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全校集会後、私に向けられる好奇の視線は増えていく。
庶民なのにこの学院に入れた時点でも珍しいのに、生徒会に入るなんてますます目立つ。
羨望の視線半分、妬みの視線半分。
とりあえず放課後になると、視線から逃げるように生徒会室へと直行した。
「これが……生徒会室……!」
王室御用達の高級ブランドMOMOのソファやカーペットに大画面シアタースクリーン、冷蔵庫、シャワー室etc……。
生徒会のみが入室を許可されており、普段は会長が鍵を握っているので開かずの間となっている。
私の部屋よりも快適で綺麗だな……そりゃそうか……。
「放棄せずに来たようだな」
「そりゃまぁ……ね」
本当は逃げたいけど、日本トップの財力を誇る冬星を敵に回したらたとえ地球の裏側ブラジルに逃げたって連れ戻されるのがオチだ。
ド庶民な私は大人しく従うしかないのだ。
「よー蒼!待ったか?」
「お疲れ様です……」
「おはよ〜ってもう午後かぁ」
会長と話していると、ぞろぞろと3人の男女が入ってくる。
うわ、本物の生徒会だ……。
ファンに囲まれて滅多に見られないから有名芸能人にでも遭遇した気分になる。
「あー、こいつが今日の集会で言ってた”相談役”の……」
「はっ、はじめまして、夏城赤奈です!」
副生徒会長で全国模試トップ連続記録保持者の秋堀勇黄さん。
身長180cmに見下ろされながら、90度に腰を曲げる。
「まぁ”相談役”は表向きで、初代学長の像2000万の補填として”生徒会雑用係”として使うことになった」
「えーっ、なになに?初代学長の像割ったの君なんだぁ? 度胸あるぅー」
「度胸って……わ、わざとじゃないんです!」
超人気読者モデルで書記の垂春桃音さんがこちらを覗き込むようにして笑っている。
今をときめく人気アイドルに引けを取らない顔立ち。
パリコレに出られる美貌とスタイルだよ……。
「災難だったね……」
そう小声で励ましてくれたのは、他3人の影で隠れがちだがバイオリンコンクールやピアノコンテストで優勝をかっさらっている秋堀洸黄さんだ。
卑屈で根暗(失礼)だが、地味に隠れファンが多い。
「つーかこんなヒョロっちいの役に立つ?」
「ヒョロっちいって……!」
勇黄さんが私を指さし、ヘラヘラと笑っている。
一応これでも空手の有段者なんだけどな……。
「こいつ見かけによらず握力学年1位のゴリラだし、吹っ飛んだ時の受け身の取り方からして格闘技経験者だと思った。なによりあのガラス像を素手で殴って傷一つで済んでるしな」
「ゴリラは余計じゃないかな???」
私が本気を出したらお前の腕の一本くらい簡単に潰せるんやで??
と言いたいのをこらえる。
「あたしたちの自己紹介はいいよね? 知ってるでしょ〜?」
「存じておりますとも……」
桃音さんは気さくな態度で接してくれた。
「あの、それで今日は……」
「じゃっ、この書類のまとめよろしく!」
「え?」
桃音さんは広辞苑か?ってくらいの紙の束を私に手渡すと、鞄を持って出口へと向かう。
「え、待ってください! 生徒会の仕事するんじゃ……」
「君雑用係なんでしょ〜? だったら私の代わりに書記やってよ」
「そうか、雑用係ってことは俺の仕事も受けてくれるってことだな! じゃあ副生徒会の仕事も頼む!」
「生徒会長の仕事も頼むわ。俺クルージング行ってくる」
「えーあたしも行っていい? 今日撮影もなくて暇でさ〜」
桃音さん、勇黄さん、そして冬星蒼の野郎も私に紙の束を渡して出口へ向かってしまう。
「おい兄さん、さすがにそれは……」
「おー洸黄、お前も来いよ!」
「酷いだろ、彼女戸惑ってるだろ!」
助け舟を出してくれた洸黄さんに便乗し、私も何とか訴える。
「そうですよ、私今日来たばっかりでなんも分からないんですが???」
「ハンコ押してサインして目通して分かりやすいように纏めて」
ピシャリ。
頼みの綱だった洸黄さんも勇黄さんに引っ張られ、クルージングへと向かってしまう。
追いかけてくるなと言わんばかりに扉を強く閉められ、引き止めることもできずに立ち尽くすしか無かった。
「うわぁぁぁどうしよう!」