🍆said
「おんりーチャン、あれ、ちゃんと持った?」
「はい、ちゃんとトランクに積みましたよ。」
「じゃあそろそろ出発しようか。」
「そうですね。」
バタン、と車のドアを閉める。助手席におんりーチャンが座る。
「……おんりーチャン、そんな薄着で大丈夫?冬だしここよりもっと寒いと思うよ?」
「大丈夫ですよ、どうせあんま車から出ないでしょ?」
「まぁそれはそうだけど…」
「大丈夫ですって。それよりずっとここに居たくないんで早く出発しちゃいましょ。」
「そうだね、いこうか。」
鍵を差し込み、エンジンをかける。
「なんか聴きたい曲ある?」
「あ、じゃあこれかけちゃいますね。」
そう言っておんりーチャンが流したのは、ドズル社みんなでの歌ってみただった。
「えっ、ちょっとまって、なんでその曲なの!?」
「この曲しか持ってないんですよ、悪いですか?」
「悪くはないけどさぁ……もうちょっと他のやつなかったわけぇ……?」
「だってしょうがないじゃないですか、これしかないんですもん。それに、」
「最後の曲、これがいいんですよね。思い出の曲だし。」
「ええ……こんなんでいいの……?」
「いいんですよ。ほら、前見て運転して下さい。ここで事故ってぼんさんだけ死なれても困りますから。」
「あっごめん。てかおんりーチャン死なない前提なんだねw」
「最強なので。」
「そっかw」
「……」
「……」
「ねぇおんりーチャン、」
「はい、なんでしょう。」
「手繋いでもいいかな。」
「駄目です。」
「即答!?」
「冗談ですよ、繋ぎましょうか。」
「うん、ありがとう。」
そう言ってハンドルを握っていた左手をおんりーチャンの手に重ねる。
「おんりーチャン手冷たいねぇ。」
「冷え性なんですよね…」
「じゃああっためてあげよう!」
そう言ってぎゅっと握った手を自分のポケットに入れる。
「ちょ、何するんですか!運転中に危ないですよ!」
「だいじょぶだよ、ちゃんと安全確認してるから。」
「そういう問題じゃないですってば!」
「ふふっ、顔赤いよ?」
「うるさいです黙ってて下さい!!」
「照れなくてもいいじゃん。」
「照れてません!!!」
「はいはいわかったから落ち着いて。」
「わかってないじゃないですか!!もぅ……」
「えへへ〜、可愛いねぇ〜」
「ほんとやめてください……」
そんな会話をしながら車は進んでいく。
「周り、何も無くなってきましたね。」
おんりーチャンが窓を開け、暗くなった外を眺める。
「そうだねえ。最初はビルばっかだったのにねぇ。」
「………空気澄んでますね。」
「そりゃあんな汚ったない空気が蔓延してるとこから出たからね。」
「それもそうですね。あー、あんなとこから出れてよかった。」
「そうだね。」
2人を乗せた車は走り続ける。
数十分後、目的地に着いた。
「着いたよーーーー。」
「………暗。」
「山だもんねぇ、外出てみよっか。」
「はい。」
そう言って、外に出る。
「スマホスマホ……あった。」
スマホのライトをつける。
空を見上げると、そこには満天の星空があった。
「おんりーチャン見て!星!」
「あ………ほんとだ……久しぶりに見ました…」
「ずっと都会に居たもんね。」
「綺麗…………」
「ね、綺麗。」
少しの間、2人で空を見上げる。
「ていうか寒っっっっ…………もっと厚着してくればよかった…」
「だから言ったじゃん。ほら、俺の上着着てて。」
「え、いいんですか?」
「大丈夫。結構着込んでるから。」
ほら、そう言って服を引っ張って見せる。
「確かに。ならお言葉に甘えて借りちゃいますね。ありがとうございます。」
「いえいえ〜」
「でも結構着込んでますね。絶対暑くなりますよ。」
「大丈夫。慣れてるから。」
「そうですか……?」
「うん。」
2人で空を見上げる。
「そろそろ準備しちゃうね。」
「あ、僕も手伝いますよ。」
「いーよいーよ。大丈夫。」
「そう、ですか?」
「うん。」
そう言ってトランクに向かう。
「えーっと、確かこの辺に……あ、あったあった。」
そう言って、おんりーチャンが積んでくれた道具を取り出す。
「えーっと………?これを………?こーして……?あれ、どこに火つけるんだ?」
「………よしできた。これをもう一個か。」
そう言ってもう一つ取り出し、さっきと同じことをする。
「よし。これでちょっと放置しとくか。」
おんりーチャンのところへ戻る。
「おんりーチャーン」
「はーい?」
「準備終わったよー。でもあったまるまでちょっとかかるー。」
「じゃあもう飲んどきましょうか。」
「そうだね。あ、水持ってる?車内かな…」
「持って降りてきたんでありますよ。」
「さっすが!!!!」
おんりーチャンはペットボトルの水を取り出し、蓋を開ける。
「はいどうぞ。」
「ありがと〜。あ、薬は左ポケットに入ってるよ。」
「はーい。」
おんりーチャンがポケットに手を突っ込んで薬を出す。
「はい、ぼんさんの分です。」
「ありがと〜う」
ペットボトルの蓋を開ける。
薬を幾つかプチっとして口に放り込む。
「………っはぁ、飲み込めたぁ……」
「結構数飲まないと不安ですもんね」
「そうなんだよね…おんりーチャン飲んだ?」
「はい。飲みました。」
「じゃあそろそろ車内戻ろっか。」
「はい。」
そう言って2人で車内に戻る。
「あ、結構あったまってる。」
「ほんとですね。あったかい…」
「ブランケットいる?」
「欲しいです……」
「ん。」
おんりーチャンに渡す。
「わ、暖かい……」
そう言っておんりーチャンがくるまる。
「でしょ。」
「はい。」
「眠くなってきた……」
「僕も……寝ましょっか。」
「そうだね。」
2人でブランケットに包まりながら目を瞑る。
「…………僕、ぼんさんに出会えてよかったです。ぼんさんと一緒に入れて嬉しかったです。」
「……俺も、おんりーチャンといれてよかったよ。楽しかったし、何より、おんりーチャンのおかげでこんな素敵な景色見れたから。」
「……ありがとうございます。」
「こちらこそ。」
「……そろそろ、時間ですね。」
瞼が重くなってくる。
「ぼんさん……最期に我儘聞いてくれますか?」
「全然いいよ。」
「じゃあお言葉に甘えて。」
「ぼんさん、来世でも絶対会いましょうね。」
おんりーチャンが抱きしめてくる。
それに答えるように、強く抱き返す。
「もちろんだよ。絶対にまた会う。約束する。」
「ふふ、嬉しい……」
「おんりーチャン、愛してる。」
「僕も、ですよ。」
2人で目を閉じる。
来世に、期待して。
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『____本日未明、〇〇山の山奥で男性のものと思われる2人の遺体が発見されました。警察によりますと、どちらの遺体に目立った外傷はなく、一酸化炭素中毒による死亡だと思われます。後部座席からは燃えた形跡のある練炭が2つ見つかっており、2人は練炭自殺を図ったと見ています。警察は2人の死亡に至る経緯を調べるとともに、』
『身元の特定を、急いでいます。』
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この終わりかた…泣けるぜぇッッ(T^T)