あなたがくれた幸福が、私の中に残ってる。
ずっとずっと忘れない。
だから今日だけは、笑って、最高の笑顔で、
遥花「今日、卒業だね。佐原は寂しくなさそうだけど?」
快真「あー…まぁ、お前と話してる分には。」
遥花「んふっ、神坂ちゃんか。」
3月9日。
今日でこの学校に来るのも最後だ。
特に何も思入れのなさそうな快真でさえ、実は寂しがっているのが本音だ。
遥花は彼がどれだけ後輩の神坂 真生(みさか まお)を好きでいるかが分かり、からかいはしたものの、切なく感じる。
遥花(佐原も言葉にしないからなぁ…。)
快真「それより、城華はいいのか、誰かに挨拶してこなくて。」
遥花「えっ、挨拶行くの?じゃあ私も…。」
部活の後輩に、と言いかけた口を閉じて、
遥花「佐原に着いていこうかなっ。」
と笑ってみせる。
快真「は?いや、なんでだよ。」
ニッと笑う遥花に快真は諦め、着いてくることを許可した。
真生「りっちゃん、大丈夫?もう泣いてるの?」
2年2組の窓側では、ひとりの生徒が既に感極まり涙を零していた。
律歌「まおぉ〜!はる先輩がぁ〜うわぁ~!」
真生「うわっ、ちょっと、まだ式も始まってないんだよ?ちょっ…りっちゃーん!」
号泣の親友を撫でながら、ある人を思い浮かべる。
真生「…かいま先輩、卒業かぁ…。」
ふと溢れた言葉に、律歌は真生を見上げた。
律歌「…ほんとは、まおのほうが寂しいんでしょ?」
真生「え…っ?」
親友の突然の冷静すぎる声に驚くと、彼女は赤く腫れた目もニコッと笑った。
真生「…ふふっ、お見通しか。」
結局、親友はいつまで経っても親友なのだと感じる。
律歌は見た目完璧なものの、少し抜けているところがあり、そこを補うのが真生。
だけど、律歌はいちばんに友達を想っている。
それを、真生は身に沁みてわかっていた。
快真「神坂。」
真生「えっ?」
遥花「あらー…あ!りつちゃん!」
律歌「んぇ!?」
2年2組扉前には、式前の普段通りの先輩たちがいた。
快真「式が始まる前に、少し会いたかった。」
ストレートに言う快真に戸惑いを覚えながらも、真生は優しく微笑む。
真生「そうですか!嬉しいです。あっ、りっちゃん、はるか先輩じゃん!」
律歌「はる先輩…?えぇっ、夢?夢かな?」
遥花「あっはは!りつちゃん、夢じゃないぞ〜?本物のはるか先輩だ!」
律歌が遥花に抱きついている間、真生は快真と目を合わせた。
真生「卒業…ですね…。」
快真「あぁ。1年、いろいろあったな。」
真生「先輩が本破ったり怒ったり…ね。」
快真「え、そんな思い出しかないのか…。」
ショックを受けた先輩の顔が面白くて笑みをこぼす。
真生「…時間ですね。」
快真「…そうだな。」
名残惜しそうに視線を下げる先輩に笑顔をみせる。
真生「…っ。」
でも、何も言葉が思いつかなくて、声をかけられない。
ありきたりな言葉じゃ、感謝も、好きな気持ちも伝わらない。
なのに、何も思い浮かばない。
遥花「そろそろ行こうか、佐原。」
快真「ん。”またな”、神坂。」
真生「ぁっ…!」
当たり前に交わした言葉が、特別に感じて、ふたりの先輩の背中を追う。
1歳しか変わらないのに、なんでこんなに大人っぽく映るのだろう。
どうして先輩はこんなにも頼りたくなる背中をしているのだろう。
卒業証書授与が終わり、記念合唱の準備を同級生がしている中、私はひとり、思い出に浸っていた。
何を伝えよう、私が今、彼に、彼らに言いたいこと。
全校生徒と教職員で”空ヶ丘の賛歌”を歌い終わり、在校生による、”旅立ちの日に”の番になった。
まだ定まっていない言葉は、歌で届けられるのか。
ふと視線をあげたら、堂々としていながら、凛と座る先輩たち。
かっこいい。
ああなりたい。
歌で、想いを伝えるのはきっと難しい。
だから、無理矢理にでも気持ちをのせる感じで歌う。
届かないかもしれないけれど、届くかもしれない唯一の方法が、歌に込められている。
卒業おめでとうございます。
大好きだから、
あなたに教えられた、
笑顔のままで、
見送るのも私の役目。
END
卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。
ボクも今日、先輩たちを見送ってきました。
今日は、先輩たちが心配しないように、力強くいられるように泣きませんでした。
ボクは、来年思いっきり泣いて、後輩に託そうと思います。
本当に卒業生のみなさん、学校を支え、リーダーとして活躍してくださり、ありがとうございました。
誰かが絶対あなたの行動に気づいています。
努力したことも絶対いつか報われます。
これからの人生、楽しいことばかりではないだろうけど、
苦しい困難を乗り越えたらまた成長に繋がるから。
今までありがとう。
コメント
8件
このちゃん!! 卒業ってかなしいよね
このちゃんッ!! お迎え出来ましたあ( ˶ー̀֊ー́˶)✨✌️