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第二話 覚醒
「――蒼月の紋章?」
白銀の少年が、信じられないものを見るように私の右手を見つめていた。
手の甲には、青白く光る紋章。
月みたいな模様が浮かび上がっている。
「な、なにこれ……!? 私知らない!!」
怖い。
心臓がうるさい。
なのに、紋章はどんどん光を強くしていく。
周囲の空気が震え始めた。
すると、草原の奥にいた化け物たちが一斉に唸る。
ギャアアアアッ!!
「来るぞ」
少年は剣を構えた。
次の瞬間、黒い獣たちが一気に飛びかかってくる。
「えっ、ちょっ……!?」
速すぎる。
逃げられない。
けれど――
ザンッ!!
銀色の風が走った。
一瞬で二体の獣が吹き飛ぶ。
「うそ……」
強い。
レベルが違う。
少年は風みたいな速さで敵を切り裂いていく。
青い光を纏う剣。
舞う白銀の髪。
まるで映画の主人公だった。
でも。
数が多すぎる。
「チッ……!」
少年が初めて焦った顔をした。
その瞬間、一体の獣が横から私へ飛びかかる。
「っ!!」
避けられない。
そう思った時。
――ドクン。
右手の紋章が熱を持った。
頭の中に、知らない言葉が響く。
『……目覚めよ』
青い光が爆発する。
バァンッ!!!
「きゃあっ!?」
衝撃で地面が割れた。
周囲の獣たちが一気に吹き飛ぶ。
静寂。
風だけが吹いている。
私は呆然と自分の手を見た。
そこには――
青白い光でできた“剣”が握られていた。
「……え?」
ありえない。
でも確かに握っている。
透明なのに存在感がある、不思議な剣。
少年の金色の瞳が大きく揺れた。
「……初覚醒で、魔力を具現化したのか?」
「しょ、初覚醒!? なにそれ!!」
「普通はありえない」
そう言った直後。
ガサッ。
草原の奥から、さらに巨大な影が現れた。
今までの獣とは違う。
三メートル以上ある黒い化け物。
身体中に赤い亀裂が走っている。
「……最悪だ」
少年が低く呟く。
「“グラン・ヴェルグ”……こんな辺境にいるはずがない」
化け物が咆哮した。
空気が震える。
怖い。
脚が動かない。
でも、その時。
化け物の赤い目が、まっすぐ私を見た。
ゾワッ。
“狙われてる”
直感で分かった。
次の瞬間。
ドォンッ!!
地面を砕きながら化け物が突進してくる。
「下がれ!!」
少年が私を庇うように前へ出た。
剣と巨大な爪が激突する。
ガキィン!!
「っ……!!」
少年の身体が後ろへ滑った。
押されてる。
あんなに強そうなのに。
化け物が笑うみたいに唸った。
そして。
その爪が、少年の肩を切り裂く。
「っ!!」
赤い血が飛ぶ。
「え……」
一瞬、頭が真っ白になった。
その時だった。
胸の奥で、何かが燃える。
怖い。
でもそれ以上に――
“助けたい”
そう思った瞬間。
右手の紋章が、今まで以上に強く輝いた。
少年が振り返る。
「待て、お前――」
私は無意識に剣を握りしめる。
すると青い光が身体中を包み込んだ。
風が舞う。
地面に巨大な魔法陣。
頭の中に、また知らない言葉が流れ込む。
そして私は、
自分でも知らない言語を口にしていた。
「――《ルナ・フェル》」
瞬間。
空から、無数の青い光が降り注いだ。
まるで流星みたいに。
ドォォォン!!!
化け物の叫び声が夜空に響く。
草原を揺らす爆発。
光。
風。
沈黙。
やがて煙が晴れる。
そこには――
完全に崩れ落ちた巨大な化け物と、
呆然とした顔の少年がいた。
「……は?」
私は剣を落とした。
カラン、と音が響く。
そして次の瞬間。
急に視界がぐらつく。
「え……ちょ、やば……」
身体から力が抜ける。
倒れそうになった私を、
少年がとっさに抱き止めた。
「っ……!」
近い。
めちゃくちゃ近い。
金色の瞳が、驚いたように私を見つめる。
そして彼は、小さく呟いた。
「……本当に、“蒼月”なのか」
意識が薄れていく。
最後に見えたのは、
月明かりの中で揺れる白銀の髪だった。
――続く。