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「なあ、さとみ。話がある。」
父親が俺をリビングに誘導する。
「何」
ソファーに座り答えた。
「実は転勤することになったんだ。さとみはこのままここで一人暮らしするか、俺と一緒に引っ越すか。もちろん一人暮らしするなら金は出す。」
金は出す。そういう事じゃない。
「考えさせて」
いまの俺にはそう答えるしかなかった。
「そうか。分かった。でも早めにな。3ヶ月後には引っ越すから。」
「はぁ。母さん無しでどうやって」
「苦労かけて本当にすまない。
父さんも再婚活動がんばるから。」
俺の父さんは、5ヶ月前にシングルファザーになった。
母さんは、自殺か他殺か、分からなかった。なにせ職場の駐車場で、屋上から落ちたみたいに打ち付けられたような傷があったからだ。
「決めたよ父さんこの家に住み続けるよ。」
そう父親に告げたとき、何か嫌な予感がした。
「おお、そうか。家のことを宜しく頼む。」
そして俺の独り暮らしが始まった。
嫌な予感はここ数日どんどん強くなっている。不安で授業も集中できない。
2015/5/10朝のホームルーム前 今日は何だか調子がおかしい。何か大事なことをずっと忘れていたような、その事を思い出してはいけないような気がした。
その日、嫌な予感は的中した。
「今日はなんと転校生が来ます!」
クラスメイトは皆さわいでいるのに一人だけなぜか冷や汗が止まらなかった。
「入ってこいー」
先生が転校生を教室へと誘導する。
「りいぬ!!」
気づけばそう叫んでいた。
クラスメイトが一斉に俺の方を見る。
あぁやっと会えた。俺の運命の人
でもなぜだろう。莉犬がどんな人だったか思い出せない。
顔と名前が一致しているだけだった。
「思い出すなって言ったじゃん。」
莉犬が泣いてぐちゃぐちゃの顔でそう言った。
ごめんなさい。君の思い出なんかないんだ。そんなこと絶対言えない。でも1つだけ。大好きだった。それだけ。
♥️ 12 で続き書きます。