(いやいや、ランスができたとしても俺はランスとき、キスなんてできねぇし!)
と、思っているドットはあれからしばらく、先生から処方された薬で何とか補っていた。
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今日の一時間目は魔法薬の調合だった。
「手にかかると皮膚の色が変わって、数日取れないので注意ですよー」
と、なかなかに嫌な魔法薬を使う授業だ。普段通りに教科書を見ながら手際よく準備していく。相変わらずマッシュは瓶を破壊していたり、こぼしたりしていてハラハラした。
すると突然ドットは空腹感を感じ、少しよろけてしまった。どうしたんだ……?と少々不安になるものの、そのまま作業を続けていた。
「ドットくん大丈夫?なんか顔色悪くない?」
とフィンが心配そうに声をかけてきた。ドットは何もないように
「あぁ、全然平気だぜ!それよりフィン、ビーカー溢れてきてるぞ」
「ぎゃー?!ほんとだ!やばいやばい!」
と、慌てふためきビーカーから溢れてくる泡を抑えようと作業に戻った。フィンにはあぁ言ったが正直、体調はすこぶる悪い。でも、心配はかけてらんねぇし、と思った矢先、ついにドットは倒れてしまった。
「ドット?!」
驚いている声を響かせたランスを遠目に、ドットは気を失った。
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「……?ここは、」
ドットは気がつくと保健室のベットに寝かされていた。腕には点滴ガされており、針で少し痛かった。まだ意識はぼやっとしており、なんで倒れたのか分からなかった。
「っ、目が覚めたか、」
「あれ、ランス?」
ふと横を見ると、驚いた様子のランスがこちらを覗いていた。何やら切羽詰まったような顔だったが、すぐに立ち上がり、
「待ってろ、先生を呼んで来る」
その途端、頭の中に今まで経験したことがない、不思議な空腹感を感じ、わけも分からぬまま、気がつくとドットは歩き出すランスのローブをぐいっ、と引っ張った。
「?何をするんだ」
ドットはよろめいたランスの首もとに勢いよく噛み付いた。
久しぶりの味覚だった。ランスの皮膚も、少し流れてくる血液もきわめて甘く感じ、首元から離れることが出来なかった。
「いっ、」
ランスが痛がるような声を漏らし、ようやく気を取り戻した。ドットは、自分のしてしまったことがまだよく理解出来ずにいた。
「……は?あ、お、俺……今何して」
ドットは半泣きのような状態になりながら動揺していた。ランスの首もとに目をやると、そこにはたらりと真っ赤な血が流れていた。
「あ、ご、ごめんランス、俺そんなつもりじゃ、」
ランスは動揺しているドットをなだめようと、ドットの肩を優しく押さえ背中をさすった。
「大丈夫だ、こんなのどうってことない」
それを聞き少し落ち着いたドットはランスの首もとを見て、自分が傷つけてしまったという罪悪感と、血が欲しいという欲望とで渦巻いていた。その目つきで気づいたのか、ランスはシャツをぐい、とめくり
「欲しいんだろ、俺の血」
ドットはその晒された、血がついている首元を見て優しく血を舐め取った。それから我慢できなくなり夢中でランスの首もとを吸った。その甘い味と匂いに気が参りそうなのを堪えて。
(ずっと、俺だけを食べればいいのに)
そのドットの必死な様子を見たランスはそう思い、優越感と愛執からなのか妖しく微笑んでいた。
コメント
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❤1000にしました!今回も最高過ぎる...。ケーキバースどハマりしてるから嬉しい😭😭
うわーてぇてぇ😇