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「スマイリーくん、また飴食べてる」「え?」
口をもごもごさせているスマイリーくんに向かってそう言うと、彼も今気づいたと言わんばかりに驚いた顔をした。
「ほんとだ。いつ食べたんだろう」
「それこっちのセリフ!ていうか食べてる途中で気づかなかったの?」
「いや全然気がつかなかった」
うそぉ、と口から漏れる。
お腹が空いているのだろうか。いや、先ほど昼食を摂ったばかりだし……。体調が悪いのかもしれない。だが、見た感じ全然平気そうだ。
名(迷)探偵なので、原因を僕なりに考えてみるも、どの仮説もすべて違うように思えた。と、そこでふと閃く。そして彼のほうをじぃっと凝視してみた。すると案の定、彼は「?」を浮かべて、首を傾げる。そんな彼に、僕はこう尋ねてみた。
「スマイリーくん、もしかして口寂しい?」
「……くち……さびし……い、えっ!?」
途端に彼の頬が紅潮する。図星だろうか。それに、口寂しいと言っただけで、こんな反応をするということは……ずばり。
「あ、わかった!スマイリーくん、僕とちゅーしたいんでしょ!」
「えぇ!?」
再度彼は驚愕の声を上げると同時に、顔もさらに火照る。どうやら間違いないらしい。
「待って待って!なんでそうな……んん!」
そう抗議の声をあげられるよりも先に、腰をぐいっと引き寄せて、彼の唇を奪う。胸元を軽く押す程度のゆるゆるな抵抗など気にも止めず、僕は彼の口内に舌を無理やり侵入させると、ただひたすらに貪った。
「んう、ぁ……んっ、ん……!」
僕の舌が彼の舌と触れ合う度に、彼の口からは甘い嬌声が漏れる。そして段々と抵抗は弱くなっていき、やがて彼は目を閉じると、諦めてそのまま僕に身を委ねた。可愛いなぁ、と思いながら彼の口内のさらに奥へ舌を伸ばそうとする。しかしその瞬間、こつ、という音と共に、歯に何か硬いものが当たる感覚がした。彼の歯ではない、何か別のもの。僕の頭はすぐに、それが飴であることを理解した。彼が先ほどまで舐めていた飴。僕はその、彼の唾液が絡みついた飴をどうにか奪いたくて、舌をぬろぬろ動かし、逃げ回るそれを必死に追いかけた。途端に彼の身体がびくりと震える。
「んっ……んんん!?んん〜!んんぅ♡!ふっ、ぅ……ん!ん、んん♡!……んっ♡」
どうしよう、えろいのに面白い。
彼があまりにも声にならない声で叫ぶので、思わず鼻から笑いが零れる。それから彼は、再度僕の身体を押し返そうとしてきたが、後頭部をがっと掴んで思いきり引き寄せれば、彼は腰をぴくぴくと震わせつつも、次第に大人しくなっていった。
ふと、彼の口の中で溶け始めた飴が僅かに舌に触れる。僕はそれを彼の舌の上でころころ引き寄せ、自分の口に含むと、ようやく彼を解放した。
「っ……はぁ、ふぅ……、はー……っ♡」
唇が離れた途端、ふらふらしながら、肩で息をする彼。身体はまだ微かにびくびくしていて、今刺激を与えたらすぐにでも腰を抜かしてしまいそうだった。
「……ねえ、スマイリーくん見て」
そんな彼に向かって、僕は舌を、べ、と突きつけたまま、声をかける。「?」を浮かべて首を傾げる彼に、僕は口の中の飴を落とさないようにして見せた。すると、みるみる彼の顔が熱を帯びていく。
「スマイリーくんの飴〜」
「っ〜〜〜!さすがにばかじゃない!?」
恥ずかしさのあまり、顔を両手で覆い隠す彼をよそ目に、僕は口の中の飴をばりぼり噛み砕いて飲み込んだ。
「うん、甘いね!スマイリーくんの唾液」
「……もうこの人いやかも」
後日、口寂しくなったら飴じゃなくて僕とキスするようにと言いつけた。
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