テラーノベル
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廃校となった旧校舎の教室。そこには、東京卍會の主要メンバーたちが集められていた。
ドラケン、三ツ谷、場地、千冬、そしてタケミチ。
彼らが「大事な集会がある」と呼び出され、教室に入った途端——
バーーーンッ!!!
廊下で爆竹が派手に鳴り響き、同時に教室の扉が外から南京錠でガシャリと施錠された。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
タケミチが慌てふためく中、教壇の後ろからゆっくりと一人の男が立ち上がった。
丸メガネ。どこから調達したのか分からない地味なスリーピースのスーツ。そして、ワックスで無造作にセットされた少し長めの髪。
それはどう見ても、最近テレビで大ヒットしている学園ドラマ『3年A組』の主人公、柊一颯そのもののスタイリングだった。
「……マイキー?」
ドラケンが呆れたような声を出す。
しかし、マイキーは丸メガネを中指でクイッと押し上げ、静かに、そしてやけに響く低音ボイスで言い放った。
「今から皆さんには、俺の、人質になってもらいます」
「はあ!?」
全員の声がハモった。
「おいマイキー、何やってんだお前。ていうかその格好なんだよ。お前絶対あのドラマに影響されてるだろ」
三ツ谷が冷静にツッコミを入れるが、マイキーは完全に役に入り込んでおり、どこか虚ろな目で黒板を叩いた。
「静かに。……これより、お前たちにある『課題』を出す。タイムリミットは夜の8時だ。もし正しい答えが出なければ……お前たちには、それなりの始末を受けてもらう」
「始末ってなんだよ!? つーかここから出せ!」
場地が扉を蹴飛ばすが、ビクともしない。
「無駄だ。窓もすべて溶接してある(※パーちんに頼んだ)」
マイキーは教卓に両手をつき、極めて深刻な表情で、重々しくその『課題』を口にした。
「なぜ、東卍のトップであり、無敵と謳われるこの俺にだけ、一向に彼女ができないのか?」
「……」
「……はい?」
教室が、静寂に包まれた。
「俺は顔もいい。喧嘩も強い。それなのに、タケミっちにはヒナがいて、ドラケンにはエマがいて……なぜ俺には誰もいない? この理不尽な世界の真理を、お前たちに解き明かしてもらう」
(理不尽すぎる……!! 完全に個人の問題じゃねえか!!)
タケミチは心の中で全力で叫んだ。
しかし、マイキーの目は本気だ。手にはどこから持ってきたのか、起爆スイッチのような謎のボタンが握られている。
「……Let’s think!!」
マイキーがビシッとメンバーたちを指差した。
「……あー、要するに俺らが答えりゃいいんだろ?」
場地が面倒くさそうに頭を掻きながら口を開いた。
「簡単じゃねえか。お前、いっつもファミレスで『お子様ランチの旗がない』って喚いたり、すぐその辺で寝て運ばせたり、ガキっぽすぎるからじゃねえの?」
その瞬間。
「……ッ!!」
マイキーは胸を強く押さえ、教卓の裏にガクッと崩れ落ちた。
「どうしたマイキー!?」
「急にダメージ受けてんじゃねえか!」
マイキーはふらふらと立ち上がり、机をバンッと叩いて場地を血走った目で睨みつけた。
「お前は!! 自分のその適当な言葉が!! どれだけ純粋な不良の心をえぐるか分かってない!!」
「お前が答えろっつったんだろうが!!」
「もっと本質を見ろ!」
マイキーは熱弁を振るい始めた。
「お前たちには想像力が足りない! いいか? グッと踏みとどまって、クルッと頭を一周させれば、パッと正しい答えが浮かぶはずだ!」
「出たよグックルパ……完全にドラマの見すぎだろ」
ドラケンが大きなため息をついた。
「じゃあ、俺が」
三ツ谷が手を挙げる。
「不良のトップってことで、周りの女子がビビって近寄れないんじゃないか? マイキーはカリスマ性がありすぎるから、釣り合わないって思われてるんだよ」
「……」
マイキーはメガネの奥の目を細めた。
「……三ツ谷。それは……少し気分がいいが、根本的な解決にはなっていない。やり直しだ」
(ちょっと嬉しそうじゃねえか!) とタケミチはツッコんだ。
「あ、はい! 分かりました!」
次に勢いよく手を挙げたのは、千冬だった。
「マイキー君に彼女ができないんじゃありません! マイキー君にふさわしいレベルの、最強に可愛くて強くてパーフェクトな女が、まだこの世に誕生していないからです!!」
「……!!」
マイキーの動きがピタリと止まった。
彼はゆっくりとメガネを外し、目頭を押さえた。そして、深く頷いた。
「……正解だ」
「甘やかすな千冬!!!」
ドラケンと場地の怒号が教室に響いた。
「そうか……俺に彼女ができないのは、時代が俺に追いついていないからだったんだな……授業は、これまでだ」
ガチャリ。
マイキーが起爆スイッチ(と思っていたもの)を押すと、扉の南京錠がパカッと自動で開いた。ただのリモコン式の鍵だった。
「よし、謎は解けた! 腹減ったからタケミっち、どら焼き奢れ!」
先ほどまでのシリアスな教師モードはどこへやら、いつもの無邪気な笑顔に戻ったマイキーが教室を飛び出していく。
「……俺たちの時間、返してくれよ……」
疲労困憊のタケミチたちは、夕日に照らされる旧校舎の中で、ただただ崩れ落ちるのだった。
帳の部屋
コメント
1件
めっちゃ面白かったです(笑)「なぜ俺だけ彼女ができないのか」っていうマイキーの課題が個人の悩みすぎて、タケミチたちの困惑がめちゃくちゃ伝わってきました。千冬の「まだこの世に誕生していない」理論で一発正解になった瞬間、思わず声出して笑いました。ドラマのパロディと東卍メンバーの掛け合いが絶妙で、続きが気になります!