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第1話:“”令和最悪のスタジオ立てこもり事件“”
Ryok視点
『ミセスを襲った、令和最悪のスタジオ立てこもり事件から今日で1年』
大々的にそう書かれたウェブニュースをぼーっと眺める。
そうか、あの日からもう一年か。
テレビからも、「令和最悪のスタジオ立てこもり事件を再現VTRと共に解説!」という声が聞こえてくる。
令和8年11月1日。
ミセスがレコーディング中のスタジオを1人の男が襲撃した、立てこもり事件。
死者13人、負傷者3人。
犯人に死刑判決が言い渡され、『令和最悪のスタジオ立てこもり事件』と名付けられた。
思い出したくもない。あの地獄の日は。
血まみれの人が何人も倒れている廊下を、元貴に抱えられながら通り抜けたあの日。
最愛の人の名を、声が枯れるまで何度も何度も叫んだ日。
Mtk「ふぃー。おつかれー。」
Ryok「おつかれぇ…疲れたね、」
長かった新曲のレコーディングもやっと終盤。
僕と若井はレコーディングが終わって、あとは元貴のボーカルのレコーディングの残りだけ。
Hrt「涼ちゃん!これめっちゃ美味い!食べてみて!!」
Ryok「若井は元気だね、」
Mtk「何?涼ちゃん歳?笑」
Ryok「うるさいな。言うて3歳差でしょ…」
目をキラキラと輝かせ、僕の名を呼ぶ最愛の人、若井滉斗。少年みたいな眩しい笑顔はレコーディングの疲れさえも吹っ飛ばしてしまいそうだ。“”太陽くん“”と呼ばれていただけはある。
若井の口周りに付いたお菓子の欠片を取りながら、3人で他愛のない話をする。
いつも通り、忙しいけれど、楽しくて楽しくてたまらない幸せな日々を送っていたはずだったのに。
バンッッバンバンッ
大きな破裂音に、3人とも体をすくめる。その直後、女性スタッフの叫び声と、バタバタと廊下を走る音が聞こえてきた。
Mtk「な、何?なんの騒ぎ、?」
Hrt「今の音って、銃…声、?」
Ryok「そ、そんなわけないでしょ、!ドッキリだって、!」
扉の向こう側から、人の叫び声と、ドタバタと廊下を走る音が止まない。
3人とも、ドッキリだと思っていた。
“”思っていた“”と言うよりも“”願っていた“”の方が正しいだろうか。
若井は僕の傍から離れず、ずっと僕の方を握っている。
元貴も、僕の傍を離れない。
2人とも「ドッキリだろう。」と言いたげな冷静な顔をしているけれど、顔から冷や汗が止まっていない。
若井の手も微かに震えている。
その時だった。
廊下から、「銃を持った男がいる!!早く逃げろ!!!」という叫び声が聞こえてきた。
その声を最後に、人が走る音がピタリと止む。
真っ先に反応したのは若井だった。
扉に向かって走り出し、鍵を閉めようとドアノブに手をかけようとする。
……が、間に合わなかった。
バンッ!という大きな音ともに、扉がこじ開けられ、若井が飛ばされる。
「大人しくしろ!!騒いだら打つぞ!!」
全身黒い服で、マスクをつけ顔を隠した男が右手に銃を持ちレコーディング室に入り込む。
Mtk「だ、誰だお前!!」
バンッバンッ
「黙れ!!!騒ぐなって言っただろうが!」
男が2発、天井に向かって弾を打ち込む。
「俺は本気だぞ!!!死んでもいいのかてめぇら!!!!」
勢いよく吹き飛ばされ床に転がる若井がよろよろと起き上がる。
机の角にでもぶつけたのだろうか。綺麗で僕の大好きな顔には切り傷が付き、血が流れていた。
思わず声をあげそうになるのを、元貴が口を塞ぎ静止する。
Mtk「涼ちゃん、こいつは本気だよ。今大きな声を出したら僕らは皆殺しにされる。」
男が扉の鍵を閉め、ソファーや机で扉を動かせないようにする。
まさか、立てこもるつもりか。
若井が隙を見計らい僕たちの方に近寄ってくる。
2人が僕を守るような形で両隣にピタリとくっついた。
「……はっ笑あの天下のミセス様が、滑稽だな。笑」
「いい気味だ。」
Mtk「……ッ何、?何が目的?」
「あ?」
Mtk「金か?金ならいくらでもある。1億だろうが、10億だろうが、いくらでも用意出来る。」
「……金、ねぇ。まあそうかもなぁ。」
Mtk「いくらだ。いくら欲しい?何円だろうと今すぐ用意する。だから僕らを解放してくれないか」
「そーれは出来っこねぇな。」
Mtk「……ッ金ならいくらでも用意するッ!だからッ」
「うるせぇんだよてめぇ。」
元貴の額に男が銃口を突きつける。
「死にたくなけりゃ黙ってろ。」
Mtk「……ッ」
その時、男の目が元貴の隣にいた僕を捉える。
Ryok「……ッ」
「……お前でいいか。1番大事にされてる奴が人質の方がてめぇら2人も動きずれえだろうしな。」
Ryok「……えッ」
男がいきなり僕の胸ぐらを掴み、無理やり引き寄せて僕の頭に銃を突きつける。
男が僕の首に腕を巻き付けているから動くことができない。
カチャリと音を立てる銃が、僕の命なんかいつでも奪えると嫌という程思い知らせる。
Hrt「涼ちゃんッ!!」
若井が僕の名前を叫ぶ。手を伸ばそうとするけれど、首に巻き付けられた腕が苦しく全くと言っていいほど手を伸ばすことができない。
Ryok「わ、わかッ」
Mtk「ッおいてめぇ!!その腕を離せ!!」
「チッ…うるせえってなんべん行ったら分かんだてめぇら。」
Ryok「……ッ」
男がグッと僕の頭に銃を押し付ける。思わず恐怖で目をぎゅっと固く瞑ってしまった。
「こいつを殺して欲しくなかったら騒ぐな。」
Mtk「……ッな、なんで涼ちゃんなんだ。」
「あ?んだてめぇ。」
Mtk「人質なら、僕の方が良いだろ。俺はミセスのフロントマンだ。俺が人質の方が、警察も安易に動きずらいだろ。」
Ryok「も、もときッ泣」
僕の目からのついに涙がこぼれる。
なるべく元貴と若井を刺激しないようにと、涙は堪えてきたけれど。
やっぱり、怖い。
「……チッうっせーなてめぇ。」
Mtk「……ッ」
「おいお前。スマホ開け。」
Mtk「わ、分かった」
男が元貴に指示を出し、スマホを開かせる。
「インスタ開け。開いたらそのスマホを俺によこせ。」
Mtk「は、はい」
元貴が差し出したスマホを強引に奪い取り、男は元貴のスマホを操作する。
その時
ピコンッという音とともに、『ライブ配信が開始されました。』という音声が聞こえてくる。カメラはOFFのままだ。
元貴も若井も驚いて目を見開く。
瞬く間に同接人数が増え、コメントも流れ始めた。
『ライブ配信?!』
『なになに?!!』
『久しぶりの配信だー‼️』
『もっくーーん‼️』
『涼ちゃんもひろぱもいるのー??』
ものすごいスピードでコメントが流れる。
元貴や若井は、男を刺激しないように安易に声を出すことができない。
『あれ?』
『もっくーん❓』
『どうしたのー❓❓』
『声聞かせてー‼️‼️』
男が机にスマホを置き、カメラをONにする。
『カメラ着いたー‼️』
『え』
『誰この人』
『銃持ってる‼️』
『え?』
『涼ちゃん?!』
『涼ちゃんが!!』
『ドッキリ?』
『何事』
『ドッキリでしょ?』
「よく聞けお前ら!!!」
男がついに言葉を発する。
僕は動くことも話すこともできない。みんなのコメントを見ることは出来るのに。
「助けて」っていつでも言えるはずなのに。
「これはドッキリでもなんでもねぇ。こいつら3人は人質だ。」
「午後6時になる前に、俺が言う3つの条件を満たすことができなければ、こいつら3人を殺す。」
『え?』
『なに』
『警察!』
『誰か通報して!!!』
『早く!!!』
『ひろぱ顔怪我してる!』
『救急車も!!』
『誰か早くしろ!!!』
「条件は、“”現金10億をボストンバッグに入れて用意すること“”」
「そしてもうひとつは、“”逃亡用の車を用意すること“”」
「最後は、“”さっき言った2つは警察か政府が用意すること“”」
「警察に通報しようが好きにしろ。俺がこいつらを殺す時は6時になっても条件が満たされなかった時と警察の奴らが勝手にこの部屋に入ってきた時だけだ。」
「まぁ、こいつらが耐えきれなければ死ぬまでだが。」
そう言って男はライブ配信を切った。
コメント
1件
みぅです🖤 第2話、めっちゃ引き込まれた……。 最初の和やかなレコーディング風景が「日常」だったからこそ、あの銃声の衝撃が生々しくて、胸がギュッとしたよ。 涼ちゃんの恐怖とか、若井と元貴が必死に涼ちゃんを守ろうとする姿とか、細かい震えや目の描写がリアルで、読んでるこっちまで息が止まった。 犯人、ただの金目当てっぽくない感じがして、もっと奥に何かあるのかな……。 続きがすごく気になるよ。 Ririさん、重い空気を丁寧に描くの上手すぎるよ🥀
Riri
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無名
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