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「敦、宿にはまだつかんのか…」
「すいません、国木田さん。もう直ぐですので…」
「あー!!疲れたー!!もうやっだ!なんでこんなに山奥なの?!」
式部羅紫、20歳。好きな食べ物は猪口冷糖です。えー只今、山を登っております…
「もう直ぐ〜?!さっきから、もう直ぐ、もう直ぐって何度も言ってるじゃないか!」
あー…こりゃ乱歩さん拗ねたな…めんどくさいぞ。
「すいません、乱歩さん…と言うか羅紫は普段動いてない分動けっ!」
「え国木田くんそれはひどない??」
ただサボっている訳じゃないのに何故か国木田くんの中ではさぼり魔認定をされている。
治と同類なのが気に食わない。
にしても長い山道だな…そろそろ乱歩さんが…
「んーーー!もう歩けない。羅紫、おんぶ〜」
言うと思った
「え” 私、温泉旅行に来ているんじゃなくてここらで起きる行方不明事件を調査しに来たんですよ…疲れるのはい!や!です!」
そう、私はみんなと温泉旅行へ来たのではなく近くで起きている事件を調査しに来たのだ。
遊びに来た訳では無いから疲れたくないんだけども…
「やだ!歩けない!だからと言って男と抱き合う趣味はない!」
言うと思った(ver.2)
「んもー…はい、おんぶ。」
「よっし!」
なんだかんだ自分も甘いんだよな。
と言うかよくよく考えたらパワハラだあ…労基よ助けて…
「それにしても敦少年、駅からかなり歩いているけど今どこらへん?」
「ええっと、地図地図…あっ!!」
「どうした、?」
嫌な予感。
「すいません国木田さん…駅から徒歩で十分ではなく駅からバスで十分でしたぁ……」
終わった…
「バスで十分の距離を歩くなんて僕にはもう無理だぞ。」
何言ってんのこの人
「「乱歩さんはもうおんぶされてるのでは…?」」
国木田ママと被った笑
「なんか言った?羅紫、国木田?」
「「いえ何も。」」
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その後川を流れていた治を拾い、私の背中で乱歩さんと治で何故か睨み合いをしながら温泉宿へと到着した。
「わあ!広いお部屋ですね!あ、見てください、川も見えます!」
賢治くんはきゃわいいなぁ……
「じゃあ私は別室で仕事の準備してくるね〜!…乱歩さん、降りて?」
なんでこの人宿についても私の背中に張り付いてんの?
「やだ。」
「なんで。」
「なんでも。」
「えぇ…じゃあこのまんま部屋行ってきます。」
「「待て待て待て」」
治と国木田くんが全力で止める。
「男女が同じ部屋など断じてありえん!!」
「乱歩さん?私とお話ししましょう??」
「…ちぇっ!仕方ないなあ。降りてあげるよ。」
2人からの説得によりやっと降りてくれた乱歩さん。
「…あ、なんか背中から乱歩さんの匂いがする。いい匂いですねえ〜」
香水をつけているのかな?甘い匂いがする!
「そう言われれば僕も全体的に羅紫の匂いがする。」
嘘でしょ?!
「え”!?ごめんなさい!香水とかは使ってないんでそのうち取れるかと…」
自分臭かったらどうしよう…山登ってて少しだけ汗かいちゃったからな…
「…別に臭くないから。ほら、早く仕事にいく!」
「あ、はい…じゃあ失礼しまーす…」
えなんかこの空気何?!
「「「「「(あんないい匂いで香水つけてないのか…)」」」」」by敦、治、国木田、谷崎
「いってらっしゃーい!!」by賢治
その後部屋に着き、簡単な荷解きをし調査計画を立てる。
「うう…なんの手掛かりもない…」
そう、調査前の資料は一応読んだが行方不明者多数。としか書かれていなかった。
せめて被害者の年代、関係性、居なくなった詳しい時間、周囲の人間のアリバイとかが欲しかったんだけどな…
まあでも何もないってことはなんでも出来る!温泉から調べよ〜っと!
「タオルと〜着替えと〜シャンプーにリンスに石鹸〜…っよし、行こう!」
遊ぶ気満々?いやいやこれはれっきとした調査、さ!!
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「んっふう〜…気持ちい〜!」
温泉に浸かりゆったりと体をほぐす。
「おや、男湯から国木田くんの怒声が…」
温泉にまできてキレてるのか…大変だなあ…禿げるのに。
国木田くんの髪に合掌をしつつ周囲を見回す。見たところ変なところはない。
「んー…まああるはずがないよね〜…」
あたりを見回すついでに体を洗いに一旦上がる。
うひゃあ、さむさむ…
「クロール!バタフライ!平泳ぎっ!クロール、平泳ぎ、平泳ぎ、バタフライっ!」
「えあの国木田くんが風呂で泳いでる…嘘でしょ…」
多分メガネがないから壊れたんだな。
そんな事を考えると微かに外から違和感を感じる。そう、マフィア時代に1人でいた所を裏切りにあい、死にかける様な嫌な違和感…
「まあ心配に越したことはないか…!」
露天風呂の竹垣に登り、タオルを巻いて外を見回す。外には雪を被った山がただ静かに佇んでいるだけだった。然しまだ違和感は拭えない。
「……あれ、羅紫さん?!」
「何をしているんだ?!羅紫!!」
「やべっ!!」
気づかれた。まあいいか。
竹垣から飛び降り、異能で服を引き寄せながら山へと走る。
「うおおおつめってええええ!!!!」
雪が降り始める。それはまるで私が山へ入るのを拒むようだった。
「…………太宰、羅紫が危ない。」
「…………」
____________________________
山を異能で飛びながら進むと開けた所に出た。
不自然に開いた平地。ふわふわとした高揚感。
「…異能?」
そう呟くと何の気配もなく声が響く。
「流石だね。元マフィアは感性が違うのかな?」
「?!」
響いた声は自分の真後ろから聞こえ、咄嗟に距離を取る。
然しそこには雪を被った胡桃の木があっただけだった。
「?!どういうこと…?と言うか今さっき、マフィアって…!」
「そのとおり。こんにちは。僕は君に恨みを持つ1人。まあ仲間もいたけどみんな君に殺されたんだけどね。覚えているかい?狐さん?」
どこからともなく現れた青年。身長は敦少年とあまり変わらないが容姿は髪が黒くて短い国木田くんみたいだ。眼鏡はないけど。と言うか、仲間?殺された?もしや…
「ふうん…君はあの時裏切った組織、天竺牡丹の首領かい?確か構成員は幹部も含めて全員私が殺したんだっけ?」
「へえ、覚えているんだ。そうだよ。僕は天竺牡丹最後の生き残り、首領の川端康成だ。」
「よろしくする気は無いのかい?仲間を置いて逃げた腰抜けトップ?」
天竺牡丹、私がマフィア時代に裏切った組織の一つ。
裏の組織にしては珍しく、構成員、首領同士の距離が近く仲の良い組織だった事を覚えている。あの時全員殺したと思ったんだけど…首領だけは生き延びていたのか。
「っ、…まあいいさ。君の墓場はここなんだし。君はもう負けている。」
「は?何言ってんの?」
なんか強がり出したぞコイツ。
「ー座れー」
急にそう言葉を発すると同時に体に力が入らなくなり異能も解け地面に座る状態となった。
「?!何これ?!つ、冷たあ!」
「……ヒントをあげる。今降っている雪、これは本物では無いよ。」
確かによく見ると触っても冷たく無い。これがあいつの異能?!
「そう、僕の異能力、『雪国』は雪を触った者全てを自由に操ることができる。君のような、強い異能力者でもね。」
「へえ…それはそれは愉快な異能だね?その異能があればお仲間は死ぬことはなかったのに。」
挑発したら異能解いてくれんかなぁ…
「死んでいる?あいつらは死んでいない。」
「何言ってんだ。」
おっと本音が。
「?君こそ何を言っているんだ?人は死なない。動かなくなり冷たくなり呼びかけても声が聞こえないのは輪廻転生をしているからだ。新しく芽生えた朝顔の芽、おちてしまった椿の花弁、笠の閉じた松ぼっくり、満開の桜の花。全ての自然に命は無数に宿っている。」
あー…だめだこりゃ。死生観が私と違いすぎる。
「へえ、君はそう考えるのか。死なんて人間と呼べなくなったらそれはもう死だ。人間なんて簡単に捨てられる。かく言う私も一度死んでいるしね。…心肺活動や脳が死んだらそれもまた死だ。それらが動いていないものは人間とは呼べない。死体だ。…まあ死体なんて焼いたら灰になってハイ、さよならさね。こだわる必要はない。」
「へえ。それは面白い。」
お、最後のところ気づいてくれたのか…ってそこじゃねえ。
「君の目的は?復讐?まさか殺してくださいなんて言わないだろうね?」
「勿論違うさ。僕の目的は業の深い人間に輪廻転生の機会を与えること。そのためには強い異能である君が必要なのさ。」
何言ってんのコイツ。と言うか輪廻転生、本気で信じてるんだ…と言うか私の異能?…
「真逆!私の異能で世界中の人間を殺す気?!」
「殺すなんて人聞きの悪い。救うんだよ。自然と共に生きる、理想的な世界じゃァないか!」
「ハッ、どーだか。知ってる?日本には強い異能力者は沢山いる。フェージャや採菊たち、中也たち、探偵社のみんなが君のような奴を放っておくわけがない。そもそも私の異能じゃあの人たちはくたばらない。」
殺しても死ななそうな面子しか知り合いにいねえや。
「どうやら信頼を凄くしているようですねえ。」
「当たり前。」
「然し君が人質で従わなければ君を殺す。といえば?」
「っ!性格悪いねえ…皆の優しさを手に取るってわけ?」
ちょっとやばいかも…支配が強まったのか指先一つ動かせない。
と言うかこの体制で時間経ってるから足がっ…足がっ…!
「…まあさっさと始めようか。」
そう言い、私を指先一つで空高く浮かせる。
すると何もしていないのに自身の周りに矢が現れる。
「不味いっ!離せ!こしぬけえ!」
「五月蝿いな。ちょっと静かにしてて。」
「ッッッ!!あ”あ“あ“あ”あ”あ”!!!!」
私の異能を操り私の腕や足、体に私の矢を突き刺す。
突き刺すと言っても殺すようなものではなく手加減されていた。
あまりの痛みに意識を飛ばしそうになるが舌を噛み耐える。
「くそ…が…っ!!」
そう言葉を吐くのが精一杯で矢を止めることはできない。
周囲が矢で埋め尽くされる。
「こんなもんか。じゃ、輪廻転生を願って。」
「!やめろ!!!!」
嫌だ、失いたくない、まだ伝えたいことがあるのに!!
「___!!!!」
「ー人間失格ー」
「ごめん、待たせたね。羅紫。」
「…治?」
「大丈夫さ。私が今あいつに触れたから異能はもう使えない。あとは彼らに任せるんだ。」
一息つき最後の力で川端がいた所を見ると探偵社の皆んなが周りを囲んでいた。
「羅紫さんは僕に道を!示してくれたんだ!月下獣!」
中島 敦
「お前如きに俺の理想は破れん!独歩吟客!」
国木田 独歩
「羅紫ちゃんを傷つけるとナオミが悲しむんだ…!細雪!」
谷崎 純一郎
「僕の仲間に乱暴をする人は許しません!アメニモマケズ!」
宮沢 賢治
「僕の大切な人をいじめないでくれるー?超推理!」
江戸川 乱歩
「凄く心配したよ。でももう安心さ!人間失格!」
太宰 治
その後あっという間に川端を拘束し、軍警へと引き渡していった。
何故か猟犬が出向いており、物凄く心配された。特に採菊。
「貴方はっ!無茶をしますねっ…傷も、もう少し深ければ一生残るものだったでしょう。本当に…無事で、よかったです。」
「ありがとう、採菊。」
思わず採菊に抱きしめられる。その腕は微かに震えており、申し訳なさとそこまで想ってくれている嬉しさで何ともおかしな気持ちとなった。
「条野!離れな!まだ治療してないんだからね!」
「あれ?!与謝野女医?!」
怒声を採菊に飛ばしテキパキと鎮静剤を打たれる。
事前に呼んでおいてくれたのだろう。与謝野女医に怪我の治療をしてもらった。
「ありがとうございます。そして、すいません、折角の非番でしたのに……」
「いいさ。妾の使命みたいなもんだからね。それより行ってやりな。」
「っ!はい!」
すぐ近くにいるのに体が重くなかなか近づけない。
それでも。 鉛のような足を動かし目的の人物のところまで走る。
伝えたい、ことがあるんだ。あの時考えたのは他の誰でもなく貴方だった。
「_!!!!ありがとう!!!大好き!!!!」
雪国で輝くもの____fin____
あとがきみたいなやつ
あとがきってなんか恥ずかしいですね…
文ストのCDラジオにインスピレーションを受けて妄想していたのをやっっと文章にできて嬉しい限りです。
さて、シリアスもギャグも入り混じった長編、どうでしたでしょうか。
今回はオリジナルキャラクター、川端康成さんを登場させました。
塾でこの人物を習ってビッと来たんですよね。運命。
史実の彼の死生観もとても面白く、思わず惹かれますので是非調べてみては?
因みに羅紫の死生観が私の死生観です笑
「文豪ストレイドックス 恋愛怪奇譚」とは別の世界線で楽しんで頂けると幸いです。
オチはお任せします()
マフィアとか鼠たちとかも登場させたかったけど流石にやめときました。
また本編でお会いしましょう。