テラーノベル
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短編です!
※心中ネタ 重いです。❤️💙
大丈夫な方はどうぞ!
第一発見者は僕だった。
「…どうしても若井が苦しいなら、一緒にどこまでもいくよ。」
「…え?」
その言葉が、意味が、すぐにわかった。
元貴は互いの額を合わせながら言った。
「一生、離れないでよね。」
その言葉を聞いた瞬間今まで出なくなっていた涙が留めなく溢れてきた。
「うん、うん…ッ」
泣きじゃくる俺を元貴は優しく抱きしめ、背中をさすっていてくれた。
時には鼻を啜る音や抱きしめてくれた肩に温かい水が落ちてきた。
体を寄せ合いながら2人だけが起きているかのような静かで暖かい夜を過ごした。
久しぶりに気分よく朝を迎えられたと思う。
「もとき、おはよう。今日はずっと一緒だよね…?」
そう聞くと元貴はとても愛しいものを見る優しい笑顔で
「うん、そうだよ」
と言ってくれた。
「うん、そうだよね、今日も、これからも、ずっとずっと一緒だよね」
昨日のことは嘘じゃないんだ。それだけでもいつもより心がずっと軽かった。
「…若井」
元貴はふわっと俺を包み込む。
「もとき…?」
「愛してるよ、本当にありがとう。」
「…!」
「えへへ、俺もだよ大好き、愛してる」
「…だから、大丈夫だよ若井。安心してね。」
そう言って元貴は口に甘いキスを落としてくれた。
幸せだから不安になる。
いつかなくなったらどうしようって元貴がいなくなったらどうしようって。
そんなことはないってわかってるし元貴だって言ってくれる。
だから信じないといけないっていうプレッシャーと、それに裏があるかもしれないという元貴を信じられない自分の最低さに心を蝕まれていった。
そんなことの繰り返しだった。
でもそれももう終わりなんだ。
2人で朝を過ごしたあとは2人で買い物に行って、元貴が作ってくれたご飯を食べて、思い出話をして、2人でお風呂に入って、布団に入った。
「若井、大丈夫?」
「うん、…あったかいなぁ、」
「そうだね、」
「もとき、俺本当に幸せだったんだよ。嘘なんかじゃないよ。俺のせいで、ごめんね…」
ずっと思っていたことを口にすると元貴は今までにないくらい強くぎゅっと抱きしめてきた。
「…ッ、俺も幸せだったよ。若井のせいなんかじゃない俺たちが決めた未来なんだよ。だから…だから最期くらい、ありがとうにしよう」
「…うんっ、そうだねッ、本当に、本当にありがとうね元貴。愛してるよ、これからもずっと…」
「愛してる…ありがとう、」
暖かい言葉が降り注ぐ。
最期はちゃんと、心の底から幸せだって感じられたよ。
ありがとう、元貴。
ある日元貴が言った
「俺、若井と心中しようと思う。」
「え…?」
「そん、なっ
まってよ!それじゃ僕も…!」
「ダメ。」
「…ッ!」
「涼ちゃんは、生きてよ。」
どうして、そんな顔するの…?
元貴の顔は笑顔ではあったものの、寂しくて不安に揺れていた。
「…心中する、理由は…?」
「若井が、苦しそうだから。」
「毎日、毎日、消えたいって、どうしたらいいかわからないって、、」
「もう、涙も出ないって…」
「…ッ、」
「俺にはもう、一緒にいってあげることしかできない。若井には俺が必要だし、俺も若井が必要だから。」
「…そっか。」
納得したのに、したいのに、引き止めたい自分がいて涙が溢れてくる。
「若井のことは俺に任せてよっ!」
「ずっと見守っててあげるから」
「若井のことも、涼ちゃんのことも。」
「だからさ俺たちの分まで、 涼ちゃんは生きて。」
数日前、元貴に言われていたことを思い出しながら約束の時間に家へ向かった。
胸の中がぐるぐるして、気持ち悪い。
足は鉛のように重く、呼吸もうまくできなかった。
深呼吸をしてドアノブに手をかける。
鍵は開いていた。きっと、元貴が開けておいてくれたのだろう。
「…お邪魔します。」
返事は返ってこない。
玄関には2人の靴が綺麗に並べられていた。
玄関だけじゃない。家全体が綺麗に整えられていて静かで冷たかった。
僕は家を見て回った後寝室へ向かった。
きっとここに2人がいるだろう。
ゆっくりとドアを開ける。 ずっと震えてしまう。
まだ2人は大丈夫なんじゃないかと、どこかで期待してしまう。
「ぁ……っ」
2人はお互いを抱きしめていた。
元貴が若井を包み込むように。
ふらふらとした足取りでベッドの方へ行く。
視界がどんどんとぼやけてゆく。
僕はそっと冷たくなった2人を抱きしめた。
冷たいはずなのに、まだ2人の温もりがあるようで、涙が溢れて止まらなかった。
まだ生きていてほしかった。
涼ちゃんって、また呼んでほしかった。
そんな想いと共に涙が頬を伝ってゆく。
ふと若井の顔が目に入った。
「…っ、若井って幸せそうに笑うよね…っ」
いつしか見ることができなくなってしまった若井の笑顔がそこにあった。
…本当は止めたかった。
1人にして欲しくなった。
これが本当に若井にとって救いなのかわからなかった。
でも僕も若井が苦しいのは知っていたから。
止められなかった。
「…元貴と一緒ならもう大丈夫だね、」
2人の幸せそうな顔を見てようやくわかったような気がした。
僕だけではできなかったこの笑顔を元貴はさせてあげられるんだ。
元貴とならどこまでも大丈夫なんだ。
「若井をよろしくね。元貴……」
ねぇ、2人は今幸せですか?
2人で選んだ未来は愛おしいものですか?
苦しさからは解放されましたか?
2人が幸せなら僕も幸せだよ。
でも、
「でも、寂しいよ……」
コメント
1件
え?無理しんどいんですけど?(泣)