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明太子に食われる鈴木
注意
卍と陸です。ガッツリCP
誤字などありましたら斬首します
同仕様もない想いなのだから、悩むうちに言えばよかったのだ。
葉の間をさらりと風が抜け、光を受けた幹がぼんやりと煌めく秋。
折角誘われて一緒に散歩しているというのに、自分ときたら、柵越しの川を見つめる瞳をちらちらと焦るように見るだけだ。
ああ、情けない…
目の前に写る貴方に声すら掛けられず、私はずっと暗いスマホの画面を眺めていた。
「何してんの。電源すら付けずにさ」
急に話しかけられると思ってもいなかったのに加え、 足音もなく近付いてこられて肩が跳ねる。
「…考え事を少し、ですね。」
「そう。真面目だね」
こちらが振り絞った震える声に素っ気なく返す貴方の横顔に視線が集中する。
いつもは終わりが見えない程話しかけてくるのに、こちらからの返事には十文字も使わない。本当に気まぐれで愛らしい、まるで猫のようだ。
横から聞こえてくる穏やかな川の音が、上手く喋れない私を揶揄う様にチャプチャプと音を響かせてくる。
いや、否定は出来ないんだ。こんな事すら口に出せないなんて貴方から見れば阿呆同然なんだろう。言い訳するつもりは一切無いから。
「ここじゃ日陰無いから暑いでしょ。移動する?」
「そうしましょう、お互い長袖ですし。」
薄ら伏せられた黒い目、緩い口元、暖かい大きな手、少し高くてやわからい声。
ああ、愛おしくてたまらない存在。最期が来るとしたら、私は貴方と一緒に散って消えたい。
しかし神はそっぽを向くものだ。
それは叶えられない、と。 私の様な若い国家は、身体が限りなく人間と近い。 同じように怪我もするし死ぬ事もある。
貴方は違う。1000年以上生きる国は、今まで知る内では絶対に死ぬ事が無いのだ。
例え腕が千切れようと、心臓を貫かれようと、全て跡も残らず消え去る。 心中なんて歪んだ想いを伝えても無意味。 それどころか、貴方に嫌われるかもしれない。そんな事があったら、私は…
「あれ、何これ?」
急な声に、夢から醒める勢いで意識が戻る。 ぐらぐらする頭をなんとか覚醒させながら貴方が指差す方向を見ると、横に聳え立つ木の根元に赤い実のような物が落ちていた。
「… スグリ、ですかね」
「へえー。聞いた事あったかなあ」
顎に手を当てて暫く考えた後、はっと思い出したようにこちらを向いてくる。
「スグリってさ、花言葉だけ知ってるんだよね。どんなのか分かる?」
「いえ、そういうのは私、知識が無いので…」
少し押され気味に答えてみると、にやっとして貴方は言った。
「『あなたに嫌われたら私は死にます』
なんだって。なかなか愛重いでしょ」
「…そう、ですね」
一瞬、心を見透かされたかと思った。それくらい同じなのだから仕方がない。
赤い実に付いている黒い点が、「間抜け」とでも言うかのようにこちらを睨みつけてくる。
「そろそろ移動しましょう。日も暮れてきましたし」
「えー… もう?」
自分の頭を落ち着かせる為に話題を別にすると、貴方は少しむすっとした顔で答える。
恐らくまだ家には帰りたくないのだろう。
「オレ帰る前に海見たい…」
「急すぎません?」
この人の気まぐれ具合には困ったものだ。でも一緒に居られる時間が増えるのなら苦ではない。
面。 高い崖の下、そこには夕日を反射して美しく光る海
「ここが一番綺麗なんだよね。」
ご満悦な様子で海を眺める貴方の横顔。
でも何だか、気が楽にならない。普通なら綺麗な景色を見ればスッキリするはずだが…。
ゆらゆらと揺れる海水をじっと見ながら、頭の中をぐるぐる回す。
何だろう、この気持ちは。何でこんな歪んだ想いを貴方に向けているんだろう。この事を言えば楽になるだろうか。貴方はどんな顔をするのだろう。
「…」
いつの間にか日は沈んでいて、欠けた月が足元を照らしていた。貴方は眠たそうに、でも変わらず海を見つめている。
なんだかむず痒くなってきた。
「陸、さん…」
「んー?」
眠気と月に細くなっていた目をぱちりと開けて、こちらを見てくる。
衝動の儘に貴方の手を取り立ち上がった。
「ナチ?」
引っ張られて、少しよろけながらなんとか立ち上がる貴方。
驚いた顔はしていても手を振りほどくことは無い。
「…好きなんです。陸さん。」
「死ぬなら貴方と一緒に死にたい。離れたくない。
俺、それくらい好きなんです。」
言うだけ言って崩れる様に座り込む。
正直、終わったと思った。
「でも、………無理だから。死ぬ事がない相手には持ってはいけない感情だって分かってるんです。だからせめて伝えさせてください。」
少しは楽になりたい。もうこの際嫌われたって逃げられたっていいから、貴方の記憶に刻み込みたい。
「…そっか。」
しかし返事は予想外だった。下を向いたままの俺にがばっと抱きついて、肩に顔を寄せる。
「陸、さんっ…?!」
「最初から分かってたよ。」
未だに理解ができない俺の手を引いて、崖の端まで歩いていく。そのままくるりとこちらを向き直して、くすっと笑った。
「やっと言ってくれたんだ」
ぼろ、と目から涙が溢れてくる。嬉しいのか、驚愕したのか、自分でも分からない。
「…はい。やっと決心がつきました」
手を繋いだまま抱きしめる。
「ねえ、知ってる? 愛って世界の常識を壊せるんだって。まだ皆が知らない、『空』を知る事になるんだよ」
手に少し力を込めて、地面を蹴り上げた。
コメント
1件
神すぎるって…なんで貴方達は絵も上手いし物語も上手いの…頭どうなってんねん…(いい意味で)