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第四話 「写真のあの子」
割れた写真立てを前に、志歩は息を呑んだ。
「……誰、この子」
写真の中には、幼い自分とお姉ちゃん。
そして二人の間で笑う、見覚えのない少女。
白いワンピース。
長い黒髪。
なのに、その顔だけがぼやけて見えない。
志歩は唇を強く噛み、青ざめたまま写真を見つめていた。
「……まだ残ってたんだ」
「しーちゃん、この子知ってるの!?」
問い詰めるような声になってしまう。
すると志歩は苦しそうに目を伏せた。
「覚えてない……でも、“覚えちゃダメ”ってずっと思ってた」
突然。
――ポタ、ポタ。
どこからか水滴の落ちる音が聞こえた。
倉庫の中に水なんてないはずなのに。
音はだんだん近づいてくる。
ポタ、ポタ、ポタ。
雫が恐る恐る顔を上げた瞬間、
倉庫の奥に“誰か”が立っていた。
白いワンピースの少女。
髪が濡れている。
俯いていて顔は見えない。
だが、床には足跡のように水が広がっていた。
「……っ!」
雫が息を呑む。
その瞬間、少女がゆっくり首を傾けた。
『どうして忘れたの?』
耳のすぐ近くで囁かれた気がした。
次の瞬間、部屋の電気がバチッと消える。
「お姉ちゃん!!」
真っ暗な中、志歩が雫の腕を掴む。
荒い呼吸。
響く水音。
そして暗闇の奥から、くすくすという笑い声。
『ねえ、思い出してよ』
『“あの日”、一緒にいたでしょう?』
電気が戻った時には、少女の姿は消えていた。
けれど床には、小さな濡れた足跡だけが残っていた。
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