時が止まり、体の中から温まるような。
優しい空間が広がる。
眩い光が発生し、広範囲内の生命回復を一斉に活性化させる。
国の魔法機関の中でも扱える者が限られる、最高難易度の回復魔法。
「えええぇ…」
気づいた時には、3人ともポカーンとした顔で呆けていた。
モトキが掴んでいた腕を放すと、服の破れも傷も消え失せていた。
全員体が軽く感じ、体調も先ほどより元気に感じるほどの回復効果である。
「これ知られたら、学校どころか国で騒ぎになるかも…それだけじゃなく…」
「あぁ …」
とんでもないヒーラーが爆誕してしまった。
リョウちゃんは自分の事ながら飲み込めずにまだポカーンとしている。
まずいなこれ。 まさかここまで凄いとは…
手中にした国は安定し、戦にも有利に働くだろう。
利用されかねないほどの力だ。
俺とモトキが顔を見合わせた。
今はまだ、絶対に口外しちゃいけない。
お互いに頷く。
「助けてくれてありがとう。それと、最高難易度の回復魔法おめでとう。やっぱりリョウちゃんは凄いよ」
モトキが優しくリョウちゃんを抱きしめた。
呆けていたリョウちゃんが、その言葉を聞いて、ホロホロと涙をこぼす。
ぎゅううっとモトキを抱きしめ返した。
「最高難易度はわからないけどさぁ、助かってよかったああぁ~」
高度魔法を使えたことはどうでも良くて、モトキを治せたことに安堵して泣いている。
知ってたつもりだったけど…
ここまで根っからの天使みたいな人間が存在するとは。
だから沢山の妖精たちに好かれて守られているんだと改めて感じる。
こんな人、益々利用されかねない。
俺らはそこから念には念を押して説明をした。
今は絶対に、この魔法については内緒にすること。
世の中には利用しようとする悪い大人がいること。
リョウちゃんは騙されやすいこと。
何かあればすぐ相談すること。
「ちょっと、僕のこと何だと思ってるのっ。それくらい解るよ!ちゃんと気をつけるから!」
あまりに丁寧にかみ砕いたせいか、先輩だし子供じゃないんだからと憤慨している。
全く安心は出来ないけれど、まずはリョウちゃんの覚醒が嬉しかった。
「リョウちゃんまた明日ね!」
「じゃあ、またなー」
「うん、2人ともまたね~」
森から1番近くに住むリョウちゃんを送り届けた後、帰り道で足を止めた。
前を歩くモトキを睨むように見つめる。
「どういうつもりだよ」
ずっと、ずっと抑えていた怒りがこみ上げてきて限界だった。
観念したように息をつく音が聞こえる。
ゆっくり振り返った目には、初めて会った時のような色が滲んでいた。
コメント
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うわー…………やばいなぁ。 大森さんの描写うまいなぁ…………スゴすぎる。 生き写しのように感じます。 うわぁ……なんか灰暗い予感。
リョウちゃんおめでとう…!!!と同時に、やっぱモトキさんは覚醒させるつもりだったのか…??