続きです
今夜も長い長い夜が始まる。
「んっ♡…そう、もっと喉使って…、」
「は、ぁ♡♡♡気持ちいよ、じょーずじょーず、んっはぁ…っ♡♡♡♡」
太宰に云われるが儘、俺は必死に太宰のものを咥えている。
この前も思ったが、やっぱりでかい。
これが自分の中に入っていたのが信じられないくらいだ。
「ほら、休めないで、っ♡♡♡うぁ…っ♡♡」
「あっ…♡♡も、出る…中也っ……、♡♡♡」
太宰の身体がビクッと震える。
口にドロっとした生暖かい液体が流れてくる。
『(う゛え゛え゛、まっず…、)』
咥えていたのを離して、太宰の顔を見上げてみる。
「はぁ…っ、はぁ…っ、//」
頬が紅潮し、静かに息を整えている。
余裕のない、見た事のない表情だった。
『(此奴もこんな顔すンだな…)』
こんな一面が見れて一寸嬉しいと感じてしまった。
その表情の儘、太宰は手を差し出して云った。
「ごめん…、出して。此処に」
「飲んだら不味いでしょ」
もう既に不味い…、と思ってしまったが、それ以上に驚きが大きかった。
何か…変に優しくねぇか…?
疑問を抱きつつ、素直に太宰の手に吐き出した。
『うぇ…、 』
自分の舌に液体が伝っているのが分かる。
やっぱり不味い。
「口、ゆすいできなよ」
『お…おう、』
よく分からない違和感を感じつつも、寝室から出て洗面所に向かった。
「はあぁぁぁぁぁ、」
深いため息。
「好きだなぁ…、」
『…は……?』
俺は洗面所に向かう途中、タオルを忘れた事に気付き、部屋に戻った。
そして、聞こえた。
思わず部屋の扉を開けてしまった。
『おい太宰…、それ、どういう事だよ…』
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自覚した日。
何で私があの時君を庇ったか、分かるかい?
実は、私はその時は何も考えていなかった。
気付いたら、身体が動いていた。
腹部が酷く痛んだ。
血が流れた。
ぼやける視界に君が映った。
必死に私の名前を叫ぶ君だった。
助かった君を見て、私は何故だか心底安心した。
大嫌いな筈なのに。
自分を心配してくれる君がいて、嬉しいと思った。
死にたい私が、もう少し生きてみたいと感じた。
その死の淵で、私は自覚した。
この気持ちを、
これは…恋だ。
何時からだろう、思い出そうと試みたが混濁した意識の中ではまるで分からない。
唯ひとつだけ分かるのはこの気持ちは最近のものではない、ずっと前からのものだと云う事。
薄れゆく意識の中でそれを理解した。
やっぱり神は何時もの様に私を死なせない。
でも、今回ばかりは安堵した。
君がお見舞いに来てくれた。
すっごく、嬉しかった。
花も、君は特に深い意味を持っていた訳ではないのは分かっていた。
それでも、君が選んでくれたと思うと心が高鳴った。
愛おしい。
君が、どうしようもないくらいに愛おしい。
一度気持ちに気付いてしまうと、感情が抑えられなかった。
私のものになって欲しい。
たとえ、一方的でも。
今になって思う。
私は最低だ。
どうしても私のものになって欲しかった。
歪でも、正しさを捨てても、過ちを犯しても、
私のものにしたい。
それだけを考えた。
君の気持ちすらも考えずに。
だから私はあの時話を持ちかけた。
君に契約を結ばせた。
君の、私への罪悪感を利用して。
一方的でも良かった筈だ。
どんな形であれ、君が私のものになれば充分な筈だった。
それなのに、
今更、ちゃんと愛し合いたいだなんて。
あんな事をしておいて、君に申し訳ないだなんて。
その気持ちを埋めるように私は嘘をついた。
更なる過ちで、後悔を埋めた。
過ちを、もっと。
明るく、面白おかしく振る舞えば、君への申し訳なさが薄れると思った。
でも、やっぱり厳しいや。
一人になるとどうしても罪悪感が湧き出てくる、一方通行が虚しくなる。
我慢している感情が溢れ出る。
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「好きだなぁ…、」
『おい太宰…、それ、どういう事だよ…』
思わず声をかけてしまった。
太宰は此方を向くと云った。
何時も通りに、何も無かった様に。
「別に何も」
「それよりもうゆすいできたの?」
『いや…タオルを忘れて…、』
「何だ、おっちょこちょいなんだから。」
『うっせ、』
タオルを受け取ると、再び洗面所に向かった。
俺は見逃さなかった。
振り向いた太宰が一瞬、焦った顔をした事を。
〝好き〟って何だよ…。
あんな顔して、誤魔化して、そういう事なのか…?
否、だって、あれだぞ?
人を玩具みたいに遊んでる奴だぞ…?
考えが纏まらないので、とりあえず口をゆすいだ。
洗面台の鏡に映った自分の顔に期待という文字が浮かんでいる様に見えて、目を疑った。
俺は何を期待しているんだ。
それに気付きたくなくて、知らないふりをした。
部屋に戻ると、太宰は何時も通りだった。
「今日はもう寝ようか」
「君は疲れているだろうし」
「私も気持ちよくしてもらったしねぇ」
何時もの厭な笑みだ。
『あ、…おう』
「…、おやすみ」
何時も通り、でも、何処かぎこちない。
今夜は短い夜だった。
太宰に感じたあの違和感は、俺には遠慮に見えた。
今更…?
やっぱり此奴はよく分からない。
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朝。
目を覚ますと、目の前には太宰の顔。
何度見てもやっぱり綺麗で見惚れてしまう。
また、暫く見つめていた。
今日は中々起きない。
自分でも有り得ないと思ったが、触れてみたいと思ってしまった。
太宰の顔に手を伸ばした。
優しく、頬を撫でる。
透き通る様な白い肌がさらさらとしていた。
今度は唇に触れてみる。
薄めで、ほんのりとした赤色。
そして、柔らかい感触。
無意識に、自分の唇を意識してしまう。
触れるのを止めて、再び見つめる。
静かに独り言を云う。
意識のない太宰に問いかける様に。
『なァ、手前は今何を考えてる』
『何を隠してる』
『それと…、あの言葉は何だったんだよ』
太宰は起きなかった。
俺は考えるのを止めた。
何も考えたくなかった。
俺も太宰も昨日の事について話す事はなかった。
兎に角、このよく分からない気持ちと関係から目を背けたかった。
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『はっ、う゛あ゛っ…♡♡♡むりっ♡♡』
「まだまだへばんないでよっ、…♡」
『あ゛あ゛っ、…っんぐぅっ……♡♡♡♡♡う゛あ゛!?♡♡♡♡♡むりぃっ…♡♡♡』
今夜も
「ほら、ちゃんと握って、動かしてっ…♡♡」
「うっ♡♡♡ん……っ♡♡♡♡そうそうっ…♡」
『はぁっ、♡♡♡はあ…っ、♡♡あ…っ♡♡』
次の夜も
「腰、下ろして。」
『ん…っ♡♡は、あぁっ♡♡♡あ゛っ♡♡♡♡だめっ…、っあ゛!?♡♡♡♡』
「何時もここ迄入ってるんだから、怖がらないで。」
『くっは…あ、っ♡♡♡やめっ♡♡♡♡』
次の夜も
次も次も、毎晩身体を重ねた。
そうするのが当たり前の様に。
何かもう、慣れた。
一、二日目の様な初めてのドキドキ感はとうに薄れていた。
太宰の方も、日に日にテンションが落ちている気がする。
昨日なんて、殆ど無言で腰を動かしているだけだった。
こうなると、もはやセフレの様だ。
別に、愛を求めて始めた性交じゃない。
それは分かってる。
でも、
それが寂しくて、居た堪れない自分が居る。
そんな自分に嫌気がさす。
認めたくない感情が湧き上がってくる。
厭でも自覚してしまう。
好きだという事を。
それもあの日以前、ずっと前から。
無意識に目で追って、見惚れてしまう程に。
無理矢理のキスが心地よく感じてしまう程に。
些細な事に嬉しさを感じてしまう程に。
もう、知らないふりなんてできない。
歪は厭だ。
ちゃんとした恋愛をしたい。
でも、たとえ両思いだったとして、
こんな間違いと過ちだらけの関係から、純粋に愛し合えるのだろうか。
幸せがあるのだろうか。
そして、彼奴は何を隠しているのか。
どんな気持ちを抱いているのか。
唯一の心当たりは、あの日感じた違和感…、遠慮だった。
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話がずれてるかも…、そこはすみません。
前回の皆様のお言葉でモチベが回復いたしましたので感謝しかございません。
本当にありがとうございます!
多分次回かその次あたりで完結だと思うので、良かったら最後までよろしくお願い致します。
コメント
11件
もう本当に好きすぎる、何この純愛、大好きすぎる、すれ違い本当に大好き過ぎます!!すれ違いに関してはどっちも不器用だし、こういう時に限って有能な太宰さんの頭脳働かないんだよなぁ、まぁそういうとこも好きだけど...!!
確定演出キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 自覚したぞ!!自覚したぞ!!!!うおおおおおおおおおお!!!!!!だざむは罪な男すぎるし、ちゅやは不器用だし、もう最高や…😇
もう叫ぶ通り越して歌った(?) うおおおおおお両片思い来たぁぁぁぁぁぁッッッッ⤴⤴自覚してるじゃないかぁぁッッ!もう太宰さんどこまで罪な人なの貴方は…ッッ!そしてちゅぅぅぅぅやッ君ッッちょッッッ反則ッッッッ(( 大丈夫だよ中也、過ちはあればあるほど良いんだから。((( 不純愛だとしても太宰さんは中也一筋だからッッッ!!だから早く結婚しやがれくださいッッッッ!!((