ケーキバースっていいですよね……オメガバとかよりは認知度まだ低い気がしますけど、私めっちゃ好きなんです!ということで思いつきのランドトを書きます!
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とある日、ランスとドットはいつものように自室で紅茶を飲み、茶菓子を食べていた。2人が唯一和やかな時間。
「この茶菓子昨日買ってきたんだけどどう?」
とドットが期待した眼差しで尋ねると、
「あぁ、美味いな」
と普段ドットに対して小言が多いランスが素直に褒める。ドットはその返事に嬉しそうにする一方、普段もこの感じでもう少し穏やかならいいのに、と思ってしまう。ドットも一口食べてみると、違和感を感じた。
「んん?なんか味薄い……?」
と口に出すとランスは疑問に思ったようで、
「そうか?お前風邪でも引いたんじゃないか?」
ドットは最近は体調不良って感じは特になかったよな…とここ数日を思い返した。喉の痛みや熱、咳などもなくごくごく普通だった。だが、ふと気づいたが、味覚と嗅覚は鈍ったような気もしていた。今に至っては味覚は全く感じ無くなっていた。だが、甘い匂いはどこからか香ってきていた。
「ん〜、なんか味覚が鈍いぐらいなんだよな。まぁでも時期に治るだろ!」
と、強気で言ったはいいものの、正直何を食べて飲んでも感じないのは、せっかくの紅茶と茶菓子が残念だな、という気持ちはあった。
「なんでそんなに呑気でいられるんだ、保健室行くぞ。」
「はぁ?大袈裟だろ!大丈夫だって、多分」
ランスがドットの袖をぐい、と引っ張る。何を言っても離してはくれなさそうなので仕方なく言うことを聞くことにした。
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「あなた、フォークっぽいわね」
この世界ではケーキとフォークという人間に分かれる。ドットが宣告された”フォーク”という種類は唯一ケーキの人間を美味しく感じ、食べたいという衝動にかられてしまう。”ケーキ”はフォークにとって甘い匂いや味がする存在だ。
だがこれはほんの僅かな一部の人間しか現れることがない。なので、これといった事例がなく世間一般的には名前は聞いたことあるけど詳しくは知らない、ぐらいの認識である。
「それでドットバレット、最近甘い匂いがすることはない?」
保健室の女医は2人の様子を伺いながら匂いについて尋ねた。
「えっとついさっき、部屋にいるとき?ですかね。あ、あと今も」
女医は予感が当たったらしく、ほっとした様子でランスへ検査を求めた。
「え、俺もですか?」
「えぇ、ちょっと気になることがあるから、お願いしてもいいかしら?」
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女医はランスの検査が終わると、検査結果について調べることがあると言い、奥の部屋に言ってしまった。ドットはそわそわと落ち着かない様子だった。彼はこんな噂を随分前耳にしたことがあった。フォークの人間はケーキの人間を我慢できずに食べてしまう、いわゆるカニバリズムを行ってしまう、と。
自分は人を殺めてしまわないか、それだけが心配だった。
「えーっと、私も驚いたんだけど、ランスクラウン、あなたはケーキね」
「ラ、ランスがケーキ……?!」
自分が食べてしまうことになるかも、と心配になる対象がこんな近くにいるとは思いもしていなかった。ドットは焦りと動揺でみるみるうちに顔が青ざめていった。
「お、俺やばくないですか?俺、ランス食べちまうかも……」
と、半泣き状態のドットを見てランスは呆れた様子で
「はぁ、別に平気だろう」
と、何やら落ち着いた様子だった。自分が食べられるかもしれないというのに。ランスは昔読んだ本を思い出してドットに言った。
「確かに、フォークはケーキを食べる可能性もある。でもそれは、極限まで我慢してしまった場合だけだ。」
「いやでも、食べるってことは殺すってことだろ?フォークってケーキの人間以外食べれないんじゃねぇの?」
女医は何やら、処方薬の準備をしていた。そうしてあらかた作業が終わったところで2人に話をした。
「たしかにフォークがケーキを殺してしまうことはあったわ。でも、フォークが美味しいと感じるものはケーキの人肉以外でもいいの。たとえば皮膚とか体液、涙とか。キスとかで何とかなると思うわよ。」
その話を聞いていたドットは、青ざめていた顔を今度は真っ赤にして大人しくなってしまった。皮膚はまだマシとして、体液なんてどうすればいいんだ、キス?!……と、表情に出ていた。ランスはというと、普段と変わりはなさそうな顔で話を聞いていた。女医は処方薬をドットに渡し、
「まぁ本当はケーキから直接栄養を取った方がいいんだけど、ランスクラウンがいない時とか、万が一の時この薬を飲んで凌いでね。」
袋を覗くとそこには小粒の小さいピンクの錠剤がそこそこの量入っていた。
「飲みすぎ注意よ。基本はケーキから栄養貰ってね。」
じゃあお大事に、と女医は手を振り二人を見送った。ドットはなんて声をかけたらいいかわからずにいた。嫌いなヤツに食べられるかもしれない、食べないとしても体液、とか皮膚とか、接触する可能性があるかもしれない。そんなの嫌だよな〜、とランスに他人事のように同情していた。
「あの、ランス、俺別に栄養とかいいよ。味わかんなくても食べれないことないし、薬だってあるしよ。」
ランスはその言葉を聞き呆れたようにため息をこぼした。
「はぁ、俺は気にしていない。それに、栄養不足で倒れられでもしたら夢見が悪いからな。それにアンナにも怒られてしまう。」
ドットは驚いた。ランスなら絶対、お前なんかとキスなんてしない、触らせない、と言ってくると思ったからだ。
「は?お前ほんとに言ってる?だ、だってその、き、キスとか、俺とできんの?」
ランスはドットのことを見つめなんとも言えない、その意地悪っぽい笑みを浮かべ
「この際だから言うが、俺はお前とキスでもなんでもできる。お前に食べられてもいいくらいだが。」
ドットはその言葉に驚きを隠せず
「……はぁっ?!」
としか、声に出ないのだった。
コメント
2件
はい。最高です👍