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「「いらっしゃいませー」」
今の俺は、元貴と一緒に勤めていた会社を辞め、少し洒落たカフェで働いていた。
前の職場からも遠く、会うことを避けるために。
「ご注文はお決まりですか?」
薄っぺらい笑顔を貼り付け、人様が食べた食器を片付けたり、オーダーを取ったり……
正直、「汚っね」とか思う時もあるけど、皿よりも汚れている体内の記憶を消すため、残業も難無くこなしていた。
仲の良い同僚も出来たし、
きっとこのまま、元貴との思い出を忘れて、俺らしく生きていくもんだと思っていた。
『お疲れ~』
「あ、涼ちゃんお疲れ。」
青く長めの髪をした涼ちゃん、
仲の良い同僚の1人。
シフトを終えたのか、手際よくエプロンを脱いでいる。
『てか聞いた?』
スマホを見ている俺の向かいに座り、自慢げに微笑んでいる。
「なにが?」
『今日さ、喧嘩してたカップル?居たじゃん?』
「え、なにその話。」
『え、知らない?』
「俺たぶん、その時キッチンだわ」
『じゃあ教えたげる!』
興奮気味に話し出す涼ちゃんが珍しく、少し話に期待をしていた。
fjsw.side
賑わう昼時。
いつも通り接客していると、
とあるカップルが入店してきた。
『いらっしゃいませ!』
「……2人で」
黒縁眼鏡を付けた男性と、
その、、まぁ胸の大きめの女の人が微妙な距離感で並んでいる。
『テーブルにご案内しますね』
それぞれが頼んだであろう物を受け取り、2人のいるテーブルへ。
『お待たせいたしまし……』
その時、女の人は勢い良く立ち上がり、男の人に向かってお冷をぶちまけた。
ばしゃっ
『ちょっ、、お客様?!』
「ほんとサイテー!! セフレとはいえ、常識ってもんがないわけ?!」
セフレ……そんな単語に驚きながら慌ててタオルを取り出す。
『お客様、落ち着いてください!他のお客様もいらっしゃるので、、 』
一方、水を掛けられた男性は…
真顔で女性を見詰めながらピクリとも動かない。
「アンタみたいなやつ、、選ばなきゃ良かったわ!!」
「モノがデカイからって調子乗んなよ、!!」
『ちょっ、、』
あまりにも下品な言葉を吐き捨て、女性はお金も置かずに去ってしまった。
『大丈夫ですか…?』
僕が恐る恐る声を掛けると、
その人は怖いくらいに微笑んで無言でお金を差し出してきた。
「足りますよね?」
まぁ、謝らない時点で常識ないのは伝わってくるけど……
『(怖ぇ、、、泣)』
wki.side
『って、ことがあったわけ~』
心底面白かったのか、涼ちゃんはケラケラ笑いながら話進める。
……絶対元貴じゃん。
興味のない人は、マッチしたセフレだろうと常識外れの対応をする。自分の好みじゃない子は特に……
そっか、今は女の子を抱いてるんだ……
少しガッカリして肩を落としていると、
『大丈夫?』
と涼ちゃんに心配される。
「あぁ、うん。迷惑だなーって、」
『だよねー!』
その後も、涼ちゃんはペラペラ話していたけど、
俺の頭の中には、元貴に埋め尽くされてしまっていた。
なんで、
なんで忘れたいのに出てくるんだよ……