今回も性懲りもなくネタにします。
fjsw×mtkですが、それ以外の描写もあり〼
毎日仕事で顔を合わせている僕たちに、付き合うとかそういう概念はなかった。僕たちを繋いでいるのは元貴がつくった音楽を鳴らしたいという気持ちで、恋人でもなければ、セフレでもない。だけど、そこを明確にする必要なんてなくて、普通の恋人がするようなことは一通りしてきたし、特に不満とかはなかった。関係に名前こそついていないけれど、互いに愛しあっているし、リスペクトを持っている。
インターホンが響いた。こんな時間に誰かと思ったら、カメラには元貴が映し出されている。元貴が家に来るなんて珍しいな。いつもは僕が元貴か若井に呼ばれてそれぞれの家に行くことが多いから。
「ねえ、りょうちゃん…抱いて」
招き入れるとすぐにきつく抱きしめられた。
仕事からそのまま来たであろう元貴はメイクが施されたままで、髪も若干崩れてはいるもののきっちりとセットされている。それに引き替え、沈んだ表情と取り繕うような笑顔。何かがおかしいと直感的に分かった。
「いいよ。でもさ、先にお風呂入ってきたら?ゆっくりあったまっておいで」
うん、と小さく呟いて元貴は洗面所に吸い込まれていく。とりあえずその仕事モードからはやく抜け出しておいで。
SNSを更新している最中、連絡用のメッセージアプリの通知が鳴った。……ああ、そういうことね。スタッフから送られてきた文面を確認して、先程の元貴の様子に納得がいった。フロントマンである彼には、僕より先に知らされていたのだろう。正直またか…と思った。今年の初め頃にも同じように報道が出て、その時にも元貴はかなり喰らっていた。若井には言わないでほしい、と頼まれたから本人には伝えていないけど。うーん…
「あ、元貴出た?髪乾かそうか…?」
「だいじょぶ」
かわいい
「いいからおいで?」
足の間に座るよう伝えて、後ろから抱きしめる。
「ちょ、」
「んふっ、元貴いい匂いだね。僕とお揃い」
わしゃわしゃと髪を乾かす。されるがままの元貴はまるで子犬のようで、愛おしくてしょうがない。
「りょうちゃん…はやく、して」
お望み通りに。
せめて今だけは、何も考えなくて済むように。
口元を抑えているが、嬌声と嗚咽が漏れている。溢れたままになっている涙を拭ってやると潤んだ瞳が真っ直ぐとこちらを見据えていて、吸い込まれそうになる。
大丈夫、だなんて一番言われたくない言葉だと思うけど、分かってるけど、それでも言わせてほしい。少しでも安心してほしい。
「大丈夫」
僕はここにいる。大丈夫だよ。元貴を見てるよ。
それだけは信じて。
言い聞かせるように呟くと元貴は小さく頷いた。
元貴が、僕の胸元に咲く紅い印を撫でる。
「それ元貴がつけたんだよ」
そのすぐ近くにある噛み跡のような歯形。
「そっちは若井」
「…っ」
多分元貴は若井のことが好きなんだと思う。親友とか、バンドメンバーとかそういうこと以上に。だけど、同じくらいに僕のことも好きでいてくれているんじゃないかな。そして、どっちがよりという順位は無いように思う。
「元貴にも跡つけてもいい?」
聞かないで、とも言いたげに顔を背けてコクコクと頷く。
「背中向けられる?」
「せなか?」
のそのそと体勢を変える元貴を見守る。
そっと唇をつけてちぅっと吸う。元貴はびくっと身体を揺らした。痛かったかな、ごめんね。
「なんで背中、なの?」
「んー?…内緒」
……若井はバックが好きだから。ただ僕の些細な抵抗。元貴をこんな風に悲しませて、少しくらい反省しなさい。
すっかり涙も乾いた頃、元貴は定まらない視線でぼんやりと僕を見ていた。
「眠くなった?」
「…うん」
「ふふっ、おいで」
腕の中におさめてぎゅっと抱きしめる。胸元に頭をぐりぐりと押し付けてくるのが少しくすぐったい。
「わかいの、ばか」
本当にね
だけど、止める理由もなければ、止められもしない。バンドのためって言葉を使うことはできるし、実際に元貴はそうしたわけだけど、それを口にして傷ついてしまうのは自分自身だ。だって何者でもないから。僕たちの関係に名前がついていないから。
元貴はいつのまにか僕に全ての力を預けてすやすやと眠っていた。ぽてっとした唇でむにゃむにゃいっている。
「おやすみ」
どうか朝までゆっくり眠れますように
弱ってるmtk書くの楽しい
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