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白黒おおおお!尊いぞおおお!
神作すぎる😭
読み切りです!!
🦁🐇♀️
学パロ
【この気持ちを止められない】
春やのに、肌寒い風が吹き込む教室で、あたしは悠くん(悠佑)の背中を睨みつけてた。
「なあ、なんでそないニヤけとん」
「はあ?ニヤけてへんし」
「絶対ニヤけとった。あほくさ」
悠くんは机に突っ伏して、だるそうに片手を上げる。
「おまえな、俺に話しかけてくんなや、授業中やぞ」
「話しかけてんのはそっちもやんか」
「おまえが最初やろ」
「……うっさいわ」
あたしは思わず赤面した。悠くんと話すと、ほんまに思ってもないことまで口にしてまう。
イライラしてるのは、たぶん自分の気持ちのせい。
(なんでこんな、いちいち気になるんやろ……)
悠くんは同じクラス、席も前後。中学からずっと同じで、いつもつるんでた。
最初は「ただの友達」やった。
でも、高2になってから、なんやおかしい。
声の低さとか、指先の大きさとか、ちょっとした笑い方とか。
「男」として意識してまう自分が、おる。
――それが悔しい。
だから、意地でもバレへんように意地悪を言う。
授業が終わるチャイムが鳴った瞬間、悠くんが振り返った。
「なあ、今日も帰りコンビニ寄るやろ?」
「……知らんわ。あほか」
「ええやん。新作のアイス買うんやろ」
図星つかれて、返事に詰まる。悠くんはニヤリと笑った。
「おまえ、顔に書いてんねん。『食いたい』って」
「やかましいわ、黙れ」
それでも、教科書をしまって立ち上がる頃には、あたしは「行こか」と小声でつぶやいてた。
悠くんが嬉しそうに目を細めたのが悔しかった。
放課後のコンビニは、ちょっとした習慣やった。
新作のお菓子を漁って、立ち読みして、くだらん話して。
「今日、チョコアイスやて」
「また甘いもんかいな、おまえ」
「うるさいわ、うちが買うんやからええやろ」
「太るぞ」
「は?アンタに関係ないやろ」
「関係あるわ」
その一言に、心臓が跳ねた。
「……なんで関係あんねん」
「そんなん、おまえがデブなったら嫌やからに決まっとるやろ」
「はあ!?何言うて……」
悠くんは真顔やった。
でも、すぐに「冗談や」と笑い飛ばした。
あたしはそっぽ向いてアイスをレジに持ってった。
どれだけ心臓バクバクしてたか、悠くんには絶対知られたない。
帰り道、袋をぶら下げて並んで歩く。
「……食べる?」
「いらん言うたやろ」
「別にあげる言うてへんし」
「は?おまえなあ」
つい笑ってしまう。
悠くんも笑ってた。
「しゃーない、一口だけもろたる」
「甘えんなや」
「おまえが誘っとんのやろ」
――この時間が、好きすぎて怖い。
アイスを半分こして、舌が冷たくて、悠佑が「頭キーンなる」って騒いで、あたしが「アホやな」って笑って。
なんで、これで満足できひんのやろ。
「なあ、悠くん」
「ん?」
「……なんもないわ」
「はあ?」
告白しそうになって、言葉を飲み込む。
あたしは、ずるい。
でも悠くんも、ずるい。
あんな顔で笑うなや。
次の日。
席替えの発表があった。
「はーい、次からこの席に座ってくださーい」
悠くんは教卓のほう見て、あくびしてた。
「……え」
あたしの名前は、教室の後ろの端っこ。
悠くんとは、真逆の窓際。
(え、ちょっと、待って……)
前後どころか、声すら届きにくい位置。
あたしは、焦った。
「なあ、うち後ろ行くわ!」
「はあ?」
「悠くん、替わってや」
「無理やろ、決まっとるやんけ」
「……でも」
クラスメイトがニヤニヤこっちを見てる。
担任も「早よ座り」って。
「……もうええわ」
座った瞬間、涙出そうになった。
アホみたい。
なんで泣きそうになんねん。
放課後、悠くんはいつも通り「コンビニ行こか」と声をかけてきた。
でも、あたしは首を振った。
「今日は帰る」
「は?」
「先帰る言うてんねん」
「なんでやねん」
「うっさい、放っといて」
「おい、初兎!」
無視して走った。
後ろで呼ぶ声が痛かった。
家に帰って布団かぶった。
心臓がズキズキして苦しかった。
(うち、なんであんなこと……)
好きやのに。
ほんまはずっと一緒に帰りたいのに。
席離れただけで、こんな。
スマホには悠くんから「おい、どこ行った」ってLINE。
既読つけられへんかった。
バカみたいや。
翌日も、その次の日も、しゃべらんかった。
悠くんも最初は「おい」って声かけてくれたけど、だんだん無口になった。
放課後も別々。
コンビニも行かんかった。
(あかん、こんなん嫌や)
なのに、謝るのも怖い。
どうしたらええんかわからん。
金曜日の放課後。
雨が降ってた。
あたしは教室に残って、ノート見つめてた。
そしたら、悠くんが傘を持って立ってた。
「……帰らんのか」
「……帰る」
「ほんなら、行くぞ」
「一人で帰る」
「はあ?」
「一緒に帰らん」
「……おまえ、ええ加減にせえよ」
悠くんが机をドンと叩いた。
「なんやねん、その態度」
「なんでもないわ」
「あるやろ、言えや!」
「言われへんっ!」
あたしは叫んだ。
教室に響いた。
悠くんが息を呑むのがわかった。
雨音だけがうるさかった。
「……言われへんねん」
あたしは顔を伏せた。
「なんでかって言うたら……悠くんの顔見たら、止められへんくなるからや」
「……は?」
「止められへんねん、この気持ち」
声が震えた。
涙が落ちた。
「ずっと一緒におりたいって思うし……悠くんが他の女子としゃべるのも、嫌やし……席離れたのも、めっちゃ嫌やった……」
「……」
「そんなん、友達のくせにおかしいやろ……だから、言えへんかった」
悠くんは動かんかった。
あたしは、泣きながら続けた。
「……でももう、限界やねん」
「好きやねん、悠くん」
「ずっと前から……好きでしゃあないねん……」
長い沈黙。
雨が窓を叩く音。
悠くんはゆっくり近づいてきた。
「……アホやな、おまえ」
「なんで……」
「おまえがそんなん言うから、俺も止められへんようなるやんけ」
顔を上げると、悠くんが泣きそうな顔してた。
「好きやっちゅうねん、俺も」
「……うそや」
「ほんまや。……ずっと好きやった」
「……ほんまに?」
「ほんまや、アホ」
悠くんが手を伸ばして、頭を撫でた。
あたしは泣きじゃくりながら、悠くんの胸に顔をうずめた。
「……泣くなや」
「うるさい……」
「しゃーないな」
悠くんの腕が、あたしの背中を抱いた。
あったかかった。
雨の音も、心臓の音も、全部覚えてる。
雨の日の教室で抱きしめあったあと、あたしたちは、変わったようで変わらへん毎日を送ってた。
でもひとつだけ、決定的に違うことがあった。
「……おはよう」
「おはようさん」
照れくさくて目を合わせられへん。
でも、声はかけたい。
これまでみたいに「うっさい」とは言われへん。
悠くんはあたしを見るたび、ちょっと笑う。
からかうようにじゃなくて、優しく。
「顔、赤いで」
「うるさいな、ほっとけや」
「そんなん言うたら余計に見たなるやろ」
「……バカ」
(ほんま、もう……なんなん)
今までも散々言い合いしてきたくせに、
「好き」って一度言うたら、全部が変わる。
触れるたびにドキドキする。
目が合うだけで胸が詰まる。
放課後、二人で帰るのがまた始まった。
「コンビニ寄るん?」
「うん……せやけど、今日はちょっとな」
「なんやねん?」
「……公園、寄ろ?」
言ったあとで心臓がバクバクした。
悠くんはちょっと目を見開いたあと、「おお、ええで」って笑った。
(断らへんのや……よかった)
あの公園は、小学校のときからずっと遊んでた場所。
ブランコに並んで座って、アホみたいに押し合いしたり、砂場で城つくって壊したり。
中学になっても、試験前にノート広げて並んだりしてた。
でも今は、あたしら、恋人未満の友達じゃない。
夕暮れの公園は、人が少なかった。
ブランコに腰かけた悠くんが、横に手を置く。
「ここ座れや」
「……うちもブランコ乗る」
「しゃーないな」
二人でぎいこ、ぎいこ揺れた。
風が少し冷たい。
「……なあ」
「ん?」
「あんときのこと、覚えとる?」
「どれや」
「雨の日、教室で」
悠くんはちょっとだけ視線を落とした。
「……忘れるわけないやろ」
「……そっか」
「おまえ、泣き顔ひどかったで」
「はあ!? アンタかて泣きそうやったやん!」
「うるさい、俺は泣いてへん」
「嘘つけ」
「おまえが泣くからやろ」
「なんやねんそれ」
言い合いしても、どっちも笑いがこらえきれんくて、結局吹き出した。
でも、黙るとまたドキドキした。
「……あのさ」
「ん?」
「うち、付き合おう言うてへんかったなって」
悠くんが目を丸くした。
「は?」
「ただ『好き』言うただけや。……ちゃんと言いたかってん」
「……」
「……付き合ってください」
小さな声やったけど、必死に絞り出した。
悠くんはちょっと黙ったあと、ブランコ止めてあたしの前に立った。
「おまえ、なんでそんな可愛いこと言うんや」
「は、はあ!? 可愛いとか言うなや!」
「言うわ。俺の彼女やし」
「……」
「俺も言うわ」
悠くんは真っ直ぐあたしを見た。
「初兎、俺と付き合ってください」
胸が、痛いくらいに高鳴った。
「……うん」
顔、真っ赤やったと思う。
でも悠くんも同じくらい照れてた。
その日から、あたしらは「友達」やなくて「恋人」になった。
でも、すぐに甘々にはなれへんかった。
「なあ、手ぇ繋ぐ?」
「はあ!? 恥ずかしいわ!」
「恋人やろ」
「そ、そやけど!」
「ほら」
悠くんが手を差し出して、あたしが渋々握る。
指が絡むたびに背筋がゾワッとして、すぐ手を離しそうになる。
「ほら、震えてんで」
「うっさい!」
「可愛い」
「死ね!」
「好きやで」
「……もう知らん」
顔、真っ赤やった。
でも手は離さへんかった。
付き合い始めて1週間。
コンビニデートも、なんとなく意識してしまう。
二人でスイーツコーナー眺めてても、ちょっと距離が近い。
「なあ、これ食べる?」
「……一口だけ」
「また太るぞ」
「アンタが言うからやん!」
「俺は太っても可愛い思うけどな」
「……アホ」
「好きや」
「うるさい」
レジの店員に笑われたけど、もうどうでもよかった。
でも、うまいこといかん日もあった。
金曜の放課後。
悠佑がクラスの女子に話しかけられてた。
「なあ、悠佑くん、数学教えて!」
「お、おう」
笑いながら説明してる。
横で見てたあたしの心臓が、冷たくなった。
(なんやねん、あの笑顔……)
「初兎、一緒に帰ろ」
悠くんが声をかけたとき、あたしは無視した。
「おい、なんやねん」
「帰る」
「ちょ、おい!」
無視して先に昇降口を出た。
公園で待ってた悠くんに追いつかれた。
「おい、何怒っとんねん」
「怒ってへん」
「絶対怒っとる」
「別にアンタの勝手やし」
「はあ?」
「女子と話すん、楽しそうやったな」
「おまえ、なに言うて……」
「好きにしたらええやん」
泣きそうで、後ろ向いた。
そしたら背中を引っ張られた。
「おい、こっち向けや」
「やめろ!」
「泣くな!」
「泣いてへん!」
「泣いとるやろ!」
顔を両手で包まれた。
「俺が好きなんはおまえだけや」
「……うそつけ」
「ほんまや」
悠くんが、涙を親指で拭った。
「おまえ以外、女として見えへん」
「……」
「だからそんな泣くなや」
「……ごめん」
「アホ」
抱きしめられて、堪えてた涙が溢れた。
その夜。
LINEが来た。
【悠くん】
ごめんな。今日のこと。
おまえ泣かせたくない。
好きやで。
読んだだけで泣いた。
【初兎】
うちこそごめん。
好きやで。
土曜の午後。
「初デート」って呼ぶには地味やけど、二人で街に出た。
カフェで向かい合うのも気まずい。
ケーキをつついても、目が合うたびに笑ってしまう。
「おまえ、ケーキついてる」
「どこやねん!」
「口、ここ」
悠くんが指で拭って、その指をぺろっと舐めた。
「!! ば、バカ!」
「何赤なっとん」
「……死ぬほど恥ずかしい」
「俺もや」
顔を覆ったら、悠佑が笑って「可愛い言うたら怒る?」って聞いてきた。
「……怒る」
「じゃあ言わん」
「……でも、嬉しい」
「アホ」
「バカ」
「好き」
「……好き」
夜になって、帰り道。
駅前の人混みを抜けたとこで、悠くんが足を止めた。
「なあ」
「ん?」
「……ちょっとええか」
「何や」
悠くんがポケットから、小さな箱を出した。
「うち、誕生日ちゃうで」
「知っとる」
「じゃあ何」
「……記念日やから」
箱を開けたら、小さな銀色のリング。
「……」
「ペアリング、買った。おそろい」
声が震えた。
「アホやな、悠くん」
「アホでええわ。おまえ以外に渡す気ないし」
「……つける」
指に通してもらった瞬間、涙がこぼれた。
「おい、また泣くんか」
「……うるさい」
「泣かんでええって」
「うち、こんなんもらったら、もっと好きになるやん」
「それが狙いや」
「バカ」
「愛してる」
「……うちも、愛してる」
二人で手を繋いで、帰り道を歩いた。
街灯がぽつぽつと灯って、影が長く伸びる。
もう意地張らんでええ。
「友達以上」やなくて、「恋人」やから。
好きって言える。
好きって聞ける。
止められへん。
これからもずっと止める気なんかない。
「なあ、初兎」
「ん?」
「俺とずっと一緒におってくれや」
「……当たり前やろ」
「ほんまに?」
「うちが逃げても捕まえたらええやん」
「逃がさん」
「ふふ、言うたな」
「……大好きやで」
「うちも、大好き」
夜空を見上げたら、月が丸かった。
あの雨の日と同じように、心臓が痛いくらいに高鳴る。
でも今度は、嬉しくて痛い。
もう隠さへん。
もう我慢せえへん。
この気持ちを止められない。
止めたくない。
ずっと、ずっと、悠くんのことが好きやから。