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「ついでみたいに言うな」
急に頭の上が軽くなったかと思うと、桶川さんがぷいっとそっぽを向いてしまう。
なんだぁ? 急に。
あれ、もしかして社長と比べられて嫌だったとか?
「……拗ねてます?」
脇から覗き込むと、桶川さんはさらに顔をそらす。
「うるせぇ。豆狸」
「いや、桶川さんもホント格好いいですよ。イケメン、イケメン」
「軽く扱うな!」
「桶川さんの顔が毎日拝めるなんて嬉しいなぁ」
あんまり拗ねられてるのも面倒くさいので適当に褒めていたら、急に桶川さんが振り向いて、私を押した。
と、座っているコロ付きの椅子が後ろに下がって、受付デスクにぶつかって止まる。
彼はその机に手をつき、まるで私に覆いかぶさるような姿勢になった。
「言ったな」
「え? ……なんか、怒っています?」
「毎日拝めて嬉しいんだろ? 俺の顔。ほら、存分に見ろよ」
「いや、その。イケメンはまぶしいので隠れてみるのがいいんですよう」
やばい、怒ってる。
なんで。今までの会話に怒らせる要素なんてあった?
いや、無いとは言わないけど、本気で怒るなんて大人げないよ、桶川さん。
「ふん。決めた。高井戸、お前俺と付き合え」
「え? どこにですか?」
「違う、そういう意味じゃない」
「ぶっ」
フロアの奥のほうから、噴き出すような声が聞こえた。
当然だけど、社内には他の社員もいるのだ。ちらりとデスクスペースのほうを見ると、みんな肩をゆすりながら笑っていた。でも、桶川さんがひと睨みしたらすぐ俯いてしまったけど。
「だーかーらー」
桶川さんは上を向いてため息を吐き出す。
普通、ため息って下向いてするイメージだけどな。この人、いつも人と違う斜め上の動きをしておもしろい。
「あー。とにかく、お前今日の夜空けとけ」
「えっ、残業ですか」
「ぶははは」
不満をあらわにしてみたら、再び奥のほうから噴き出す声が聞こえた。
桶川さんは血管を浮き上がらせながら「亀田~」と肩を怒らせて行ってしまう。私との話は途中だと思ったんだけど、置いていかれてしまったな。
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鷹槻れん

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坂野真夢
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コメント
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第10話、読みました!桶川さんの「拗ねる」→「押す」→「覆いかぶさる」の流れ、表情が目に浮かぶようで思わず笑ってしまいました。しかも「付き合え」からの「今日空けとけ」のオチがまた絶妙で、途中で社内の笑い声が入ることで桶川さんの慌て具合がより生きてますね。この不器用な距離感、次どう転ぶのか気になります。続きも楽しみにしてます!