テラーノベル
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ツリーの明かりしかない部屋は、思ったよりも静かだった。時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。
ソファに腰掛けたなつの前に、いるまが立っている。
それだけで、逃げ場がなくなった気がした。
🎼🍍「……他のみんなは?」
🎼📢「寝た」
短い返事。
それ以上の説明はないのに、空気が変わる。
🎼🍍「じゃあ俺も——」
🎼📢「行くな」
手首を掴まれた。
強くない。けど、迷いがない。
🎼🍍「……何」
🎼📢「少しだけ」
少し、の距離じゃない。
そう言い返す前に、なつはソファの背に押し付けられていた。
近い。
近すぎて、目のやり場に困る。
🎼📢「目、閉じるな」
🎼🍍「……命令多すぎ」
言いながらも、なつは視線を逸らせない。
いるまの指が、顎に軽く触れているから。
🎼📢「今日は、クリスマスだろ」
🎼🍍「だから?」
🎼📢「欲張っていい日」
低く囁かれて、背中がぞくっとする。
その反応を、いるまは見逃さない。
🎼📢「今の、反応」
🎼🍍「……気のせい」
そう言い切る前に、距離が詰まる。
唇が、触れるか触れないかのところで止まった。
🎼🍍「……っ」
🎼📢「ほら、こういうの」
わざと触れない。
そのまま、なつの額に自分の額を軽く当てる。
🎼📢「触られない方が、意識するだろ」
🎼🍍「……性格悪」
そう言いながら、なつの指は無意識に、いるまの服を掴んでいた。
それに気づいた瞬間、空気が一段重くなる。
🎼📢「……離す気ないな」
🎼🍍「うるさい」
顔が熱い。
逃げたいのに、掴む力を緩められない。
ゆっくり、ゆっくり、唇が触れる。
ほんの一瞬。確かめるだけみたいなキス。
離れたあと、すぐには距離を取らない。
息が混じるほど近いまま。
🎼🍍「……これ、反則だろ」
🎼📢「何が?」
🎼🍍「全部」
なつの声は小さくて、震えていた。
それを聞いて、いるまは小さく息を吐く。
🎼📢「俺だって、我慢してる」
🎼🍍「……信じらんね」
🎼📢「信じろ」
今度は、少しだけ長いキス。
深くはない。でも、離れがたい。
なつの肩に額を預けるようにして、いるまが囁く。
🎼📢「今日はここまで」
🎼🍍「……毎回それ言うよな」
🎼📢「続き、欲しそうだから」
図星すぎて、言い返せない。
代わりに、なつはぎゅっと服を掴んだ。
🎼🍍「……来年も、こうなる気しかしない」
🎼📢「約束な」
ツリーの光が瞬いて、
二人の影は、重なったまま動かなかった。
触れていない部分の方が、
一番熱を持っていた。
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