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病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い
慈しむ事を誓いますか?
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い
慈しむ事を誓いますか?
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__年 、 12月25日 __
がやがやと 騒ぐ駅の 伝言板を 確認する 。
【 誠さん 銀座で待っています 御雪 】
伝言を確認し 、 人混みを通り抜け、 ビルが見えると
「 Rockin’ Around The Christmas Tree 」 が各々の店から聞こえてくる 。
外は暮雪が 積もっていた 。
「 御雪さん 」
銀座の 大きな イルミネーションの 前で 井上 晴の 小説を めくっていた彼女に 声をかける 。
「 誠さん 、 」
流行の 髪と洋服に 身を包んだ彼女は 嬉しそうに はにかんだ 。
「 今日は何したい ? 」
「 あたし ケーキが食べたいわ 、 すっかり お腹がぺこぺこ だもの 。 」
「 ふふ 、 そういうと 思って予約しておいたよ 。 僕の家で 食べようか 」
「 嬉しい 、 ありがとう誠さん … そうだ 、
せっかくだし クリスマスブーツも 買いましょうよ 」
「 あぁ 、 あのお菓子屋のかい 」
「 そう 、 あたし あれ買ってみたかったの 」
「 いいよ 、 買おう 」
「 ありがとう 、 誠さん 」
そう言って 抱きしめてくる彼女は 、
どんなお金持ちが持っている クリスマスツリーよりも 、 はるかに 輝かしくて 、 美しかった 。
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___年 12 / 25 ___
「 今日は何の日 ? 」
「 ウィリアム一世が 即位して 、大正天皇と チャップリンが 天に昇った日 。 」
「 クリスマスだって言えばいいのに 」
Wikipediaで 見たような言い回しを 多用する彼女は 僕の大好きな人 。
「 ふふ、冗談だってば 」
「 今日はケーキが 食べられるのよね 」
「 そうだよ 、 …まあ 別にいつ食べたって美味しいんだけど 」
「 ダメだって 、 クリスマスは一番ケーキが 美味しい時期じゃん 」
「 う〜ん … ちょっとわかるかも 」
「 でしょ 」
パーカーに 身を包んで 、 僕の家のソファーで ゴロリと寝転ぶ 。
時たま 、 近くにある 小さなクリスマスツリー の オーナメントを 触って 遊んでいる姿は まるで 猫のようだった 。
「 あ 、 でも タピりたい気持ちもあるかも 」
「 なんだよ タピるって 」
「 知らないの !? 感性古〜 、蓮 ジジイじゃん 」
「 うるさいなぁ 、 」
そう言われながらも 、 僕はやっぱり彼女と 出かける準備を 進めていく 。
「 … 行く ? 」
「 うん 、 でーと だ 。 」
そう言って ベージュのコートに 身を包んで 彼女は ふわりと 笑った
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___ 年 12 月 25 日
「 でね 、 あの人ったら まるで三越みたいな頭してるのよぅ 、 無理してハイカラな服着てさ 、 」
「 そうかい、君も大変だね 」
「 でしょぅ、 ほんとに 清さんは 優しいわ 、 あたしの 話をちゃんと聞いてくれる 。 … あたしと アベックにでもなる ? 」
「 もうなってるじゃないか 、 何回目なんだい 、 その言葉 」
そういうと 彼女は花笑みを浮かべた 。
秘密にしてくれよ 、 と 僕が頼むと 、 わかってますよ 、 と また 笑った 。
「 …でも 明日から 新しい元号なのよね 、 不思議な気分 。 」
「 そうだね 、 この元号で過ごす 最後のクリスマスだ 。 」
「 やだ クリスマスだなんて 。 清さんも いつから ハイカラかぶれに なったのかしら 」
「 今の若い子は みんな使ってるさ 」
「 あらやだ 、 たいして 若くもないくせに 」
「 君は僕と同い年じゃあないか 、 」
「 あら 、 そうだったかしら 」
そう 言って 、 彼女は落語でも 聞きに行きましょうよ 、 と僕の手を取って 言った 。
僕が バレたらどうするんだい 、 と言っても バレなきゃいいのよ 、 清さん 。 と言って 、 少し恥じらいながら 目配せをした 。
今日は 雪月夜 。
明日には 雪は止むのだろうか 。
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「 … 御雪 」
高層ビルから 見下ろした イルミネーションは 、 案外 悪くないもので 。
隣にいるはずの 彼女の手を取って 、 わざと呼び捨てにしてみた 。
「 … なぁに 、淚 くん 」
「 僕ら 、 何年一緒にいるのかな 」
「 さぁ、わかんない 」
「 ずーっと 、 ずーっと 前だよね 」
「 私 もう 思い出せないよ 」
「 だね、僕もだ 」
眼下に 広がるビルと 光の群れを 眺めながら、 僕らは寄り添う 。
「 戸籍とかめんどくさかったね 」
「 淚くん 毎回名前変えるんだもの 、 呼び方めんどくさかった 」
「 御雪は ずっと 同じ名前だね 」
「 そう、 私この名前好きだし 」
「 誰につけられたのかもわからないのに ? 」
「 だからだよ 、 」
「 そっか 」
何気ない 単語の繰り返し 。
だけど それは 、 間違いなく核心に迫っていて 、
「 … ねぇ 、 ??? くん 」
とうの昔に 忘れてしまった 、 僕の最初の名前 。
「 なぁに 、 御雪 」
とうの昔から おんなじのままの 、 彼女の名前 。
「 私たち 、 ずっといっしょにいようって いったよね 」
それは 、 遠い昔に交わした 小さな約束 。
「 うん 」
僕らの 手を握る力が 、 誰のせいでもなく 強くなる 。
もしかしたら 、これは 胡蝶の夢かも しれないと 、 その力がなぜか思わせる 。
「 ずっといっしょにいれて 、 しあわせだよ 」
「 ぼくも 。 」
それは 、 運命を駆けること 。
それは 、 一生の誓い
病めるときも 、 健やかなるときも
一生の愛を 誓った 僕らの 呪い 。
それは 、 運命を 間違うこと 。
人の域を 超えた 誓い 。
永遠の愛を 誓った 、 僕らの終わらない一生 。
「 … 」
「 … 」
まぶたに残る 光を焼き付けながら
僕らは 永遠の一生に 思いを馳せる 。
色褪せることの ない 愛 。
尽きない 想い 。
〈 お互いを愛すことを誓いますか ? 〉
それは 、 聖なる夜の密契 。
誰が促したわけでもなく 、 僕らの意思で 。
キリストの 降誕を 祝う日 。
そんな日に 、 僕らは生まれて 、 愛を誓った
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い
慈しむ事を誓いますか?
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い
慈しむ事を誓いますか?
肯定の返事をした その日から 。
僕らの 永遠のクリスマス 。
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コメント
7件
クリスマスがお題…✨ とても浪漫チックで御座います! 御雪さんという女性の方も品がある話し方をされていて 言葉では表せない程とても凄かったです! 年代のクリスマスも本当に感動しました! 是非ともクリスマスのお供にさせていただきます!
今回も神作です!!!! めちゃくちゃ良かったよ!!!! あー…何度も何度も何度も繰り返して 同じクリスマスを2人で過ごす… 本当に素敵な愛だね!!! 御雪ちゃんの名前は変わらないの 本当はその名前を好きだったり? いや、奇跡…なのかな?(?) 永遠のクリスマス…凄く良い言葉だ…(?) 次回もあれば楽しみに待ってるね!!!!
そろそろ現世はクリスマスか…待ち遠しいな‼︎