テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺の名前を聞いた瞬間、藤澤さんの顔が凍ったように口を開けたまま動かなくなる。
どうしたんですか、と藤澤さんの顔を覗き込むと、あ、いや…と促すようにそっぽを向いて言った。俺も色々言ったんだから言ってくださいよ、と肩を小突くと、少し黙ってから
「…..付き合ってたんだよ…ね、大森くんのお兄さんと。」
「え、は….?」
藤澤さんは信じ難いし気持ち悪いよね…と下を向いた。気持ち悪くは無いけど、この時代多様性だし、藤澤さんが嘘ついてるとは思えない。そもそも兄と藤澤さんはどこで出会ったんんだ、藤澤さんも俺みたいに殴られたりしてないかな。心配が込み上げてくる。
詳しく聞かせてください、と藤澤さんに言うと、藤澤さんはうん、と相槌をして話し始めた。
「話すね?」
「…はい」
「結構前のことなんだけど…..」
大森くんのお兄さんに惚れて、告白した時のこと。たしか高二とか高一だったかな。結構話す機会も増えて、2人きりで遊びに行くようになったころ、遊んでいる時に告白をした。
「大森先輩、付き合ってください…!」
「ん、いーよ」
「本当ですか…!?嬉しいですっ!!」
「…はは、俺も」
「おおもりせんぱ…」
「今忙しいから、また後で」
「….はい」
しょぼくれながら家まで帰っていると、首に小さな痛みを感じた。蚊かな、と思いながら首を掻きながら歩いていると、突然急激な睡魔に襲われて、ダメだ、あるけ、と頭に言い聞かせているのに体は言うことを聞かないまま倒れてしまった。
目を覚ますと僕の知らない部屋の光景が目に入る。寝ぼけてんのかな、と思い目を擦っても目を見開いても光景は変わらなく、知らない部屋のままだ。逃げようと思ってドアを開けようとしても取っ手はビクともしなくて、窓から逃げようと思い周囲を見渡すも窓は無かった。ドアをドンドン叩いても誰からも返事はなく、その場に座り込んでドアが開くのを待っていると目の前のドアが空き、大森先輩が部屋に足を踏み入れた。
「..起きてたんだ、おはよう」
「…..僕は先輩のものじゃないです」
ぎろりと大森先輩を睨んで立ち上がりながらドアにゆっくりと近寄る。
「逃がさねぇよ」
大森先輩に思いっきり手首を掴まれ部屋の奥まで連れていかれる。部屋の角のベッドまで手を引かれベッドに押し倒されて、大森先輩が自分の首に手を置いた。
「なにする気..ッ?」
「俺、藤澤の事好きだよ」
「は..」
その瞬間、大森先輩の手に力が込められた。
「はッ、あッ..!?せんッ、ぱっ、!」
苦しくて、痛くて怖い。微かにうつる大森先輩の顔はどこかに冷たさを感じる笑顔で、とても僕が好きな大森先輩とは程遠かった。
「かわいい、かわいいよ涼架」
「ッあ、ひゅッ、はッ… 」
「死にはしないから、気絶するだけ。」
気絶するだけ。でも、知ってるよ、大森先輩が部屋に入ってきた時からずっと手に刃物を持っていたの。
今もだって、僕の顔の隣にあるから…。
「ん…?」
真っ白な部屋で目を覚ました。薬のような匂いと人工的な匂いが混ざって鼻腔を刺激する。人がいるのに、ぼやけて何も見えないからごしごし目を擦って目の前にいる人を見る。 そこにいたのは若井滉斗、僕の大の親友で、泣きながらナースコールをポチポチ何回も押していた。その光景は少し面白く口からふ、と笑いが出る。
「りょおちゃあん…!!生きででよがっだ….!」
「…わかい、なんで助けてくれなかっ」
「わがんないもん、だっで涼ちゃんが、おれに隠しごとばっがするがら…」
「そぉれはごめん、とりあえず泣き止んで」
「ん…ッ、んんんっ….」
かわいいなぁと思いながら若井を眺めていると、病室のドアが空いて医者が僕に向かってこう言った。
「藤澤さん、目を覚まされて良かったです。とりあえず そんな重症ではなかったんですが…」
はい、と相槌を打ちながら医者の話を聞く。
医者から聞いた話によると、大森先輩に気絶させられたあと、腹を刺されたらしい。 出血多量で死にそうだったらしく、あと数分遅れていたら死んでたんだって、こわ。
大森先輩はどうなったのか聞くと、その場で自殺。2人仲良く死んでたみたい画になっていたらしく、僕も自殺していたみたいになっていたらしい。そっからどうやってここまで来たのか順序が気になるけど-、大森先輩が死んだのは嬉しいけどなんだか寂しかった。
ま 、こんなことがあってそっから人が怖くなっちゃったんだけど、今は大丈夫。だから、大森くんだけはあぁならないでほしい。
「ま、そういうこと」
…最低だな。クソだな、カスだ。
こんなに明るくて優しい藤澤さんにそんなことをするなんて。 理性がはち切れそうになるのを抑えて話しかける。
「兄ちゃんがそんなことしてたなんてビックリだわ…最低じゃないですか…..」
「いやー、怖かったね…傷もまだ残ってるよ。見る?」
「…見たいです」
服をぺら、と藤澤さんが捲って傷を見せてくる。その傷は酷く痛そうで、赤みが残っている。俺が嫌そうな顔をすると藤澤さんは自慢気な顔をして俺の方を見た。
「ドヤらないでください、怖いですからねこれ!」
「あー!ごめんごめん!!いたいー!」
なにかとイラついたからポコポコ藤澤さんを叩くと、笑いながらやめて、と言っている。
この人は本当に21なのかと思うくらい笑った顔は愛おしくかわいい。少し落ち着いてから俺は藤澤さんに
「..泊めてくれませんか、嫌だったら」
「嫌とかそんな!何日でも泊めたげる」
俺の言葉を焦るように遮って藤澤さんが俺の肩に手をボンと置く。ありがとうございます、と微笑んで
「藤澤さんのこと、大好きです」
「なっ、え、なんか照れ」
「別にそういう意味じゃないですうー!」
「わ、わかってるし!大体そんな僕のこと好きになってくれる人なんか…..」
うそ、好きだよ、藤澤さん。
ハンカチ、いつか返すね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっとかけた…詰まりすぎている。
コメント
2件
すごい… 世界観が好きです 私の好みが詰まってる、好きです 続き、楽しみ