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塔の上――
鬼の子どもたちの笑い声が、風に乗って広がる。
その中心にいるのは、変わらない“せんせい”。
けれど、彼の心にはひとつの決意があった。
「……みんな、ちょっとお知らせがあるよ^^」
いつものように塔の教室で授業をしていたシンムが、
静かに手をたたいた。
「鬼と人間の世界を、つなぐ道が、ついに“完成”しました」
「これからは、君たちも――
“人間の世界”に行けるようになります」
ザワッ、と湧く子どもたち。
「……ほんとに!?」
「人間さんと会えるの!?」
「うん^^ でもまずはね、ルールを守って、“お話”するところから」
「そこから、友達になっていくんだよ」
鬼と人間、少しずつ手を取りあい、
一緒に絵を描いたり、畑を作ったり、本を読んだり。
「せんせい!人間の子が“あいさつ”ってしてくれた!」
「ねぇ、“おともだち”ってなに!?」
「ふふっ……ゆっくり学ぼうね^^」
塔の下に、エマ、ノーマン、レイ、ドン、ギルダ、フィル、
そして大きくなったみんなが並ぶ。
「……シンム」
「君がいなければ、この未来はなかった」
ノーマンが、静かにそう言った。
エマは涙を浮かべて、手を握る。
「……ねぇ、もう、帰ってきてもいいんだよ?」
シンムはふわりと微笑んで、首を振った。
「ありがとう、でも……僕はここに残るよ^^」
「まだやりたいことがあるんだ。
この世界を、もっと“愛される世界”にしたいんだよ」
新しい教室には、鬼と人間の子が並んで座っていた。
シンムは黒板に、ゆっくりとチョークで書く。
「世界は、変えられる」
そして振り返り、優しく微笑む。
「さぁ、はじめようか。
“未来”の勉強を――」
そしてその世界では、
もう誰も、“食べられない”。
その世界では、
誰も、“いらない命”なんて言わない。
シンムが命をかけて作った世界は、
今も静かに、優しく、子どもたちを守り続けている。
――ありがとう、“シンムせんせい”。
――ありがとう、僕たちの未来。
完