「あるところに、男の子がいました。男の子は、いつも明るい笑顔を浮かべていて、温かい心の持ち主でした。男の子は綺麗な目をしていました。その瞳は、元気のかたまりそのものでした。ある女の子がその男の子に会いました。その子は冷たい心の持ち主でした。その子の笑顔を見た人はほぼいませんでした。無愛想もいいところ、それどころか、わざと冷たく言ってみたり、よってくる人を突き放したりしていました。そのくせに、女の子は温かい笑顔に憧れを抱いていました。でも、どうしてもその笑顔を浮かべることはできません。そんな彼女の前で、男の子はいとも簡単に、温かい笑顔を浮かべました。女の子は、どうして簡単に笑顔ができるのか聞きました。男の子は言いました。それはね、自然の笑顔だからだよ。男の子はまた笑いました。女の子には意味が分かりませんでした。」
翼はここまで僕から一度も目を話さなかった。
僕はそれが僕と翼の事だと気づいた。僕は翼を冷たいと思ったことがなかった。翼は、確かに態度は尖っていたけど、心はとてもとても、これまであってきた人の誰にも負けないくらいに、優しかった。
「つづけて…」
口からは、驚くほどに弱々しい声が出た。
「うん。」
翼は少し赤くなった瞼を閉じた。
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