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◇◇◇◇◇
第0章 人生リスタート
◇◇◇◇◇
〜ドルアド帝国・エドワーズ辺境伯領〜
僕はリオ・エドワーズ。
この辺境伯家の三男坊。
兄弟の中で僕だけが腹違いの平民の妾の子なので、いつも家族中からいじめられている。
今日は僕の13歳の誕生日。
辺境伯領都の聖ナスヴィー教会で僕の成人の儀が行われる。
セガール:「リオ!早くしろ!
いつもノロノロしおってからに!
早く降りんか!」
トーマス:「何が出るのか、楽しみだなぁ!
引きこもりとかじゃねえか?」
フランク:「おいおい、せめて恥ずかしくないスキルにしてくれよな!」
ミスティ:「これ!スキルを見てからにしなさい。」
リオたちは家族で辺境伯家の屋敷から馬車で聖ナスヴィー教会まで来ていた。
父親のセガール・エドワーズ辺境伯
母親のミスティ・エドワーズ
長男のトーマス・エドワーズ
次男のフランク・エドワーズ
今の家族には、僕の味方は一人もいない。
むしろ、僕はみんなのいじめの対象だ。
本当の母親はすでに他界して、もういない。
その教会には、今日は領主様のご子息の成人の儀とあって、その他大勢の外野の人たちもその様子を興味本位で見に来ている。
リオの住むこの世界では、13歳になると誰もが1人1個の固有スキルを女神より授かるのである。
そこそこでいいから、良い固有スキルが来て欲しい!と願うリオ。
ただし、これは完全に運任せのいわゆるガチャのようなもので、地位、特徴、性別、嗜好などは一切関係のないものが授けられる。
祭壇の中央に大きな水晶玉が置かれていて、その横に教会の司祭が立っている。
司祭:「リオ様。本日は成人の儀おめでとうございます。
では、その水晶玉に手を置いてくだされ。
女神様より授かりし固有スキルが映し出されます。」
リオが大きな水晶玉に手を置くと、その水晶玉から凄まじい光が発生し、周りの者が手で目を覆ってしまうほど眩しく輝いていた。
司祭:「うおー!この光の量は!?」
司祭の経験上、ここまで大きく光ったのは初めてであったため、思わず声を上げてしまう。
そして、その場にいた者たちの期待と共にリオの固有スキルが水晶玉に映し出された!
【$%・#&@】
「「「「「「「……はぁ!?」」」」」」」
その場で見ていた一同が一斉に大合唱!
僕が一番、はぁ!?なんですけど……。
セガール:「リオー!おい!お前ー!
もう一度、ステータスボードで固有スキルを確認しろ!」
リオ:「はい……。」
ステータスオープン!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
リオ・エドワーズ 13歳
レ ベ ル:1
最大生命力:12
最大魔法力:18
戦 闘 力:4
防 御 力:9
瞬 発 力:3
〈スキル〉
・耐性系統
物理耐性LV3
魔法耐性LV1
精神耐性LV4
毒物耐性LV1
〈固有スキル〉
$%・#&@
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
セガール:「で、どうなんだ!?」
リオ:「はい……。同じです。読めません。」
セガール:「うぐぐ!この出来ぞこないがぁ!
もう帰るぞ!」
父親のセガールは、顔を真っ赤にして怒りを抑えている。
その辺のものを手当たり次第、蹴り倒しながらではあるが……。
他の家族のみんなも変なスキルだったら笑ってやろうと思っていたのだが、あまりにも意外な結果と父親の怒りに誰もが口をつぐんだ。
周りのその他大勢の人たちも、領主のとばっちりを受けないように逃げるように一目散に去っていった。
司祭も黙ったまま、目を逸らしていた……。
◇◇◇◇◇
成人の儀式が終わり、屋敷に帰るとリオは早速、父親の部屋に呼ばれた。
そして、その場でいきなり、父親の知り合いの人に養子として預けると告げられて、そこで暮らすようにと言われた。
さらに養子に出された後は、エドワーズ姓を名乗ることを禁じるとのことだった。
要するに、これは平民になるということだ。
こうなることは、薄々分かっていた。
以前から変なスキルだったら追い出すとは言われていたが、まさかの文字化けスキル。
教会での父親の怒りで、それは確定した。
正直言うと、この屋敷を出ていくのは全くと言っていいほどショックではなかった。
日ごろから虐められていたので、むしろそれはありがたいくらいだった。
僕も今日から成人になったのだから、何処か知らない土地で働きながら生きていけばいいと思った。
今までずっと、兄弟の小間使いのような生活だったので、働くのは苦じゃない。
職さえ選ばなければ、何かしらの職にはつけるだろうと、この時はそう思っていた。
◇◇◇◇◇
養子の話は、少し先のことかと思っていたのだが、すでにその日のうちに、僕は知り合いに預けられるために馬車に乗って隣街に向かっていた。
ただ、この辺境伯領地には魔物の住む森が至るところにあるせいか、必ず護衛がつくはずなんだけど、馭者のマルクスさんと僕の2人だけが馬車に乗って進んでいる。
リオ:「マルクスさん。この辺りは危険だと思うんですけど、護衛はいなくても大丈夫なんですか?」
マルクス:「……。」
マルクスさんは何も喋らない。
元々、無口な人だが、話したことには答えてくれてたはずなんだけど……。
それから少しすると森の中に入っていった。
この辺りにはあまり来たことがないのでよくわからないが、明らかに危険じゃないかと思う雰囲気が広がっていた。
そして、初めてマルクスさんが口を開いた。
マルクス:「坊ちゃん。辺境伯様からは、もっと奥に行くように言われてるんですけどね。
もうこれ以上行くのは無理です……。
ここからは、坊ちゃん1人で行ってください。」
マルクスさんは、そう言うと僕を馬車から物を捨てる様に地面に放り投げた。
リオ:「え!?どういうことですか!?」
マルクス:「坊ちゃん。ここから引き返さないでくださいよ。
坊ちゃんが帰って来たりしたら、私がクビになってしまいますから。」
マルクスは冷たくそう言うと、馬車を猛スピードで走らせて引き返して行った。
僕はそれを無言で見ていた……。
◇◇◇◇◇
なるほど、そういうことか……。
リオは完全に理解した。
僕に死んで欲しいんだ……。
僕に消えて欲しいんだ……。
僕という存在を……。
今のリオは、武器も持っていないし、防具もつけていない。完全に無防備な状態だ。
元から僕はレベル1で戦闘の経験もない。
おまけに荷物も持っていないので、運良く魔物に会わなくても食べるものもない。
そっかぁ。そういうことかぁ。
ああ、最悪な家族だったな……。
家族だけじゃない。みんな最悪だ……。
こんなことになるなら、自分から出ていけば良かったなぁ……。
リオは、止まらない涙を止めようともせず、その場で仰向けに寝転んで空を眺めていた。
◇◇◇◇◇
リオは、その場で仰向けのまま、まったく動く気も失せて時間だけが過ぎていったのだが、辺りが薄暗くなって来ると急に怖くなってきて木の影に隠れていた。
そして、2匹のゴブリンズがリオのいる辺りに近づいて来たのだった。
ゴブリンA:「ウギャー。」
ゴブリンB:「ウギャギ。」
何やら、ゴブリンズ同士で会話をしている。
やっぱり、死ぬのが怖くなったリオは、木の影でゴブリンズが何処かに行ってくれるのを必死に祈っていた。
お願い!どこかに行って!
すると祈りも虚しく、突然にリオの背中を鈍器のようなもので殴られた痛みが走った。
リオ:「あ゛!い゛ーーー」
見えていた2匹のゴブリンズとは別のもう1匹のゴブリンが、リオの背後から近づいて背中を殴ったのだった。
2匹のゴブリンズもリオに近づいて来て、3匹で寄ってたかって、リオの手足を鈍器で殴って殴って、完全に動けなくなった状態のリオの周りをくるくると踊っている。
ゴブリンA:「ウギャギャ!」
ゴブリンB:「ウッギャー!」
ゴブリンC:「ウギャー!」
リオ:「あ゛ーーー!やへ゛て゛ーー!」
意識はハッキリしているが、両手足を鈍器で殴られて全く動けない最悪の事態に、心は恐怖に侵されていく。
そうして、動けないリオの周りを踊る3匹のゴブリンズに囲まれたまま、リオは大量の出血によって徐々に意識を失っていった。
こんな終わり方って……。
僕の人生、何もいいことがなかったな……。
◇◇◇◇◇