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「 君 が 、 好き だった 」
ひんやりとした石碑に向かって、然う呟いた。
姿さえ、もう見えやしない彼に…もっと早く告げていれば良かったなんて後悔が過って……
其れは間違いだと、頭を振る。
告げていれば、きっと彼の中の自分は、“ 友達 ” と云う綺麗な儘では終われなかったから。
それは…有ってはならない。
「 … 私 達 、 友達 だもの ね
織田 作 … … 」
今更、如何しようも無い恋情に、涙が溢れてくる。
「 好き …
好き だった の だよ … …
君 の 小説 を 読む 迄 は …
生きたい と 思えた のに 、 」
上がっていく自分の体温に、石碑の冷たさが気持ちよくて…
冷えていく孤独な心には、其れはあまりにも冷たかった。
彼の蜃気楼が瞳を焦がして離さなかった。
“ 愛 ” だなんて、私には関係なかった。
生きると云う行為に価値を見出す事が出来ないと云うのに、如何して其の先に在る愛だなんて物、感じられると思うのだろうか。
愛など無くとも、恐らく私の死を拒むこの世界が変わる事は、無いのだろう。
「 … なんて 、
君 が 死ぬ 迄 考えて 居た の だよ 、
私 … 」
人を忘れる時、声から忘れて往くだなんて聞いた事が有ったけれど。
君の声は、一向に忘れる気配が無い。
未練がましいと呆れに似た己への負の感情が湧くのに、其れと同時に安堵に似た嬉しさが、喉からくつゝと笑いを溢した。
君さえ生きていてくれれば、私は其れで善かったのに…
君は聞いていないよね、
嗚呼、判っているさ。
くしゃり、と音を立てて、抱えた花束が形を崩した。
この涙で、花が育つなら……一番最初に、
否……
全て、君に贈るよ。