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──────気付いた頃には既に欲しいものは全て手に入るようになっていた。父に頼めば全てのものが手に入る。
『あの遊園地が欲しい。』
そう言えば、次の日には私のもの。
父は多忙で私といる事が少なく、母は私が物心着く前にこの世を去ってしまったそう。寂しい思いをさせまいと私の頼み事を嫌な顔1つせず受け入れてくれた。
全て望みのままに手に入る。嬉しいことだ。
だけど
私は つまらなかった。
父に頼んでも
「わかった。」
のたった一言。違うの、お父様。私は、あんなの欲しくない。欲しいのはお父様と過ごす時間が欲しいの。大きなものを頼めば少しは叱ってくれる、欲しがりすぎだと叱ってくれると思っていたのに、たった一言で終わり。
なんで、分かってくれないの。私は、私はお父様とお話したいだけ──────────
──────────…。
目覚まし時計の音で目が覚めた。夢だったらしい。懐かしい、?少しそう感じた夢だった。
父は年々家にいることが少なくなり、私も17になった。寂しさなどはもう感じない。慣れというのは怖いもの、と夢から覚めた今そう思う。父と話したいという願望も薄れてしまった。
ベットの上でぼーっと考えていたら突然扉が勢いよく開かれ召使いが入ってくる。
いつものように髪の毛を整えられ、肌に化粧水などを塗られては私は食卓へ向かった。
と言っても私1人しか居ない。用意された朝食を食べては学校に向かう。
そして授業を受け、昼食を食べては家へ帰る。
夕食を食べては、ある程度その日の復習と次の日の予習をしてはベットに入り眠る。
毎日。毎日。同じことの繰り返し。
つまらない。
──────────だが、そんな退屈な毎日に、1つ。面白そうな話が流れ込んだ。
それは、珍しく父が家に戻ってきた日だった。父は私を見つけるや否や声を掛けてきた。話を聞くと父が言いたいのは
「人間界へ行ってみないか。」
という話。私は目を輝かせて大きく頷いた。だが、 高校を卒業してからだった。長いように思えた高校卒業までがあっという間に過ぎた。
ついにその日が来た。
父の話を聞くと、高校を卒業した後に人間界へ行くのはうちの家系ではよくある事のようで、きちんと滞在中に住む家もあるそう。
期間は10年。長いと思う人もいるかもしれない。だけれど。私達のような【悪魔】にとっては全然短い。
私は荷物をまとめては、この世界と人間界との、まあ架け橋のような場所になっている所へ来た。
そこには家にいた召使いと、父がいた。
父は心配など全くしていない顔で私に
「気をつけるんだぞ。」
とだけ言い残してその場を去ってしまった。召使い達は直ぐに去ってしまった父を見たあと私を見た。きっと、私を気にかけてのことだろう。私は首を縦に振り、大丈夫と示した。
少し召使い達と話したあと、人間界への道が開いた。
私は召使い達に見送られ
人間界へと旅立った。