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1 「出会い」
俺が呆然としたまま待っていると
「はあ、はあ、…はい!タオル、!」
今さっき駆け出したはずの彼が、息を上げながらタオルを差し出してきた。
「…ありがとう。」
俺は慣れないような言葉を言い、髪の毛にタオルを当てた。
すると、
「もう、へたくそ…」
そう言って、タオルを奪い、
俺の髪をわしゃわしゃと拭く。
「ちょっと、やめろって、」
俺が言うと、彼は不敵な笑みを浮かべて
「大丈夫、大丈夫、」
と言った。
俺は戸惑ったが、
彼には他の奴らとは違うような 雰囲気が醸し出されていた。
まだ少し濡れたままの制服で、
俺は自分の席に着く。
その直後、すぐに担任が教室に入り
朝のHRが始まった。
コソコソと俺を嘲笑う声も聞こえたが、無視した。
今は怒りが溢れ出してはいけない。
「こんなの、間違ってるよな。」
俺は心の中で思う。
もし、この日常が変わったら。
もし、俺が普通の高校生として接されていたなら。
そもそも、このクラスの奴らがいけないのかもしれない。
そう思うと、やはり俺は
「こんなクラス大嫌いだ。」
そんな くだらないことを考えていると、
「あ!君はー…えっと。」
聞き覚えのある声がした。
「?…」
一目見たらすぐわかった。
この男は今朝の…童顔の男だ。
どうやら彼は転校生らしい。
1年の途中から入るなんて、親しめないだろ…
なんて思っていると、
「きゃー!かっこいい!」
「やば、アイドルじゃね?」
「なんで あいつ なんかと面識が…」
…途中で罵声が聞こえたが、
大半は彼への好感を示すものだった。
_顔だけでこんなに人生が変わるのか。
対応すらも違う。
こんなのおかしい。
いっそ整形でも_
「そんなことないよ。」
_は?
「え、なんで…」
「声にでてたから…」
「…」
やらかした。
こいつだけは俺に優しくしてくれるのに
これだから、俺には 友達が出来ないんだろうな。
「ごめん。」
「な、なんで謝るの!僕はいいんだよ、慣れてるから…」
慣れてる?
俺は「何に慣れてるんだ。」と言いそうになったが、
今回はぐっと堪えた。
その時、1限の初めのチャイムが鳴った。
2 「誘い」
憂鬱な数学の授業が終わると 、すぐに
彼に「今日、家においでよ」と誘われた。
当然、俺は行く気がなかったが…
「おねがいっ!僕、友達もあまり居なくて、」
“ あまり ” ? 俺は一人もいないんだぞ。
今すぐにでも、彼の整った顔に飛んでいきそうな拳を抑え、俺は、
「…今日だけだからな。」
と、言ってしまった。
つまり、俺は名前も知らない彼の家に上がるということだ。
…ドタキャンしようか。
放課後になり、やはり彼はクラスの奴らに囲まれている。
なにが、「友達があまり居ない」だ。
ふざけるなよ、
そのうち、あいつも俺をいじめるようになるだろう。
かと言って、このまま帰る訳にも行かない。
俺は校門の前で待つことにした。
_来ない。
ああ、もうこれだけ待っても来ないなら 帰ろう。
そう思った時、
「ごっめーん!!ほんとごめんなさい!」
「…」
後ろから駆け寄ってきたのは、慌てている彼だ。
…そういえば、名前を聞いていなかったな。
「お前、名前何?」
「えっ、朝の時に言ったのに…!」
むうっと、頬を膨らませながら、
「僕は! チョ ン ・ ジョ ン グ ク !わかった?」
「…わかった。ジョングクだな。」
「君はなんて言う名前なの?」
「俺は、キム・テヒョン。別に、覚えなくていいぞ。」
覚えなくていい。
俺がそう言うと、彼は、
「もう覚えちゃったからー、忘れないよ!」
と言って俺の手を取った。
俺は振り払おうとしたが、案外力が強く離れなかった。
今から、彼の家に行くのに、他の奴らに見られたら…
こいつまで目をつけられる。
「なあ、少し離れて歩かないか。」
未だ手を握ってくる彼に対し、俺は言った。
すると、
「…やだよ、かっこいい人とくっついていたいもん。」
「かっこいい人?とんだ冗談だな。」
「冗談じゃなくて、!ほんとだよ…?」
少し上目遣いで言ってきた。
お前からしたら俺がタイプなのかもしれないが、俺は男だ。
もちろん、俺の恋愛対象は女性。
こいつは…きっと男だろう。制服が男子用だ。
「お前、俺の素の顔知らないだろ。よく言えたな。」
「え、じゃあマスク外してさ、髪もあげてよ!」
「嫌に決まってるだろ。」
はあ、と、俺はまたため息を吐き、
彼と1人分の距離を空けて歩いた。