テラーノベル
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今日も 、同じく夜が始まる 。
バニーバーに漂う 、カクテルや香水が混ざった甘い香り 。
ふと 、視界の隅 。カウンターの端に座っている人が見えた 。
「 煌さん 、♪ 」
名前を呼んで 隣の席に腰を下ろす 。すぐに振り向いてくれた 。
「 あぁ 、桃ちゃんか 。ごめんな何時も 」
そう言ってこの人は困ったように 、申し訳無さそうに微笑んでる 。
「 気にしなくていいのに 、 」
なんて『 素直 』に言えたら何れだけ楽なんだろう な 。
けれど 、営業とかサービスとかいう壁が其れを許してくれない 。
「 僕も好きで来てるんで ~ 。 」
むすっとしながら煌さんを見上げる 。
ありがちな台詞でも 、猫をかぶっている時の自分じゃない 。これは紛れも無く本心だ 。
「 それやったら嬉しいわ 、 」
煌さんが微笑んでくれた 。それだけで喜ぶ何て我ながら単純だと思う 。
メニューカードを取り出して 、煌さんの前に置く 。
「 昨日新しいカクテルが出て ~ 、二色好きな色選べるんだって 、♪ 」
こんな声じゃ無くて 、素で話したい 。
カクテルのブレンド 、か 。
… 桃色と紫とか 。
そんな恋心 、今は駄目だ。
「 … っ 、ちゃうわ 、 」
煌さんが呟いて 、口元を手で覆う 。何かあったのだろうか 。
「 煌さん … ?」
「 … いや 、ちょっと考え事してただけや 。」
「 ほな 、それで 。桃ちゃんも要るよな? 」
煌さんがカウンターでシェイカーを振るマスターにカクテルを二つ 、注文する 。
その後にこそっと何か付け加えた 。色の注文だろう 。
マスターがカクテルを作っている横で煌さんと他愛の無い会話を続ける 。
こんなのでいいから 、ずっと煌さんと一緒に居たいな 。何てのは我儘だろう 。
「 あ 、出来たみたぃ 、… だね 」
並んだ二つのグラスに入ったカクテルを見て 、作ったものが全部剥がれた 。思わず素の声が出る 。
「 綺麗よな 。桃ちゃんと 、僕の色 。」
その言葉に 全身が硬直する 。
紫と桃色のグラデーション のカクテルが 、ネオンライトを反射してきらきらと輝く 。
口に出ていたのだろうか 、それか煌さんが自ら _
「 そ 、そう … だね 」
ふいっと視線を紫の眼から外す 。
横から指が伸びて 、僕の耳に髪をかけた 。
「 耳 、紅いで ?」
そう言う煌さんはくすりと笑っていた 。ずるい 。
翻弄するのはバニーである僕の方の筈なのに 、取り乱されてるのは僕ばっかりだ 。
「 … 煩い 、」
俯いて 、紅くなった耳に開くピアスを触る 。照れた時の無意識の癖だった 。
「 ….. 」
沈黙が流れる 。何か話さないとと思って顔を上げたら 、此っちを見下ろす至近距離の煌さんと目が合った 。
息が詰まる 。顔から耳まで熱い 。心臓が煩い 。止まってくれ 、お願いだから 。
こんな近かったら 、もう抑えようとしてた努力が崩れてしまう 。
「 … 煌 、さん 」
「 連絡先 、交換しよ 」
我ながら凄く声が小さかった 。勇気より羞恥が勝る 。ぱっと距離を戻した 。
でも 、言えた 。羞恥と歓喜が混同して 、自分でもわからないくらいややこしい 。
ちらりと煌さんを見上げる 。
目を見開いて 、固まってた 。
煌さんって 、こんな顔もするんだ …
「 … ええよ 、」
「 っ 、ほんとに … ?」
「 じゃ 、じゃあ … シフト終わった後とか 、」
「 ほな待っとるよ 、桃ちゃんのこと 。」
その甘くて優しい声色に落ち着く自分と 、掻き乱される自分 。忙しい奴だと自己評価はしていた 。
「 ぅん 、!」
また 、煌さんが硬直した 。どうしたんだろうか 。
「 … そうやな 」
煌さんの僕より一回りくらい大きい手がグラスを掴み 、カクテルを一口煽る 。
カラン 、と氷の音が甘い空気に溶けて消えた 。
『 Bunny’s sweet time 』
参考 : Bunny Girl by. Akasaki
人物 : iris 煌 & 桃(No. 3 & 4)
コメント
1件
寺島あおいです🌷 第1話、読ませていただきました。 バニーとしての「営業トーク」と、本心で煌さんに向き合いたい気持ちの狭間で揺れる桃ちゃんの心情描写が、とても繊細で好きです。「耳、紅いで?」と微笑む煌さんの距離感、それに翻弄されながらも「連絡先、交換しよ」と勇気を出すラスト——胸がぎゅっとなりました。カクテルの色(桃色と紫)の掛け方も、甘くて切なくて素敵です。続きが気になります🍑
#irxs