次の日の放課後。
ぼくはまた、図書室へ行った。
昨日の女の子——ユウナ。
彼女がまだいるような気がして。
窓ぎわの机には、昨日と同じ本が置かれていた。
『春の庭と星の約束』。
表紙には、桜の木の下で笑う女の子の絵。
「また来たんだ」
声のほうを見ると、ユウナが立っていた。
光が透けて、髪の先がほんのり揺れている。
「その本、好きなの?」
「うん。……でも、最後まで読んだことないの」
ユウナが本を抱きしめるようにして言った。
「ページが途中で消えちゃうの。だから、どうしても続きが知りたくて」
ぼくは首をかしげた。
「消えるって……どういうこと?」
ユウナは、少し笑った。
「カイくん。優しいんだね。ちゃんと“見えてる”のに、怖がらない」
「怖くないよ」
「どうして?」
「……なんか、ユウナが泣いてる気がしたから」
ユウナの目が、ほんの一瞬だけ潤んだ。
「ありがとう。でもね、わたし——たぶん、もうすぐ消えちゃうの」
その言葉が、胸の奥で小さく響いた。
まるで、風が花びらをさらうみたいに。
コメント
3件
失礼します面白いです
なんか面白いのか、悲しいって感じなロマンチスト!!
え、小説書いてる((引