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何時間たったかしら?
思い切り力を入れてくださいと言われるたび、気が遠くなる。
こんなに力を出し切ったのは…12歳の時、裏山に一人で上った時くらい。
何回、これが最後と思っていきんだことか…。
下半身がちぎれる。
「はぁ…はぁ…はぁ」
あと一回で限界だ。あと一回だけ!
何度も、目の前が暗くなる。
「はぁ…はぁ…はぁ」
「頭が見えてきました!」
良かった。あと少し!
ところが、産道に赤ちゃんの肩が引っかかって、そこで止まっている!
不思議な感触だ。
どうなるの?私も赤ちゃんも、どうなるの?
このまま両方死んじゃうの?
もう何もできない。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
吐く息だけが、世界の全て。
浮かんだのは最愛の人、ラファエル。
彼の幼い頃、、成人した姿。
彼にもう一度だけ会いたい。
この子は、彼との愛の結晶。
彼はただのお世継ぎ皇太子を作る為
だけだったとしても。
あの晩は、確かに彼と私は愛そのものだった。
今、神にこの子と自分どちらの命を
差し出すかと言われたら、
迷わずこの子を救って貰うわ。
いきなり、スルっと赤ちゃんが出て行った。
はぁ…一気に脱力した。
遠くで、確かに産声を聞いた。
周りの歓声と拍手。
喜んでいる産婆とホッとしている医師の気配。
もう、大丈夫。
そのあとは朦朧として、意識は白い霧の中に消えていった。
誰かの声が遠くで聞こえる。
「元気な…女の子…ですよ…」