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ここのところ、渡辺の機嫌が良い。完全ではないが、目黒が元気になって来た。渡辺としては、嬉しい限りだ。あんなに調子悪い目黒を見たことなかったから、怖かった。
失いそうで、何度も泣いた。
寝ている目黒の胸に耳を当て、息をしていることを確かめたこともある。
目黒ーどこか行く?
渡辺ーん〜ん。
目黒ー大丈夫だよ、出かけよ?
渡辺ーお婆ちゃんち。
目黒ー分かった。
懇意にしている老婆の家に行きたいと言う。不安なときは、会いに行く。目黒は、心配かけたなと思うから、老婆に会って渡辺が落ち着いてくれるならと出かけることにした。
渡辺ーお婆ちゃん!
老婆ーおぉ、坊、久しぶりじゃの。あんさん、ちょっと痩せたかの?
目黒ーちょっと体調崩しまして。
老婆ー坊、泣きそうな顔せんでよかよ?こん人は強かね。
渡辺ーん、ちょっとずつ、元気になっている。
老婆ー昼ご飯作るけ、散歩してこい。
渡辺ー海行ってる。出来たら電話して?
老婆ーおぉ、ちゃんと使えるけの。
渡辺は目黒と手を繋いで海へ行く。
目黒の嫌いな海。いつまでも好きになれない。
目黒ーお婆ちゃんには分かっちゃうね。
渡辺ーん。
目黒ー何見てるの?
渡辺ー何も。
目黒は渡辺の口数が少ないことが気になる。
ゆっくり歩き出す。
ぼんやり見ていた目黒だが、我に返って慌てて追いかける。
目黒ー翔太くん!
渡辺ーん?
目黒ー何で⁈
渡辺ー何?
目黒ー波打ち際まで来てる。
渡辺ー・・。
目黒は渡辺を水から遠ざける。
渡辺を抱きしめ、震えている。
渡辺ーどうした?目黒?
目黒ー何で?海に向かうの?
渡辺ーあ、知らない。考えごとしてた。
目黒ー何?
渡辺ーずっと怖かった。今も怖い。
元気になってきたけど、怖い。
目黒ー大丈夫だから。海に近づかないで。
渡辺ーごめん、
そこへ、老婆から電話がかかってくる。昼ご飯が出来たから帰って来いと。
渡辺ーご飯出来たって。
目黒ー海に向かうの意味ないんだよね?自分でも意識してないんだよね?
渡辺ーん。急に目黒に声かけられてびっくりした。
帰りながら、話しているが目黒の手は冷たい。抱きしめられたときも震えていた。
老婆ーおかえり、坊、あんさんも顔色悪いけ、あったけぇの食べなせ?
渡辺ーお婆ちゃん、んっ・・んっ・・。
老婆ーどないした?あんさん、何があったけの?
目黒ーまた、海に入ろうとしてました。無意識のうちにですが。
老婆ー坊、まだ水は冷たかよ?
渡辺ーんっ・・目黒のこと考えてたら、足が勝手に海に・・。
目黒ーお婆ちゃん、俺、元気になってきたんだけど、翔太くん、怖いって言ったの。
老婆ー坊、海に入って、こん人が悲しむこと考えな?
渡辺ー海に向かってる意識なかった。
老婆ーあんさんは、あの海、嫌いじゃろ?
目黒ーはい、翔太くんを連れて行くから。
老婆ーさ、食べなせ?
渡辺ーお婆ちゃんっ・・。
老婆ーあの海は人呼びの海じゃ。
目黒ーどういう?
老婆ー寂しいもん、悲しいもんを呼ぶ。連れて行く。
渡辺ーお婆ちゃん。今までにあったの?
目黒ーあったんですか?
老婆ー年に1人は呼ばれて入って行く。
目黒ー翔太くん!
老婆ー坊は、大丈夫じゃ、あんさんがそばにおるから。
食事が喉を通らないことを、普通に話す。渡辺はゆっくり食べている。目黒に「ちゃんと食べて?」と言う。
老婆ー坊は1人で行ったらいけん。あんさんと2人で行くならええやろ。
目黒ーしばらく、行かないです。
渡辺ーお婆ちゃんには、会いに来るけど。
老婆ー待っちょるけ、2人で来なせ?
目黒は、昼寝している。
暖かい部屋でゆっくり食べて、渡辺が横になり目黒も一緒に横になっていたら、目黒が深く眠ってしまった。渡辺は起き上がり、老婆と静かに話す。