人は、生きた証を残したがる。写真だったり物だったり、形は様々だけれど。
そんなもの残したところで、教科書に載れる偉人にはなれないのに。
朝起きて、学校に行って、帰って、だらけて、寝る。
無駄だな…
変わらない毎日に飽きが生じた。
国語の授業で当てられて、僕は答えたつもりだった。
なのに、先生はこういった。
[まだ解いてない?じゃあ次の人の橋岡さん!]
僕は答えを口にしたのに…
しかも、その問題はとても簡単だった。
悔しい…
そうして、僕は自信をどんどん失っていった。
このまま…消え去れば、こんな想いしなくてすむ。
なら……
[よぉ、快原。お前、大丈夫かよ?顔色わりーぞ]
[だ、大丈夫…]
[大丈夫?っていわれたら大丈夫しかいえねーよな。すまんすまん。なら、ベランダに風をあたりにいこうぜ☆]
[はぁ…?]
ベランダは、風がとてもなびいていて、空がすみきった青をしていた。
[綺麗だろ?]
[うん…綺麗]
この人が話しかけてくれた理由がわからない。
俺とは別世界の人間なのに。
[綺麗って思うんなら、自殺はやめとけよ?]
[え…]
[それじゃ!俺はこれで!]
あ…いってしまった。
廊下に消え失せる彼は、まるで幻のように思った。
次の日。僕はその人を探していた。
けれど、だんだん記憶が薄れていき、僕は誰と話していたのか忘れてしまった。
[何で忘れるんだよ…!]
僕は頭を抱えて膝をつく。
絶望感に呑まれていき、心が黒く染まる。
すると、昨日聞いた元気で明るい声が僕の耳に届いた。
[おい、泣くなよ!俺の事忘れても、記憶は残ってるんだろ?なら、俺が生きた証はお前の胸にあるわけだ。ならそれでいいよ]
目の前に、彼がうっすら見えたような気がした。
…そうか。
生きた証は、ものじゃなくていいんだ。
人の思い出こそが、生きた証なんだから。
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コメント
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ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"雰囲気好き☆