だなぁ」
「こ、こいつ……。何と言う殺気だ……!!」
ついにアトミルカに対して「弱い振りをしながら暗躍する」スタイルを捨てた六駆。
これは2番がそれをしなければならないほど強力だった証明であり、六駆も1500万円の報酬さえなければ「面倒だから」と言って即時撤退を選択しただろう。
だが、その強さが凶と出る。
どうも今日は逆神六駆にとってアンラッキーデーの様子。
珍しく、彼の行動が裏目裏目に出てしまう。
「……理解した。お前、逆神と言ったか? では逆神。お前は非常に危険であり、不確定要素でもある。作戦を完遂するための、最大の障害となるであろう事も想像に難しくない。認めよう。どこで身に付けたのか知らんが、その力。私を上回っている」
降伏宣言にも聞こえる2番の言葉。
「いやぁ! 意外と物分かりのいいおじさんで助かったなぁ!」
「まずは父親を返そう。そら、受け取れ」
蹴り飛ばされる大吾。
「おぎゃあぁぁぁぁぁっ!! あ、六駆ぅ!! 心細かったぜぇ、愛しの息子ぉ!!」
「うるさい!! 『豪拳・四重』!!」
とっておきのスキルを惜しげもなく親父に使うのはおヤメなさい。
2番が叫ぶ。
「3番!! 緊急プランに移行だ!! 条件が幸いにも整っている!! 5秒以内に始動せよ!」
「はっ! かしこまりました!! 阿久津でしたか? 君もあちらへ吹き飛びなさい! 『シザーズ・リベルス』!!」
阿久津の体が水平に吹き飛ばされる。
「ちぃ! 斥力かよ!? ニッチなスキル使いやがってよぉ!!」
この瞬間。
異界の門を背にした状態で六駆、大吾、阿久津の3人が並んだ。
時を同じくして、異界の門をくぐって来る姫島幽星。
彼は「なるほど。大詰めの様子」と呟き、後ろから来る囚人に「総員に、今すぐ門をくぐられよと伝えてくだされ」と叫んだ。
その声はウォーロストにも届く。
アトミルカ脱獄組は異界の門の真正面で待機していたため、行動は速かった。
「お聞きになりましたね、皆さん! 参りますよ!! さあ、門の向こうへ!!」
「「おおおおっ!!」」
背後から大量の人間が出てきて、六駆は判断に迷う。
迷ったとは言え、時間にして1秒に満たない刹那である。
が、結果的にその刹那が運命を決定づける。
「さらばだ。逆神。……『鎖斧』!! ……やれ、3番!!」
2番の投げた斧が回転しながら鎖に姿を変える。
六駆の腕に絡みつき、阿久津の右足と大吾の顔面にも襲い掛かった。
「かしこまりました!! 『シザーズ・フォルテオル・リベルス』!!」
そこに撃ち込まれる、強力な斥力砲。
「うわぁ。最悪だ。さっさと親父を斬り刻んだら鎖から脱出できたのに……」
六駆が悔しそうに呟いたが、その声もすぐに聞こえなくなる。
3人は異界の門をくぐり、異世界ウォーロストへと落ちていった。
コメント
1件
おお、第387話読んだわ。逆神六駆が遂に本気出した!って思ったら、まさかの親父を人質に取られて戦術的敗北か…。相変わらず報酬絡みじゃないと動かないスタイルはブレてなくて笑ったけど、あの『瞬動・四重』の描写は痺れたな。自分が不利になる選択をあえてするキャラの葛藤がいいわ。で、ラストのウォーロスト送りからの姫島登場も熱い。次が気になるわ🔥