- ̗̀⚠︎ ̖́-
ご本人様とは一切関係ありません
BL
依存
水紫水
死ネタ
「あいしてる」
その言葉を貰って、いつも僕はちゃんと答えられない。いや、前はできたけど。初兎ちゃんに言われる度に、嬉しいけど、本当に僕でいいのかいつも不安になってしまう。それほど、嬉しかったんだ。
ある時から初兎ちゃんは、よく出かけるようになった。外が嫌いで人と会うなんてほとんどなかったのに。バイト始めたんだって。そうやって言ってた。でも本当は知ってるよ。バイトなんてしてないの。お金をちゃんと持って帰るからはじめの頃は信じてた。でもそれはバイトをして稼いだお金じゃないっていうのに気付くのに不思議と時間はかからなかった。勿論、信じたくなかったけど日に日にそれを決定づけることが多く起こった。
はじめは香水の匂い。初兎ちゃん、香水とか付けなかったし、明らかに女性が好きそうな匂いだった。
つぎは初兎ちゃんの外套の裾についた、擦れたあと。紅くて、明るくて、でもそれでいて深みのある色。口紅。何かの間違いだと思って考えてしまう頭を無理やり縛り付けた。
そのつぎは、ピアス。初兎ちゃん、ピアスはよくつけるけれど、その時につけて帰ってきたのは男女のペアでつけるペアピアス。初兎ちゃんとつけようって決めて買ったちょっと高めのピアス、渡そうって決めてたけどそれ見たから、渡せずに今も僕の部屋にある。
考えたくないことを必死に縛り付けてたけど、もう、縛り付けてた鎖がちぎれちゃった。でてきたんだ。女性ものの、それも可愛くて、でも上品なアメジストの飾りがついた小さいリボン。髪留めになってた。初兎ちゃんは髪を結べるほど長くないし、リボンもつけない。僕だってそうだから。もう、受け入れるしか無かった。
僕は捨てられたくなかった。捨てられるくらいならいっそ、死んでしまいたいと。
「あいしてる」
この言葉をかけ続けられた僕はもう、離れられないんだ。この言葉は魔法の言葉。この言葉をかけられると断りたくても断れないし、嫌でも、嫌われたくないから、従わないといけない。初兎ちゃんは僕が断れないのを知ってるからこの言葉をかけてくるんだ。
「1人で死ぬのは、こわいなぁ」
ふと、脳に浮かぶ文字。せめて、一緒に。
そう考えを浮かばせてしまえば、あとはもう止まることができなかった。
初兎ちゃんが寝ているベッドに入り込み、初兎ちゃんの上に乗る。所詮、騎乗位の体制。初兎ちゃんは、起きることなく、浅く小さく規則正しい寝息を立て続けていた。
愛おしいな、本当にだいすきだ。そう考えて、せめて、痛みを感じぬように一息で。
そして、初兎ちゃんがくれた、暖かい水色のうさぎのパーカーの袖口に隠した果物ナイフを喉に突き立てた。
その瞬間に、鮮血が飛び散った。前に一緒に見た大きくて明るい、花火。あれによく似てて。そう思って血が溢れ出る喉元に触れた。
「いむくん」
あれ。のど、きったよね。でも、聞こえる。だいすきなだいすきな声。この声で囁かれるとなんにも頭に入ってこなくなる。それだけ心地いい。
でも、もう。もう、聞くことが出来ない。僕が掻き切ったから。だいすきな声を、この手で奪ったから。
悲しいとか後悔とかいう感情は勿論、浮かんできた。でも、それを越すほどの感情があった。
喪失感。
本当に失ったのか分からなかった。だってきこえるもの。さっきからずっと、いむくんいむくんって。その声が、僕を押し潰してしまいそうで怖かった。怖かったから。もう一度。今度は思いっきり。
掌に刺して、抉るように抜いた。
雨が降ってきた。僕の頬を濡らしていく。雨だよね。だって、自分でやっておいて泣くなんて、そんなに弱くないもん。僕。初兎ちゃんがいつも、泣いたらダメって言うから泣かない。
その濡れた頬に触れた、柔くあたたかいもの。だいすきな初兎ちゃんの手。
まだ刺してない方の手には黒いネイルが光った。ふと自分の手に視線をやる。あかい。
お揃いねって言って、不器用な僕に塗ってくれた黒いネイル。初兎ちゃんだって不器用なのに上手だった。練習してたの本当は知ってる。僕のためだったんだね。
初兎ちゃんの顔にも雨が降る。やまない雨が、降る。
雨を拭ってあげようと顔に目を向けた。笑ってたんだ。それも、優しくてあったかくてふわふわとした笑顔。
そんな顔向けられたら、何も出来ないじゃん。覚悟決めてたのに。雨が大粒に、降る量が増えた。自分のせいでこんなに真っ赤になってしまった初兎ちゃん。でも、でもね。もうここまで来た。後には戻れない。一息に殺せなくてごめんね。苦しいよね。だから今、らくに。
頭にナイフをあてがった。でも。手が動かなくなっちゃった。だから、震える手を反対の手でおさえて腹部に持っていった。
「ごめんね、今、らくにしてあげるから。」
優しく優しく、刺していった。痛みが少ないのかは分からないけれど。この方が優しく感じてくれるかな。
ごめんね、ごめんね。こんな僕のために。こんな僕のせいで。
頬に触れていた手がおちた。その手を僕の手で受け止めて、握った。よくこうやって寝たな。恋人繋ぎってやつ。
最後に、ひとつだけ。
右耳についているピアス。ピアスだけとっても、空いている穴は塞がらない。だから。
もう動かなくなってしまったから、痛くないはず。
ゆっくり優しく、丁寧に切った。血が飛び散るかなって思ったけど手と喉の時に出すぎたのかな。血はあまり出なかった。でも、初兎ちゃんの綺麗で、真っ白の透る髪は毛先が少し染まるだけで済んだ。
反対の耳。まだ穴は空いていない。前買った、お揃いでつけたかったピアス。これをポケットからだして、あてた。
ぱちんっ
機械的な音が響いた。耳を見ると、綺麗についていた。僕が選んだ、水色の宝石飾りのピアスが。僕の目を綺麗って褒めてくれたから、似てるの探したんだ。必死に鏡みながら選んだ。もうひとつのピアスは僕の耳に。
ぱちんっ
また響く機械的な音。これは初兎ちゃんの瞳とそっくりの宝石のついたやつ。
ピアスの揺れる耳を見て、初兎ちゃんに言った。お揃いだね。
次は、僕。今すぐにいくから。血で濡れるナイフを自分の喉元にあてがった。
鮮血が飛び散って鋭い鈍い痛みが走った。初兎ちゃんの時は浅かったから辛い思いをさせたな。
早く会えるように、深く深く抉った。
そのまま初兎ちゃんに倒れ込み、微笑んだままの顔を見て、僕も微笑む。
ごめんね、ごめんね。そして、こんな僕を愛してくれて、ありがとう。
そして、ずっといえなかった言葉を言った。今なら言える。ずっと言わなくてごめんね。もっと早く言えばよかったけど、嫌われちゃうのが、初兎ちゃんからの愛が嘘だった時が怖くていえなかったの。
言い訳だね。ごめん。でも今は本心から言える。
煌びやかに光る早朝に残る月の光が僕らを照らす。
初兎ちゃん、ずっとずっと、この先も。
「あいしてる」
コメント
2件
やだぁぁぁ…表現 りあるぅぅぅ… 歪んでないと思うのに やり方が歪んでるゥゥ… 綺麗な愛だったし、 最後も純愛だったから より汚く見えるよぉぉ… 神作をポンポン生むねあなたは。ブクマハートしつれっ!