第五章「二人が死を分かつまで。」
9月5日8時
両角はベッドから飛び起きた。頭に横切るのは死無子のことばかり魂の入れ替わり?それとも魂の移動?次に誰を殺すのか?今どこで何をしているのか謎はより深まっていくばかり。謎が出続ける尽きることない謎に一つのやるべき事が頭に出てくる。
「あぁ、そっか。」
両角はリビングにかけてあったカレンダーを見て昨日やるべきだった花のお手入れをやることに決めた。
同日8時45分
武と悠哉が烏間県立病院の駐車場にて
武から言葉を発する。
「カルテとかは特になしか。」
「試験人Δね。両角には何か秘密があるな。」
「こいつを調べれば。謎は解ける。」
「これで最後か。」
同日12時
「ふぅ」
両角は庭に置いてあった花瓶の土の入れ替えをしていた。土を入れ替え肥料をまく。肥料は白色であった。
「この肥料、減ることがないんだよな。内容量がいいんだな。少ししか使ってないからかな?」と思い作業を続けた。
死無子のことを考えてはため息が出る。あの場所は一体何なのかも。なんの因縁があるのかも分からない。
(場所?あっそうか!)
「場所!!場所さえ!あの場所さえ、廃校さえ分かれば先回りができる!!」
両角はその廃校は辺りの廃校を調べた。その廃校は烏間第1高校。2年前に廃校になったばっかりの高校であった。今日は先回りして試験人Δいや、両角死無子を迎え撃つその計画が出来上がった。
同日16時
森下市役所にて
「トイレから戻ったぞ。悠哉なにか手がかりはあったか?」
「あったぜ。こいつは白髪で深夜の12時に家を出ていている。」
「これは、、、」
武はその正体を知った途端驚きを隠せない。
「完全なる事実で証拠だ。」
あとは両角へ標準を合わせ金の銃弾の引き金をあと少しで引くこととなる。
同日17時
両角は家を出た。
同日18時
両角宅に森下警察署 捜査一課が玄関に迫り家のチャイムを鳴らすがもうその頃には両角はいない。家の中に生きるものは何一つない人間も動物も、悪魔さえも。
ピンポ~ン、ピンポン~ン。
「両角生喜子さ~ん。両角生喜子さん!いらっしゃいますか?」
「私たちは森下警察、捜査一課、刑事長の高島信彦とその部下の小林 武と小野寺 悠哉ですあなたに逮捕状が出ていますので潔く出てきてください。さもなくば業務執行妨害であなたを強制的に逮捕することになります!」
人のいる気配のない家に何か言葉を放っても帰ってくるのは静寂だけであった。
「高島さん。留守っぽいっすよ?」
「影潜めて待つぞ。」
「「はい!」」
3人はひたすらここで帰ってくるのを待つことにした。
それを少し遠くで見つめていた笑顔を絶やすことの無い悪魔がいるとも知らずに。
同日21時45分
両角は満腹にならない程度に晩御飯を済ませ何も持たずに廃校の前に着いた。廃校の外観は蔦が壁一面を覆っており『過去は学校であった。』というよりも『過去はホラー映画の撮影に使われていた。』という言葉があっている雰囲気である。その雰囲気にも負けない勇気を振り絞り両角は足を一歩ずつ進める。
正面玄関から中に入りキャリーケースが高く積まれた教室の中にゆっくりと入っていった。
目の前に立った途端。目の前には普通の白のキャリーケースとは違う。赤い色のキャリーケースが2つ目の前に置かれていた。
そこには生喜子が知っている。思いもよらない人物の名前が書かれていた。
「これって、、、」
『あぁ、そうだ。』
「ちっ、お前!!」
『父と母を俺に殺されて怒ってんのか?ふっふっふっ、お前が俺の全てを奪ったように俺はお前の全てを俺が奪うんだよ!!』
「お前、それが殺しの動機だって言うのかよ!!」
『いや、俺が人を殺す理由にはまだある。人は人を差別する。人は言葉やナイフで人を殺すんだ。誰だってそうだ。正義ずらしやがって!!誰だって偽善者だ!!一般市民、権力者はいつも誰だって人を裏切り殺すんだ。正義と悪の概念がなければ俺だって殺してもいいよな?差別する奴らも正義ずらしてる奴らも悪も全員な!!』
「お前は悪魔だ。」
『俺は化け物。いや、怪物だ。俺ら兄弟の運命はここで終わりだな。弟よ。』
「終わりはお前だ!!怪物がァ!!」
生喜子から放たれた拳はすぐ死無子が受け止めた。
「ちっ。」
『痩せ細った体で何が出来る!?』
「お前を殺すことが出来る。」
『いきがってるやつはこの世を生きてられねぇんだよ!!雑魚がよ!!』
生喜子は後ろに押し倒されたがすんなりと立ち上がり死無子の方へと何度も立ち向かう。
「父と母は急死だって聞いたぞ、、、」
『急死だって?一気に2人が死ぬことはあるかよ。』
「お前が殺したんだな?」
『あぁ、そうだが?』
「殺してやる。」
『素直じゃないか。なら殺してみろよ!!俺はいつでも待ってやるからよぉ!!』
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『うぉっ、、、』
生喜子の力が急激に上がり死無子が押し負けた。何もしてこなかった生喜子が人殺しをしてきた死無子を圧倒してきているのだ。そのまま生喜子の拳は死無子の顔面に直撃し後ろへよろける。
『俺の体を奪いやがったクソ野郎が!!』
「は?お前の体?」
『そうだ!!お前の今の体は昔の俺の体だ!!俺がその体で生きてる予定だったんだよ。』
「お前何言って。」両角は困惑を隠せない。
『お前は、1年前に所有権を持ったんだ!元々はお前がちょくちょく出てくる人格だった。だが全て反転した!どうやったかは分からないがな!!お前は俺の体を奪ったんだ!!』
「はぁ?それじゃなんで父と母はこのことを俺に伝えなかったんだよ?」
『それはな、性格で選んだんだよ!お前の方が大人しくて立派で上品だってな!それを聞いてわかったよ。俺は見捨てられたんだ!!全てからな!親!通っていた学校の先生!烏間県立病院の八ツ橋先生からも!!全てから!!』
「だから俺を殺そうってことか!?」
『あぁ!!お前の持っている全てを壊す!!それだけだ!!』
死無子が隠し持っていた長包丁を生喜子をめがけ刺そうとしたその時。
パァン。パァン。
2回の銃声が廃校中に鳴り響く。
生喜子が後ろを振り向くと高島刑事長が駆けつけていた。銃弾が通った先を見ると死無子の両肩に命中していた。
『ちっ、捜査一課か。』
「あぁその通りだ。」
「高島さん早いですよ。ふぅふぅ。」
「お前らが遅いだけだ。さて、白髪。お前が両角死無子だったな。お前はもう人を殺すことはもうできまい。」
『ちっ、脚さえあればいいんだよ!』
パァン。パァン。
高島は死無子の両脚に発砲し難無く当てた。死無子は痛みで立ってられず生喜子の立っている廊下側の壁の方へと飛び込んでしまう。
『ちっ。クソがァァ!!』
高島は無防備な死無子の元へと歩み寄り手首に手錠をかけた。
「深夜23時10分。両角死無子逮捕。」
生喜子は安心したせいか、全て終わったせいか意識が途切れ倒れ込む。
だがこれで全ては終わったのだ。
「高島さん!」武と悠哉が高島刑事長の元へと歩み寄る。何か知りたそうな二人の顔に高島はキョトンとする。
「なんでここが死無子のアジトだと分かりましたね。なんで分かったんですか?」
「それはな。私に協力者がいたおかげさ。」
「えぇ、その協力者って一体誰なんですか?」
「医者だよ。彼らのね。」
高島が指す医者というのは八ツ橋 美咲先生のことであった。彼女は今頃、自分のベランダに立ち煙草を吸っていた。そして解決した予感を感じニヤリと笑う。
「良かったな。生喜子。」
と言い放ち全ては終わりを告げた。
9月6日8時50分
森下刑務所 面会室にて
「よォ、両角。」
『よォ、これはこれは良くぞここに参られましたね。八ツ橋先生様と高島刑事長様。』
「俺たちはただ話をしに来ただけでは無い。事実を伝えに来たのだ。」
「あぁそうだ。そのために私がいる。」
『そりゃ、見れば当然のように分かる。で?事実は一体なんなんだ?』
「お前は両親からとても愛されていた。」
『はぁ?そんなわけあるはずもねぇだろ!?』
「いや、そんなことがあったんだよ。」
『それじゃ、なんであいつに全部渡したんだよ!?』
死無子は感情的になっている。それもそのはず、彼にとっては冗談のような話である。
「それは君を守るためでもあったんだ。君は幼い頃いじめられっ子で毎日のようにいじめられた。生喜子の人格が芽生えたことで父と母は君を隠し守る計画を練った。このことを伝えると君は反対すると言って、『言わず伝えず』の契約を私と結びこれを終わらせた。名前を試験人Δに変え、関係者以外に情報を流さないようにしてな。でも後々こんなことになるなんてな。」
『そういうことだったんだな。』
死無子は下を向いたまま納得した雰囲気を見せた。
「これでいいのか?刑事長。」
「これでいいのだ。なぁ、死無子。今日あの後にキャリーケースの中を調べたら殺害された人物の骨はなく腐肉しかなかった。」
『ふっふっふっ、残念だったな。』
「は?」
「へぇ?」
『聞こえなかったのか?もう一度言ってやる。残念だったな。』
二人は死無子の放った意外な言葉に驚いた。
「残念だったなって何をしたんだ!!」
『ふっふっふっ。殺したヤツらの骨は、骨粉にして今は花の肥料になってるよ!』
「きっ、、、貴様ぁ!!」
『そしてもう俺はここにはいない。』
死無子の魂は面会室を離れどこかへ向かう。そして目の前にいる死無子が乗り移られていた人物は刑事一同が誤認逮捕した山陰 孝である。意識がなく生命エネルギーも吸われたみたいにミイラみたいになって死んでいる。
「ちくしょう!!」
「やられたか。」高島は怒りのあまり壁を蹴り悔恨の雄叫びをあげる。八ツ橋先生も悔しがる一面を見せた。
同日9時30分
生喜子はあの後病院に運ばれ止血と消毒を終わらせ今朝の6時には家に返されていた。昨日負った傷を包帯と絆創膏で貼り隠し、途中で終わらせ花のお手入れをしていた。
「なんて清々しい朝なんだ。」と言い空を少しだけ見上げ太陽を見た。空は雲一つない快晴であった。その空を見た途端、初めて彼の目に光が灯った。
一回深呼吸をし生喜子はお手入れに戻り花瓶に肥料をまく。
撒いている”肥料”は一体何かも知らずに作業は続ける。
“怪物”が体の中に戻り笑い続けていることも知らずに。
おわり
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