「……おい。お前、仲間裏切って何が楽しいんだよッ!」
葛葉に胸ぐらを掴まれ、思い切り投げられる。周りには明那やもちさん、甲斐田などが居て、他にも騒ぎに呼ばれてやってきた観衆が階段の踊り場に寄ってきている。
「ッッ!だからそれは何かの間違いでっ」
「あぁ、お前は間違えた!だけどなぁ、普通の奴らは間違っても仲間の彼女に手ぇ出したりしねぇんだよっ!!」
さっきからずっと説明しようとしているのだが、全然聞き入れてもらえない。
「俺はそんなことしてないっ!!」
「ハッ、どの口が言うんだよ。しかも状況はほぼレイプだったって言うじゃねぇか。お前、ホント最低だな」
誰も彼もが、俺を軽蔑した目で見てくる。
「違う、違う違う違う違う!!………そうだ、きっとこれは誰かが仕組んだんだ。なぁ、きっとそうだ!こんなデタラメ信じるなんてどうにかしてるって!」
「挙げ句の果てには人のせいか。…失望したよ。じゃあな。もうこれから話すことは無いから」
違う。なんでみんなそんな目で俺を見るんだ。
「お前らは俺のこと信じてくれるよな…?きっと何かの罠なんだ」
縋り付くように言った。
「アニキ… いや、不破さん。俺だって信じたいですよ。けど、これ以上そんなことされたら、本当に嫌いになります。正直に言ってください。そしたら、俺はまだ許せるかもしれない。……お願いします」
甲斐田は苦しそうにしながら、祈るような目でそう言った。
「俺はしてないって言ってんだろっ!!どうして信じてくれないんだよ!」
どうして……、
憐れむような、諦めるような顔をしたあと、甲斐田は俺から目を背けた。
「もちさん、明那さんも、もう行きましょう。これ以上は無理です」
「……不破くん。正直、僕ももう信じられない。ろふまおとか、これまでいっしょに積み上げてきたものってなんだったのかなぁ。円満解散とは程遠いね」
もちさんが、涙をこらえるような顔で言った。
「俺は、もう少しだけ粘らせて」
そう言った明那を残して、2人は去っていった。
「不破っち。こんなくだらないことで、周りとの関係ぶち壊して、本当にそれでいいん?甲斐田も言っていた通り、俺も信じたかった。だけど、もう無理だと思う。
…本当のこと言って。そうしないと、俺、何も信じれなくなりそうで怖い」
俺も、何も信じれなくなりそうだよ。明那。
「俺は本当に何もしてない。明那まで信じてくれないんやな。俺たちってそんな関係だったのか」
「ああ、本当に。……ふわぐさとか、メシャの絆ってなんだったんだろうな」
「なんで俺の言うこと信じてくれないんやろ?」
誰も居ない教室で一人呟く。
「ん? ……あ」
いつのまにか頬に涙が伝っていた。
泣くまいと思っていたのに。悔しさから止めようとするが、そんな抵抗とは裏腹に、涙はポロポロとこぼれ落ちていく。
「不破くん」
不意に聞き覚えのある声がして、後ろを振り向く。
「……かなえ、さん…?」
「うん」
俺が確認するように呟くと、叶さんがニコッと微笑んだ。
「そんなに泣いて、どうしたの? …せっかくきれいな顔なのに」
叶さんが俺を見つめ、少し上目遣いをするようにして言うのを見ると、なぜだかもっと涙が溢れてきた。
「俺、あんなことしてないのに」
俺はしゃくりあげながら事情を説明した。途中、何度も止まってしまったが、叶さんはずっと優しく頷いてくれた。
「うん、大丈夫。僕は、信じてるよ」
「っでも、叶さん生徒会長やろ?俺なんかのことかばったら」
「僕のことは気にしなくていいから」
俺は俯いた。そんなことを言われても、やはり心配だ。
「心配は無用。不破くんは黙って僕に守られてて!」
おどけた様子に少し笑ってしまった。そしてふと、涙が止まっていることに気が付いた。
『叶さんだけは、俺のことを信じてくれる』
コメント
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明日テストなのに読んでしまった...!めちゃ好きやー!!