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高専の治療室。
今日、何日かぶりに同級生に会った。傑は出張でいなかったけども。
硝子は目を伏せ、壁にもたれかかっていた。
千鶴は固く目を閉じ、白いシーツの中に横たわっている。
「……死人かよ」
かろうじてそんな言葉を絞り出すと、硝子に睨みつけられていることが痛いほど分かった。
知ってる、硝子が、自分を責めていることくらい。俺だってそこまで馬鹿じゃねぇよ。
◇◇◇
千鶴の葬儀は、術師の家系であった身内だけでひっそりと執り行われたらしい。
俺達も参列できないか、と夜蛾センに頼み込んだが、千鶴本人の意向なので曲げられないのだと。
いわゆる、遺言ってやつだ。
俺と硝子は無駄に気を遣われ、向こう一週間の任務は全て取り消しとなった。
だから必然的に、教室に俺達だけになる時間が増える。
正直に言って、千鶴が死んでも、特に俺達の関係が変わることはなかった。
でも俺も硝子も、身近な奴が任務で死ぬのは、初めてだったから。
どこか、日常に穴が空いたような。
毎日、からっぽの席を眺めて──そんなことを考えてみる。
そういえば、傑はまだ出張から帰ってきていないらしい。台風か?