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絡みつく糸
「……ねえ、フェイ。今の顔、俺以外に見せないでよ」
シャルナークは、フェイタンの微かな表情の変化を捉え、囁く。アジトの薄暗い光が、彼の目に鋭い光を宿らせていた 。
フェイタンは、その言葉に反応せず、ただじっとシャルナークを見返している。その無言の視線が、かえって重く、シャルナークの心臓を締め付けるようだ。
「フェイが何を考えてるのか、全部知りたい。俺だけが。他の誰にも、フェイの内側を覗かせたくないんだ」
シャルナークは、フェイタンの手を取り、自分の頬に押し当てる。冷たい指先が肌に触れる感触に、ゾクゾクとした感覚が走る。それは快感でもあり、恐怖でもあった。
「フェイも同じでしょ? 俺が誰かと話すたびに、その相手を睨んでるの、知ってるよ。俺が、ほんの少しでも他の奴に気を向けたら、フェイの苛立ちが空気を通して伝わってくる」
フェイタンは、相変わらず無言だが、その瞳の奥に隠しきれない感情の渦が見える。シャルナークはそれを読み取り、満足げに微笑む。
しかし、その笑顔にはどこか歪みがあった。
「ねえ、フェイ。俺たち、どっちがどっちに縛られてるんだろうね。いや、もうそんな境界線、なくなっちゃったのかも。」
シャルナークの言葉は、まるで呪文のようにフェイタンに絡みつく。
フェイタンは、ようやく重い口を開く。
「……鬱陶しいね」
その一言に、感情は込められていない。しかし、その声の響きには、複雑な響きがあった。
鬱陶しい、と感じているのは、シャルナークの言葉か、それともこの抗えない関係性そのものか。
シャルナークは、フェイタンの返答に構わず、さらに深く、言葉の糸を絡ませる。
「でも、離れられないでしょ? 俺も、フェイも。このドロドロした関係から、もう抜け出せないんだ」
アジトの片隅で、二人の間には、誰も踏み込めない、歪んだ絆が確かに存在していた。それは愛憎渦巻く、出口のない迷宮のようだった。