コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
何時間たったかしら?
 思い切り力を入れてくださいと言われるたび、気が遠くなる。
 こんなに力を出し切ったのは…12歳の時、裏山に一人で上った時くらい。
 何回、これが最後と思っていきんだことか…。
 下半身がちぎれる。
 「はぁ…はぁ…はぁ」
 あと一回で限界だ。あと一回だけ!
 何度も、目の前が暗くなる。
 「はぁ…はぁ…はぁ」
「頭が見えてきました!」
 良かった。あと少し!
ところが、産道に赤ちゃんの肩が引っかかって、そこで止まっている!
 不思議な感触だ。
 どうなるの?私も赤ちゃんも、どうなるの?
このまま両方死んじゃうの?
 もう何もできない。
 
 「はぁ、はぁ、はぁ…」
 吐く息だけが、世界の全て。
 浮かんだのは最愛の人、ラファエル。
 彼の幼い頃、、成人した姿。
 
 彼にもう一度だけ会いたい。
 
 この子は、彼との愛の結晶。
 彼はただのお世継ぎ皇太子を作る為
だけだったとしても。
 あの晩は、確かに彼と私は愛そのものだった。
 今、神にこの子と自分どちらの命を
差し出すかと言われたら、
迷わずこの子を救って貰うわ。
 いきなり、スルっと赤ちゃんが出て行った。
はぁ…一気に脱力した。
 遠くで、確かに産声を聞いた。
 周りの歓声と拍手。
 喜んでいる産婆とホッとしている医師の気配。
もう、大丈夫。
 そのあとは朦朧として、意識は白い霧の中に消えていった。
誰かの声が遠くで聞こえる。
 「元気な…女の子…ですよ…」